ドローン測量が変える土木工事の進捗管理と現況把握の最前線

投稿:2025年10月30日|更新:2025年10月30日著者:石山裕太 TRICO.代表取締役

点検・産業

建設現場におけるドローン活用は、近年急速に進んでいます。特に「ドローン測量」は、従来の測量方法に比べて圧倒的な効率化と高精度化を実現し、進捗管理・現況管理のあり方を大きく変えつつあります。

国土交通省が推進する施策においても、ICT活用による生産性向上は重要な目標の一つです。人手不足が深刻化する建設業界にとって、ドローンはまさに救世主とも言える存在です。

ドローン測量は、単に地形や構造物を計測するだけでなく、工事の進捗状況をリアルタイムに把握し、関係者間で情報を共有するための強力なツールとなります。これにより、施工管理の効率化、安全性の向上、コスト削減、工期短縮といった様々なメリットが期待できます。

こちらでは、ドローン測量に関する基本的な情報をご紹介いたします。ドローン導入を検討されている建設事業者様の参考になりましたら幸いです。

土木現場での測量の役割と進捗管理の全体像

土木現場での測量の役割と進捗管理の全体像

土木工事における測量は、現場の現状把握と計画の進捗管理の基盤です。正確な地形情報がなければ、適切な設計業務、施工計画や安全対策が立てられません。特に大規模な掘削や盛土工事では、どれだけの土量が移動したか、工事が計画通りに進んでいるかを定量的に把握することが必須です。

以前は現場作業員が時間をかけて地上測量を行っていましたが、これには多くの人員と日数が必要であり、人的リスクも伴います。また、地上測量では日数がかかることにより日々、差異がでてしまっていました。これでは、定量的なデータではなくなります。ドローン測量はこれらの課題を解消し、短時間で広範囲のデータ取得を可能にすることで、現場運営の効率化と安全性向上に寄与しています。

また、測量データを継続的に取得することで、進捗状況の変化を数値で追跡でき、施工品質の管理や問題の早期発見につながるのもドローン測量の魅力です。

測量現場の「当たり前」を変えるドローンの力

従来の地上測量では、広大な敷地を測量するのに数日、場合によっては数週間を要することも珍しくありませんでした。その間、作業員は危険な傾斜地や足場の悪い場所で測量作業に専念しなければならず、時間とコスト、そして何より人的リスクという大きな課題を抱えていました。また、測量に時間がかかることで、その日のうちに現場の状況が変わってしまうことも多く、せっかくのデータがすぐに陳腐化してしまうという問題もあります。

ドローン測量は、これらの課題を根本から解決する革新的なソリューションです。上空から短時間で広範囲を撮影し、高精度な三次元点群データを取得することで、測量にかかる日数を大幅に削減します。これにより、人件費や機材費といったコストを抑えるだけでなく、他の作業を滞りなく進めることが可能になります。

ドローン測量による具体的なメリット

ドローン測量がもたらすメリットは多岐にわたります。

圧倒的なスピードと効率性

数ヘクタールもの広大な土地でも、ドローンならわずか数十分から数時間で測量できます。これにより、最新の現場状況をリアルタイムに近い形で把握することが可能になります。

安全性の飛躍的な向上

危険な場所の測量を人に代わってドローンが行うため、作業員をリスクに晒すことなく、安全に正確なデータを取得できます。これは、労働災害ゼロを目指す現場にとって、重要なポイントです。

正確な土量管理と進捗把握

ドローンで取得した三次元データは、掘削や盛土の土量を正確に計算するために活用できます。定期的に測量を行うことで、計画通りの土量移動がなされているか、あるいは過不足がないかを定量的に把握し、工事全体の進捗状況を数値で可視化することが可能です。これにより、遅延の兆候を早期に発見し、適切な対策を講じることができます。

ドローン測量は、もはや単なる「新しい測量方法」ではなく、土木現場の生産性と安全性を向上させるための必須ツールとなりつつあります。従来の測量方法に課題を感じているのであれば、ドローン測量の導入を検討することで、プロジェクト管理をよりスマートで確実なものに変えていけるでしょう。

写真測量とLiDAR測量それぞれの特徴

写真測量とLiDAR測量それぞれの特徴

ドローン測量は主に「写真測量」と「LiDAR測量」の二つの方法がありますが、それぞれ得意分野と限界があります。

写真測量

写真測量の特徴

写真測量は高解像度の写真を数百~数万枚撮影し、それを解析してオルソ画像を生成してから点群情報として三次元化するのが流れです。視覚的にわかりやすい画像を得られるため、現場の表面状況の確認に便利ですが、樹木や構造物などの遮蔽物があると、その下の地表のデータ取得は難しいという課題があります。

写真測量の主な活用シーン

  • 造成地の土量計算(更地の場合)

地表が露出している現場であれば、写真測量で十分な精度を確保できます。

  • 工事進捗の記録

工事の進行状況を空撮画像として定期的に記録し、関係者間で共有するのに適しています。

  • 出来形管理

最終的な完成形が設計図通りに出来上がっているかを確認する際に、三次元モデルやオルソ画像が活用されます。

  • 災害地の状況把握

災害発生後の広範囲な被害状況を迅速に把握する際に有効です。

LiDAR測量

LiDAR測量の特徴

一方でLiDAR測量はレーザー光を照射して植生の影響を受けずに地表面データを取得することが可能です。これにより起工前の森林や複雑な地形でも詳細な地表の三次元情報が得られ、現況把握に非常に有効です。近年はLiDAR測量の技術向上と価格低下により、土木現場の標準的な測量手法として急速に普及しています。※レーザー光は障害物を通過しません

