CM・映画撮影でのドローン飛行許可と警察への事前周知

投稿:2025年5月18日|更新:2025年11月21日著者:石山裕太 TRICO.代表取締役

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CMや映画などの撮影、VP制作、ドローンによる建物点検や眺望撮影など、こうした業務を行う中で、撮影現場を管轄する警察署への事前周知をきちんと実施していますか?

法令上の義務ではないものの、住宅街や人の集まる場所での飛行は、通報や誤解によるトラブルが起きやすく、撮影中断やクライアントへの影響につながることがあります。
現場対応をスムーズに進めるための“ひと手間”として、警察署への事前連絡は非常に有効な手段です。

本記事では、ドローンオペレーターが実践する
CM・映画撮影時の飛行許可・事前連絡・安全対応のポイントを具体的に解説します。
許可申請との違い、警察署への電話対応マニュアル、現場トラブルの防止策まで、すぐに活用できる実務ノウハウをまとめました。

なぜCM・映画撮影で警察署への事前連絡が必要なのか?

警察署への事前連絡は法律で義務づけられているものではありません。航空法などの許可とは異なり、「任意の周知」です。

しかしながら、ドローンを飛行させていると、一般市民から「不審なドローンが飛んでいる」と通報されるケースが少なくありません。

そして、通報があった場合、警察官は必ず現場に出動しなければならないというルールがあるため、現場に警察が駆けつけることになります。

このとき、警察署に事前周知がなければ、現場対応に時間がかかるばかりか、状況によっては撮影の中断を余儀なくされる可能性も出てきます。

一方で、事前に警察に連絡をしておけば、通報が入った際も「事前に連絡を受けています」と警察署の管轄内で情報共有され、撮影現場が混乱するリスクを大きく減らすことができます。

警察官が現場に来た場合も制作部の方の対応のみで完了する場合が多くなります。

つまり、関係各所への信頼構築とトラブル防止の観点から、事前周知は非常に効果的かつ現実的なリスク対策といえるのです。

ドローン撮影時に警察署へ伝えるべき情報一覧

以下の内容を整理し、電話で伝えられるようにしましょう。

会社名(または個人名)

撮影場所の住所

撮影内容(例:テレビCM用空撮、映画撮影など)

ドローンの種類(機種名)

機体登録番号

担当者の氏名と連絡先(電話番号)

これらは予めメモにまとめておくと、慌てずにスムーズに対応できます。

撮影当日を円滑にするための連絡タイミング

警察署への連絡は平日9:00〜17:00の時間帯に行いましょう。
夜間や早朝は当直職員しかおらず、警備課・生活安全課などの担当者が不在のため、正式な受理や共有がされないことがあります。

理想的なのは、飛行予定日の前日午前中までに連絡を済ませることです。
特に映画ロケやCM撮影のように大規模スタッフが動く現場では、事前周知を早めに行うことで混乱を防げます。

警察署への電話応答マニュアル

【STEP 0:撮影場所の管轄警察署を確認する。

まず最初に行うべきは、撮影現場を担当する「管轄警察署」を特定することです。
市区町村が同じでも、丁目や通りによって所轄が異なる場合があります。

撮影場所の住所を入力し、該当する警察署を特定。

「千葉県 警察署管轄一覧」などと検索をかけると各都道府県の警察HPのリンクが表示されます。撮影場所の住所と照合して管轄警察署を特定しましょう。

例:東京都内の場合、「警視庁 住所から所轄を調べる」で検索可能。

👉 警視庁:所轄警察署の検索ページ

この確認を怠ると、隣接署に電話をしてしまい、再度かけ直す手間が発生することがあります。
まずは、正しい警察署を調べることが最初の一歩です。

ポイント:都道府県毎にドローンの担当部署が違うことがあります。警備課もしくは生活安全課が担当になっています。警視庁は警備課が担当です。

【STEP 1:電話交換に伝える】

「お忙しいところ失礼いたします。
ドローンを使用した撮影の事前周知の件でご連絡いたしました。
ご担当の部署の方にお繋ぎいただけますでしょうか?

【STEP 2:担当部署につながった後の応対例】

「私、〇〇(会社名/個人名)の△△(氏名)と申します。

本日(もしくは〇月〇日)、〇〇時頃より、
〇〇市〇〇町〇丁目付近にてドローンを使用した撮影を予定しております。
撮影内容は〇〇(例:CMの空撮、映画撮影など)になります。

ご迷惑をおかけしないように、事前にご連絡差し上げました。
万が一通報等があった場合には、私の方で対応いたしますので、
ご承知おきいただけますと幸いです。」

【よく聞かれる情報(警察官の指示に従って回答)】

・撮影日時・時間帯

・撮影場所の詳細な住所や目印

・使用目的(例:CM撮影、観光PRなど)

・ドローンの種類・型番

・登録記号・番号

・飛行形態(目視内飛行/目視外/補助者の有無など)

・担当者の氏名・会社名・連絡先

「担当は私、△△(氏名)です。
連絡先は〇〇-〇〇〇〇-〇〇〇〇です。
何かありましたらお電話いただければ対応いたします。
どうぞよろしくお願いいたします。」

どんなときに警察署への事前連絡が必要?ドローン運用時の具体的シチュエーション10選

ドローンの業務利用は年々広がりを見せており、CMや映画撮影意外にも産業系の測量、調査など多岐にわたります。
その中には、周囲の誤解を招いたり、通報リスクが高いシチュエーションも多く含まれています。

