DJI Inspire3専用Netflix認定カメラ【Zenmuse X9-8K Air】徹底解説!

2025年5月12日 撮影技術 撮影機材

DJIから2023年4月12日に発表された最新のシネマドローン。先代のInspire2の発売から約7年。

CM撮影、映画撮影、VP撮影などクオリティの求められる撮影現場にはかかせない機体性能とカメラスペック。

この記事ではInspire3の専用ジンバルカメラZenmuseX9-8K Airの特徴を解説していきます。

当社が普段のCM撮影現場で設定しているポイントも紹介します。

Zenmuse X9-8K Air

スペック

センサー35mmフルサイズCMOS
最大解像度写真:8192×5456
動画:8192×4320
動画解像度詳細リストを確認
対応レンズDL 18mm F2.8 ASPHレンズ
DL 24mm F2.8 LS ASPHレンズ
DL 35mm F2.8 LS ASPHレンズ
DL 50mm F2.8 LS ASPHレンズ
DL 75mm F1.8
写真フォーマットJPG,DNG
動画フォーマットMOV、CinemaDNG
シャッターの種類電子シャッター
カメラ操作可能範囲チルト(ランディングギアが下がった状態):
ジンバルチルト限界拡張前:-90° ~ +30°
ジンバルチルト限界拡張後:-115° ~ +100°

チルト(ランディングギアが上がった状態):
ジンバルチルト限界拡張前:-90° ~ +30°
ジンバルチルト限界拡張後:-140° ~ +75°
ロール:±20°
パン:±300°
カメラ最大操作速度DJI RC Plus送信機使用時:
チルト:120°/s
ロール:180°/s
パン:270°/s

DJI Master Wheels使用時:
チルト:432°/s
ロール:432°/s
パン:432°/s

1. 🎥 8Kフルフレーム収録で圧倒的な解像度

35mmフルフレームセンサー + 8K解像度により、微細なディテールまで鮮明に記録

最大8192×4320ピクセルの映像は、4K納品時でも自在なパン・ズーム・リフレームが可能

CinemaDNG/ProRes RAW 対応で、情報量を損なわずRAW収録

センサーサイズ比較(先代モデル)

CinemaDNG
最大8K/25fps

CodecResolutionImage AreaAS比Sensor FPS (MB/s)
23.9762425
CinemaDNG8.1KFull Frame17:9
(8192×4320)
810810844
CinemaDNG8KFull Frame2.39:1
(8192×3424)
759759791

CinemaDNG
S&Qモード撮影 最大4K/100fps

CodecResolutionImage AreaAS比Sensor FPS (MB/s)
727596100
CinemaDNG4.1KFull Frame17:9
(8192×4320)
607632810844
CinemaDNG4KFull Frame16:9
(7680×4320)
569832759791

ProRes RAW
最大8K/75fps

CodecResolutionImage AreaAS比Sensor FPS(MB/s)
23.976242529.9730485059.9460
ProRes RAW8.1KFull Frame17:9
(8192×4320)
405405422253253405422506506
ProRes RAW8KFull Frame16:9
(7680×4320)
380380396237237380396475475

ProRes RAW
S&Qモード撮影 最大4K/120fps

CodecResolutionImage AreaAS比Sensor FPS (MB/s)
727596100119.88120
ProRes RAW4.1KFull Frame17:9
(8192×4320)
304317405422253253
ProRes RAW4KFull Frame16:9
(7680×4320)
285297380396237237

2. 🌗 デュアルネイティブEIで昼夜対応

・明るい日中はEI 800/320で最大画質

・夜間や夕暮れもEI 1600/4000でノイズを最小限に抑制

8KCinemaDNG & ProRes RAW収録の場合の制約は↓

30fps以下:EI 800/4000

30fps以上:EI 320/1600

CinemaDNG VS ProRes RAWでの収録のポイント

条件推奨EICinemaDNGProRes RAW
明るい屋外EI 800ハイライト保持・最大DR画質と編集速度のバランス
室内・夕方EI 4000シャドウ情報豊富に収録ノイズが少なく編集が容易
夜間や低照度EI 6400以上白飛びケア要・ノイズ処理が鍵ノイズリダクション前提でワークフロー良好

※8K23.976fps,24fps,25fps収録の場合の値↑

3.🌈 最大14ストップ以上のダイナミックレンジ

ハイライトからシャドウまで豊かな階調再現

・特にEI 800使用時には最大14.7ストップを実現

・明暗差の大きなシーン(例:夕景、夜景、逆光)でも白飛び・黒つぶれを抑え、自然な仕上がり

EIグレースケール(30fps以下)
EIグレースケール(30fps超え)

ダイナミックレンジの比較

EI合計DRハイライトシャドウ解説(RAW
への影響
20014.1 stops5.19白飛び注意。CinemaDNGでは回復不可
800(native)14.7stops7.17.6最もバランスが良く理想的
4000(native)14.5 stops7.17.4シャドウが伸びる。暗部に強い
640014.0 stops7.16.9実質的な明部の余裕が減る
1280013.7 stops6.37.4暗所には良いが白飛び注意。

4. 🔁 交換式DLレンズで空撮表現に“選択肢”を—広角から望遠までー

・シーンに応じた「レンズの選択」が、空撮を“飛ばす”だけの映像から“意図ある映画表現”へ変える

・地上撮影との画のつながりを統一できる

・交換レンズの登場で、「撮影の前提が変わる」
 機材の制約から“飛ばして広角で撮る”という従来の空撮発想を脱却し、
   “何をどう撮るか”に集中できる空撮ワークフローへ

・75mmF1.8レンズの登場により浅い被写界深度で、空撮でも背景ボケが使える

DLレンズラインナップ

レンズ名主な特徴シーン
DL 18mm F2.8 ASPH超広角・最小歪み都市全景、渓谷、建築のスケール感強調
DL 24mm F2.8 LS ASPH広角・自然なパース車両追尾、滑らかな追従ショット
DL 35mm F2.8 LS ASPH標準画角・遠近感バランス物体中心の構図、汎用的な構成に
DL 50mm F2.8 LS ASPH中望遠・圧縮効果背景を引き寄せた迫力ある構図
DL 75mm F1.8 明るい望遠・美しいボケボケを活かした被写体強調、映画的焦点操作に最適

5. 🎚 D-Log & D-Gamutでプロレベルのカラー編集対応

・シネマ品質の空撮映像をポスプロで自在に調整可能

・他のマルチカムや地上カメラとも色合わせが簡単

D-Log広いダイナミックレンジ、14ストップ、対数カーブ
D-GamutRec.709 / DCI-P3超えの広色域、カラグレ最適設計

まとめ:ドローン空撮はカメラとレンズ選びで進化する

これまでのドローン撮影は、広角レンズで上空から撮るという定型の枠に収まっていました。
しかし、DJI Zenmuse X9-8KとDLレンズの組み合わせはその常識を覆し、空撮を“シネマ品質”へと進化させています。

18mmから75mmまで、5本のDLレンズがもたらす多彩な焦点距離と描写力は、
スケール感の演出から被写体の切り取り、背景の圧縮やボケ感の表現に至るまで、地上撮影に劣らない表現力をドローン撮影にもたらします。

これからの空撮において、カメラの性能だけでなく、
「どのレンズで、どう撮るか」が表現の核心になると日々の撮影で感じています。