高画質VRドローン空撮の裏側。映像制作会社が知っておきたい撮影ワークフロー

2025年5月9日 VR・360

この記事では、VRドローン撮影を成功させるための準備から本番、そして後処理までの一連の流れを、プロの視点から徹底解説します。「VR映像にドローン映像を取り入れたい」「ドローンのVR撮影を依頼したい」という方は必見です。

1. 撮影前の重要ステップ!安全と許可、そして最高のロケーションを見つける

ロケハンで太陽の位置を確認

VRドローン撮影の成否を左右すると言っても過言ではないのが、事前の準備です。安全な飛行と法規制の遵守はもちろん、魅力的な映像を捉えるためのロケーション選びが非常に重要になります。

1.1. 緻密なロケハン:VRならではの視点を意識したルート選定

単に空から撮影するだけでなく、「どこを見せたいか」「どのように視線を誘導するか」というVRならではの視点を持ち、撮影ルートを決定します。

小型ドローンを活用したルートプレビュー: 事前に小型のドローンを飛ばし、広範囲の候補地を効率的に確認。VR映像として最適なルート、高度、アングルをシミュレーションします。併せて電波環境も確認します。

主要な被写体と周辺環境の確認: VRで強調したいメインの被写体はもちろん、周囲の景観や構造物も重要な要素です。360度見渡せるVR映像として、どの方向からの眺めが最も魅力的かを検討します。

安全な離発着場所の確保: ドローンの安全な離着陸に必要なスペース、地面の状態、障害物の有無などを詳細に確認します。VR撮影のルート全体を考慮し、複数候補をリストアップしておくと安心です。

オペレーション場所の選定:VR撮影は通常のドローン空撮とは違い360度写り込むのでオペレーションする場所も慎重に選ぶ必要があります。メイン被写体を捉えた時にどこでオペレーションするのが最適なのか、隠れる場所があるのか、隠れても伝送が問題ないのか経験に基づき選定します。

1.2. 法規制と許諾関係の調査:プロとして遵守すべきルール

ドローン飛行には航空法をはじめとする様々な法律や条例が関わってきます。また、私有地や管理された場所での撮影には許可が必要です。基本的には制作会社側が許可取得してくれますが、ドローン特有の確認事項に関しては制作会社の担当者と連携して許可を確認していきます。

飛行禁止区域の確認: 国土交通省のドローン飛行許可・承認制度に基づき、飛行禁止空域(空港周辺、人口集中地区など)や飛行制限区域を確認します。

飛行許可・承認の申請: 包括申請で問題ない飛行の内容か確認して、高高度飛行などが必要とされる場合には事前に国土交通省への個別申請を行います。

撮影場所の管理者への許諾申請: 公園、施設、私有地など、撮影を行う場所の管理者へ事前に撮影許可を得ます。口頭だけでなく、書面での許可を得ておくとトラブルを避けることができます。

関係各所への連絡・調整: 必要に応じて、警察署や自治体など関係各所への事前連絡や調整を行います。

2. 本番に向けた準備:万全の機材と体制で臨む

カメラと同じ重量でテストフライト

撮影当日をスムーズに進めるためには、事前の機材準備と最終確認が不可欠です。

2.1. 機材の徹底チェック:トラブルを未然に防ぐ

ドローン本体、カメラ、バッテリー、送信機、モニターなど、使用する全ての機材が正常に動作するかを入念にチェックします。

ドローン本体の点検: プロペラの損傷、モーターの異音、フレーム、ネジ類の緩みなどを確認します。

バッテリーの充電と動作確認: 必要なバッテリーが十分に充電されているかを確認し、電圧差もチェックします。予備バッテリーも忘れずに準備しましょう。

送信機と受信機の動作確認: 電波の送受信に問題がないか、各操作ボタンやスティックが正常に機能するかを確認します。

VRカメラの動作確認と設定: 360°カメラのレンズに汚れや傷がないかを確認し、撮影に必要な設定(解像度、フレームレートなど)を行います。

2.2. テストフライト:本番を想定した最終リハーサル

テストフライトを行い、ドローンの操作性、カメラの動作、映像の伝送状況などを確認します。

基本的な飛行操作の確認: 上昇、下降、前進、後退、左右移動、旋回などの基本操作がスムーズに行えるかを確認します。

離着陸の確認: VRドローンの離着陸方法はランディングギアを使用できないため特殊な方法で実施します。常日頃実施できないので定期的に習熟飛行をおこない、補助員との連携方法を確認します。

新機材の確認: 新しく発売されたVRカメラを新たにドローンへ搭載する際は必ず、機体の挙動、カメラのブレ、微振動、映像確認まで一連の流れを確認します。映像にブレがある場合には取付方法の確認を重ねてクオリティを担保します。

2.3. 車両への積み込み:安全かつ効率的な運搬

テストフライトと機材検証を終えたら機材を車両に積み込みます。現地での動きを考慮した上で積み込みの配置を決定します。

機材の保護: ドローン本体や精密機器は、衝撃吸収性のあるケースや緩衝材でしっかりと保護します。

積み込み順序の考慮: 撮影の流れを考慮し、必要な機材をすぐに取り出せるように積み込みます。

3. いよいよ本番:最高のVR映像を捉える

世界遺産撮影の本番

入念な準備を経て、いよいよ本番の撮影です。安全第一を心がけ、最高のVR映像を撮影しましょう。

3.1. 離発着台の準備:安全なフライトの基盤

安定した離着陸のため、平坦で障害物のない場所を選び、離発着台を設置します。風の影響を受けにくいように、必要に応じて固定します。

3.2. 機体準備:最終チェックと調整

ドローン本体、プロペラ、バッテリーの接続などを確認し、フライトに必要な準備を整えます。

3.3. テストフライト:直前の状態確認

機材を運搬してきたので本番前にテストフライトを行い、機体の状態、電波状況、カメラの動作などを最終確認します。

3.4. カメラ準備:VR撮影モードの設定

VRカメラの電源を入れ、撮影に必要な設定を最終確認します。
VRカメラのWifi機能は必ずOFFにしてドローンに取付をします。

3.5. カメラ取り付け:確実な固定と配線

VRカメラをドローンにしっかりと取り付け、映像データや電源の配線を確実に行います。飛行中に外れないよう、ロック機構などを確認します。

3.6. 最終気象判断:安全な飛行のための重要な確認

直前の気象情報を確認し、風速、風向き、降雨の可能性などを考慮して、安全に飛行できるかどうかを判断します。悪天候の場合は、無理に飛行せず延期することも重要です。

3.7. 本番撮影:臨場感あふれる映像を捉える

事前に計画した飛行ルートと撮影プランに基づき、VRドローンを安全にダイナミックに操作して撮影します。酔わないように繊細な操作も求められます。

3.8. 撮影データ確認:その場でクオリティをチェック

撮影後、速やかに映像データをモニターなどで確認し、飛行ルート、画角、露出などに問題がないかをチェックします。必要に応じて、再度撮影を行う判断をします。

3.9. 機材撤収:来た時よりも美しく

撮影が終了したら、使用した機材を丁寧に撤収します。離発着場所周辺にゴミなどが落ちていないかを確認し、来た時よりも美しい状態に戻すことを心がけましょう。

まとめ:VRドローン撮影で新たな映像体験を

VRドローン撮影は、事前の準備、安全な飛行、そしてVRならではの視点が重要になります。

展示施設のコンテンツにVR映像を考えている事業者、自治体の方々は是非、CGだけではなく実写のコンテンツに空撮映像を取り入れてみてください。