ドローンによる空撮は、建設・プラント業界においても進捗確認、広報資料、点検など多岐にわたる用途で活用されています。
上空からの情報を効果的に伝えられるため、ニーズはますます高まっています。
しかし、工事現場やプラントは、一般の撮影現場とは異なり、多くの作業員や重機が稼働する危険な場所でもあります。また、安全管理上のルールも厳格に定められています。初めてこれらの現場でドローン撮影を行う場合、事前の知識不足や不注意が、重大な事故やトラブルにつながる可能性も否定できません。
安全を脅かす行為は、元請や現場責任者に多大な迷惑をかけるだけでなく、今後の業務にも悪影響を及ぼします。
本記事では、ドローン撮影業者として、工事現場やプラントで安全かつ円滑に撮影業務を遂行するために不可欠なマナーとルールを解説します。これらの知識を身につけ、現場関係者との信頼関係を築き、プロフェッショナルとして行動できるようにしましょう。
現場の安全管理体制とルール遵守
工事現場やプラントは、常に危険が伴う環境です。現場の安全管理体制を理解し、定められたルールを厳守することは、自身の安全だけでなく、他の作業員の安全を守る上でも非常に重要です。
・現場内での事故や怪我については元請け業者、現場管理者、発注者の責任も追求されてしまいます。現場に迷惑をかけないように安全に対する意識を高く持ち作業にあたりましょう。
・安全教育への参加: 現場によっては、作業前に安全教育の受講が義務付けられている場合があります。入構者全員が必ず参加し、現場特有の危険箇所や緊急時の対応などを理解しましょう。
・危険予知訓練(KY活動)への参加: 多くの工事現場では、朝礼時などに危険予知訓練(KY活動)を実施しています。撮影前にKY活動に参加するよう指示があった場合は、現場の潜在的な危険性を認識し、対策を共有しましょう。
・5Sの徹底: 整理・整頓・清掃・清潔・躾の5Sは、安全な作業環境を維持するための基本的な原則です。撮影機材やケーブル、工具など、自身の持ち物を常に整理整頓し、現場を清潔に保つように心がけましょう。また、現場の安全はチーム全体の意識向上が不可欠です。撮影責任者は、同行するスタッフが安全ルールを遵守し、危険な行動をとらないよう、事前に十分な教育と指導を行いましょう。
工事現場での徹底事項
保護具の着用
現場内ではヘルメット・安全靴・ゴーグルなどの指定された保護具を常に着用してください。
挨拶はしっかり
お世話になる現場監督、担当職員などにきちんと挨拶を実施しましょう。現場内の移動時や撮影中付近にいる作業者への声かけなども作業をスムーズに気持ちよく終了させるためにも心がけてください。
報連相の徹底
撮影内容、飛行ルート、作業手順の変更など、事前に共有できる情報は正確に説明し、認識の齟齬がないように努めましょう。予期せぬ事態や変更が生じた場合は、自己判断で行動せず、必ず現場責任者に速やかに報告・連絡・相談(報連相)を行い、指示を仰いでください。
吊り荷の下に入らない
工事現場内では、クレーンによる重量物の吊り上げ作業が頻繁に行われています。クレーン作業中は、吊り上げられている荷物の下、およびクレーンブームの旋回範囲内には絶対に立ち入らないでください。吊り荷が落下した場合、重大な事故につながる可能性があります。
重機に近づかない
ショベルカー、クレーン、ダンプなどの重機は大きな死角があり、オペレーターからも気づかれにくい場合があります。重機が稼働中は、作業半径内には絶対に近づかず、死角に入らないように常に注意してください。やむを得ず近づく場合は、必ずオペレーターに声をかけ、合図を送るなどしてコミュニケーションを取りましょう。
安全通路を使用する
建設現場内では、作業員が安全に移動できるよう、指定された安全通路を必ず移動するようにしましょう。土木現場など、安全通路が整備されていない場所では、足元に注意し、安全が確保されたルートを通行してください。整備されていない場所を歩いての転倒や滑落は絶対に避けてください。
手すりに寄りかからない
建設現場における労働災害で最も多いのは、墜落・転落事故です。現場内に仮設されている手すりは、あくまで転落防止を目的としたものであり、体重をかけたり、寄りかかったりすると、予期せず動いたり、破損したりする危険性があります。開口部や高所の端には絶対に近づかないように心がけてください。
安全帯使用を徹底
高さ2メートル以上の高所での作業(足場上、梯子上など)を伴う場合は、安全帯の使用が義務付けられています。必ず正しく装着し、フックを適切な箇所に掛けて作業を行ってください。
昇降時の3点支持
階段を昇降する際は片手は必ずあけておき片手と両足で支持しながら3点支持してバランスを崩さないようにしましょう。
現場内の資材類を触らない
資材や構造物には基本的には触らないでください。場所を勝手に移動するのもご法度です
飛び降りない
少しの段差(40~60cm)でも転倒して怪我の恐れがあるため、飛び降りてはいけません。しゃがんで足からおろすように移動しましょう。
ながら移動をしない
スマートフォンや撮影機材のモニターを見ながらの移動は絶対にしないでください。工事現場内には、鉄板、配管、突起物など、足元に危険な箇所がたくさんあります。移動する際は、常に周囲の状況に注意を払いましょう。
ハンドポケットをしない
冬季など、手が 寒い場合でも、作業中にハンドポケット(ズボンのポケットに手を入れること)をするのは禁止です。とっさの際に手が使えず、転倒や事故につながる可能性があります。手袋などの防寒具を使用しましょう。
火気厳禁
現場内では、許可されていない火気の使用は一切認められていません。引火性の高い 溶剤がある場所もあるため、火災の原因となる行為は絶対にしないでください。
喫煙場所を守る
喫煙が許可されている場合でも、必ず指定された喫煙場所と時間を厳守してください。工事現場内にいる時は、現場のルールを遵守することが基本です。電子タバコも同様に、指定された場所でのみ使用しましょう。
電源を借りる際は必ず事前に確認
ドローンのバッテリー充電などで現場の電源を使用する場合は、必ず事前に現場責任者に確認し、許可を得てください。消費電力の大きいMatrice300などのバッテリーを充電する際は、ブレーカーが落ちる可能性もあるため、必ず事前に容量などを確認しましょう。
荷物移動は無理せず
作業用の通路は足場が悪く狭い場所も多いため、重い荷物を一度に無理して運搬しようとすると、バランスを崩したり、足元を滑らせたりする危険性があります。確実に運搬できる量に分け、こまめに移動させるようにしましょう。
まとめ
撮影の発注者側も、現場での事故発生による工程の遅延や安全管理体制の見直しなど、様々なリスクを負うことになります。
そのため、工事現場での撮影マナーや安全ルールを遵守できる信頼のおけるドローン撮影業者を選定することが重要となります。
ドローン事業者も、常に高い安全意識を持ち、本記事で解説した事項を徹底することで、怪我や事故なく撮影業務を完了させることを目指しましょう。
安全は全てに優先します。プロフェッショナルとしての自覚を持ち、安全第一で業務に取り組みましょう。