以下に挙げるのは、警察署への事前周知を特に推奨するドローン運用シーンの一例です。現場の安全確保と信頼関係の構築のため、撮影や運用前にぜひ参考にしてください。

1:映画の空撮

許可を受けた私有地上空の撮影であっても、人目にふれる場合には通報されるリスクが高まります。

2:CM撮影でのドローン使用

人通りの多い商業エリアや公共施設付近では、ドローンの飛行が目立ちやすく、一般の方が驚いて通報することも少なくありません。
市街地や都心部での撮影時は、事前周知と体制づくりが不可欠です。

3:VP撮影での敷地内・周辺空撮

企業敷地内での撮影でも、外部から見ると「なぜ飛ばしているのか分からない」状況になりやすく、通報される可能性があります。
特に警戒度の高い施設周辺では、警察だけでなく、近隣事業者にも一言伝えておくと安心です。

4:不動産の眺望撮影(マンション上空・密集地周辺)

マンション建設予定地での眺望撮影では、隣接するマンションやビルの住民が“盗撮ではないか”と誤解し通報するケースが多く発生しています。
事前にビラ配布や説明会を行い、理解を得てから撮影に入ることがトラブル防止に効果的です。

5:赤外線ドローンによる建物・屋根の点検

赤外線外壁点検など長時間飛行していて不審に思われやすい作業です。
特に長時間の撮影を伴う場合は、近隣住民へのビラ投函、看板設置などで作業内容を明示しましょう。

6:写真測量(造成地・都市開発地・道路沿い)

住宅造成地やインフラ工事予定地での測量は、地域住民や通行人から通報されることがあります。
警察署に事前連絡を入れておけば、通報対応の際も状況把握が早く、現場の負担が軽減されます。

7:建設現場での定点記録・進捗管理撮影

建設現場の定期空撮では、近隣の住宅やオフィスビルに接していることが多く、上空にドローンがあるだけで通報されるケースがあります。
事前連絡と簡易な説明看板の設置で、無用なトラブルを防ぐことが可能です。

8:観光地・名所でのPR映像制作(世界遺産・景勝地など)

観光名所は一般にドローン飛行が禁止されているケースが多く、たとえ自治体依頼で撮影許可を得ていても、現地の看板表示と矛盾して見えることがあります。
観光客や住民が誤って通報する可能性が高いため、自治体にも迷惑がかからぬよう、警察署への事前連絡は徹底しましょう。

9:イベント上空からの群衆撮影(マラソン・フェス・花火大会など)

イベント上空は航空法でも特に厳しい審査基準が求められて個別申請を実施しなければ飛行できないことが多いです。
また、大規模イベントでは許可のない“野良ドローン”が紛れて飛行していることもあるため、警察・主催者と連携し、「正規の撮影班」であることを明示する目的でも、事前周知は不可欠です。
無許可ドローンを発見した場合は速やかに通報しましょう

10:インフラ点検(橋梁・堤防・送電線等)

橋梁や堤防、送電線などの点検では、高所や公共エリアを飛行するため、周囲から見ると作業内容が分かりづらく、誤解を生むことがあります。
特に人の目に触れやすい都市部では、作業前に警察署へ連絡し、必要に応じて自治体・近隣住民への情報提供も行いましょう。

実例:事前連絡が功を奏したCM撮影現場

あるCM撮影で、都心一等地の私有地内で飛行していた際に通報が入りました。
現場内に警察官が訪ねてきましたが、事前に情報を共有していたため許可書を提示したら事前情報と照合が取れたため、2分ほどで確認が完了しました。

飛行許可等の手続きが問題なく済んでいれば警察官の対応もすぐに終わることが多いですが、別の事例として警視庁のヘリが上空を警戒して警察官20名ほどに囲まれた事例などもあります。
事前通報していればこのような状況でもお咎めなしで済みますが、現場には迷惑がかかってしまう場合もあります。

また、事前に連絡しておくと急に決まった重要人物の警護などが発生すると短時間の飛行自粛要請などの情報をすぐに受け取ることが可能です。該当する場所で事前通報なしに実施していた場合などは当日警察官の対応に追われてしまう場合もあるでしょう。

まとめ:CM・映画撮影の成功は“事前連絡”から

これらの業務はすべて、航空法・関係法令に則って飛行するものであっても、第三者からは「何をしているのか分からない=不安」にみられてしまいます。

警察署への事前連絡は義務ではありませんが、通報対応がスムーズになり、現場での信頼構築・撮影効率の向上につながります。

映像制作や点検、調査といった専門業務を支えるプロフェッショナルだからこそ、
“飛ばす前に知らせておく”という一手間を、ぜひルーティン化していきましょう。

著者:石山裕太 TRICO.代表取締役

ドローンカメラマンとして業界歴10年以上。CM、VR、イベント、産業系とオールジャンルの撮影に携わる。 マイクロドローンから超大型機まで、繊細な飛行技術を有する案件が得意。ドローンVR作品は日本各地で上映中。

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