現場の状況や目的に応じて、これらの測量手法を組み合わせて使うことで、より正確で信頼性の高いデータ取得が可能になります。

LiDAR測量の主な活用シーン

  • 森林伐採が伴う造成工事の現況測量

樹木が密集している場所でも、伐採前の地表面データを正確に取得し、土量計算の基礎とすることが可能です。

  • 大規模な掘削・盛土工事の土量計算

高精度な点群データに基づき、掘削・盛土の進捗や残土量を正確に把握します。

  • 河川測量やインフラ点検

河川の護岸や橋梁などの構造物の詳細な形状を三次元データで取得し、点検や維持管理に活用します。

  • 防災・減災のための詳細な地形分析

崖地や急傾斜地などの詳細な地形データを取得し、土砂災害の危険箇所を特定します。

現場の目的に応じた最適な選択を

写真測量とLiDAR測量は、それぞれ異なる特性を持つ技術です。

現況を視覚的に把握したい、安価で手軽に進捗記録を行いたい場合は、写真測量が適しています。

樹木が密集する現場で正確な地表面情報を取得したい、高精度な土量計算を行いたい場合は、LiDAR測量が最適です。

最も効果的なのは、これらの手法を現場の状況や目的に応じて組み合わせることです。例えば、起工前の現況測量にはLiDARで地表面データを取得し、工事中の進捗管理や出来形管理には写真測量で定期的に記録を残すといった運用方法が考えられます。上手に使い分けることで、必要な情報が入手できるでしょう。

現況測量が支える進捗管理の実務と活用ポイント

現況測量は、工事の進捗管理に欠かせない基礎的な作業です。ドローンで取得した最新の地形データと設計図面を比較し、掘削や盛土の量を定量的に把握することで、施工が計画通り進んでいるかを判断します。

この作業を定期的に繰り返し行うことで、工事のどの段階でどれだけの進捗があったかを時系列で把握可能です。こうしたデータは、作業効率の向上や予算の適正管理に役立つほか、施工中の問題点の早期発見や対応にもつながります。

効果的な進捗管理のためには、以下のポイントに注意が必要です。

  • 測量の間隔やタイミングを適切に設定し、最新の状況を正確に反映する
  • 測量データの精度と一貫性を確保するために、計画的な運用を行う
  • 専門的な解析技術を活用し、データをわかりやすく現場管理者に提供する

これらのポイントを押さえ、ドローンによる現況測量を継続的かつ計画的に実施することで、進捗管理の精度は飛躍的に向上します。

現場の状況をリアルタイムに把握できることは、進捗管理における大きな強みです。これにより、現場責任者や管理者は最新のデータをもとに迅速かつ的確な意思決定を下すことができ、工事の遅延やトラブルを未然に防ぐ対策をタイムリーに講じられます。また、問題が早期に発見されることで、修正コストや再作業のリスクを大幅に軽減し、全体の工期短縮にもつながります。

ドローン測量がもたらす新しい価値とこれからの可能性

今回は、ドローン測量についてご紹介しました。

建設現場において測量は欠かせないものです。測量によって正確なデータを得られれば、安全かつ適切なプランを考案できます。

昔は測量と言えば、地上測量が主流でした。人の手で行う測量のため、手間がかかります。しかし、ドローンが登場したことで、地上測量の課題を解消しつつ、短期間でデータを取得可能となりました。メリットの大きいドローン測量は、魅力的な測量方法といえるでしょう。

的確なドローン測量を行うには、ドローンを操縦する優れた技術が必要です。「自社にドローン操縦が得意な者がいない」「人員が足りておらず測量ができない」など、そのようなお悩みを抱いている方もいらっしゃるのではないでしょうか。

株式会社TRICO.では、写真測量からLiDAR測量まで幅広く対応しております。各建設現場に応じた方法で、計測から解析までワンストップでサービスを提供いたしますのでお任せください。

対応可能な業務

  • ドローン写真測量・ドローンLiDAR測量
  • フォトグラメトリ・3DGSモデル

ドローンを使うことで、上空から広範囲に撮影可能です。景観調査、文化遺産保存、ゲーム・アニメ、映像制作におけるVFXへの活用など、あらゆるジャンルで活用できるフォトグラメトリを実施いたします。また、地上撮影にも対応可能です。

ご相談時には、「事例を教えて」「どうやって進めるの?」など、気兼ねなく何でもご質問いただければ幸いです。一つ一つの疑問に丁寧にお答えいたします。

株式会社TRICO.は、お客様の課題を解決するためでしたら、手間を惜しみません。ドローンに関することでしたら、何でもお申しつけください。測量はもちろん、その他のことも全力で対応いたします。ご依頼、もしくはご不明な点がありましたらお問い合わせください。

著者:石山裕太 TRICO.代表取締役

ドローンカメラマンとして業界歴10年以上。CM、VR、イベント、産業系とオールジャンルの撮影に携わる。 マイクロドローンから超大型機まで、繊細な飛行技術を有する案件が得意。ドローンVR作品は日本各地で上映中。

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