ドローン空撮の許可申請が不要な条件・特定飛行・包括申請と個別申請について

投稿:2025年10月30日|更新:2025年10月30日著者:石山裕太 TRICO.代表取締役

航空法

近年、ドローンを活用した空撮は、個人の趣味からビジネス利用まで幅広く広がっています。SNS投稿、映画・CM、不動産、観光、測量、農業など、用途は多岐にわたります。

しかし、ドローンの飛行には法律や安全ルールが厳しく定められており、違反すると重い罰則を受けることがあります。

「どんな場合に許可が必要?」「包括申請と個別申請の違いは?」

この記事では、ドローン空撮を始める前に知っておきたい法律・申請種別・安全ルールをわかりやすく解説します。

1:航空法の許可が不要となる条件(100g未満の機体/100g以上の飛行方法)

1:航空法の許可が不要となる条件(100g未満の機体/100g以上の飛行方法)

ドローンを飛ばす際、必ずしも許可が必要なわけではありません。次の条件を満たす場合、航空法上の許可・承認は不要です。

100g未満の機体は航空法には該当しない

100g未満の機体は模型航空機に分類されます。そのため、航空法の「無人航空機」には該当しません。

ただし、模型航空機でも遵守しなければいけない事項があります。

  • 緊急用務空域の飛行
  • 航空機の飛行に影響を及ぼすおそれのある行為

※150m以上の高高度や空港周辺での飛行は禁止されています。

  • 小型無人機等飛行禁止法は模型航空機も該当
  • 模型航空機も含む自治体条例等

重量とは、機体本体とバッテリーの合計の重量です。バッテリー以外の取り外しが可能な付属品は含みません。プロペラガードや搭載するカメラは重量に含まれません。

100g以上のドローンで許可が不要となる条件

禁止空域ではないか確かめる

  • 人口集中地区(DID)
  • 空港等の周辺
  • 150m以上の高度
  • 緊急用務空域

は、飛行禁止空域になります。特に人口集中地区(DID)は、自分の住んでいる地域が該当するか確認するようにしましょう。自分が住んでいる家の私有地内でも、人口集中地区に該当する場合は、許可なしでは飛行できません。

人口集中地区(DID)の調べ方:国土地理院「地理院地図」

日中の飛行

日没から日の出までの夜間飛行は許可が必要です。

目視内での飛行

機体を常に目視した状態で、操作する必要があります。送信機のモニターを注視してしまうと、目視外飛行に該当します。

人や建物との距離を30m以上確保する

第三者や第三者の所有する建物、乗り物から30m以内を飛行させる場合は、承認が必要です。

危険物を搭載しない

毒物、引火性液体などの危険物を搭載して飛行させる場合は、承認が必要です。

物件投下を行わない

飛行中のドローンから物件を投下する場合は、承認が必要です(地上に着陸した状態で物件を切り離す「設置」は、物件投下には含まれません)。

屋内での飛行

航空法の規制は屋外に適用されるため、建物内など屋内での飛行は許可・承認不要です。

係留飛行

十分な強度を有する紐等(長さ30m以内)で、無人航空機を地表または固定物に係留し「飛行範囲への第三者の立ち入りを管理する処置」を講じることです。

これらの条件を満たすことで、許可・承認不要でドローン空撮を行える可能性があります。

条件としてかなり厳しく規制されていますので、知らないうちに航空法違反を犯してしまう可能性は非常に高くなります。つまり、屋内で飛行させるのが、最も安全な方法にあたります。

なお、上記の条件をクリアしても、機体登録・飛行計画の通報・飛行日誌の作成は「義務」とされます。

100g以上のドローンを飛行させるためには、航空法を正しく理解して、国土交通省へ許可・承認を申請しておく方が賢明です。

2:知らないと危ない「特定飛行」とは

2:知らないと危ない「特定飛行」とは

100g以上のドローンを屋外で飛ばす場合や、特定の空域・飛行方法を行う場合には、「特定飛行」扱いとなり、国土交通大臣の許可・承認が必要です。

許可が必要な空域

  • 空港周辺
  • 地表から150m以上の高さ
  • 人口集中地区(DID)
  • 緊急災害時に指定された空域(緊急用務空域)

承認が必要な飛行方法

  • 夜間飛行(日没から日の出)
  • 目視外飛行(モニター越し操作など)
  • 第三者や建物・車両に30m以内での飛行
  • イベント会場の上空
  • 危険物の輸送や物件の投下

これらに違反すると、最大で懲役2年・罰金100万円以下の罰則が科される場合があります。

3:包括申請と個別申請の違い

飛行をする際に行う申請には、「包括申請」と「個別申請」があります。それぞれの概要としては、下記をご覧ください。

包括申請

包括申請とは、業務などで繰り返しドローンを飛行させる場合に、一定条件のもとで包括的に許可・承認を得る制度です。

主な特徴

申請有効期間:最大1年間。

飛行範囲:日本全国(空港周辺・150m以上を除く)。

許可される飛行方法は限定的。

飛行の都度、個別申請が不要になる。

包括申請で対応できる特定飛行

包括申請で許可されるのは、以下の6つの方法に限られます。

  • 人口集中地区(DID)
  • 夜間飛行
  • 目視外飛行
  • 30m以内の飛行
  • 危険物輸送
  • 物件投下

包括申請を取得した場合の注意事項

飛行場所や飛行日時を特定しない包括申請を実施しても、日本全国どこでも飛行できるわけではありません。航空法以外の法令には対応していなため、小型無人機等飛行禁止法、道路交通法、河川法、港則法、自然公園法、各種条例などが適用される区域では別途申請が必要になるケースがあるので確認するようにしましょう。

包括申請×個別申請の違い(対比表)

項目 包括申請 個別申請
有効期間 最大1年間 飛行日時・期間を特定して申請
対象エリア 全国(空港周辺除く) 飛行場所を特定して申請
許可までのスピード 比較的早い 内容により数週間かかることも
費用(自力申請時) 無料 無料(内容により負荷は高め)

許可申請の取得ステップ(DIPSで申請)

  1. DIPSアカウント作成
  2. 機体登録
  3. 操縦者情報登録
  4. 申請方式選択
  5. マニュアル選択(標準/独自)
  6. 飛行計画入力
  7. 申請→許可取得

詳しい申請内容は別記事で解説いたします。

個別申請

個別申請とは、場所を特定した申請方法で、包括申請では対応できない特定の条件・飛行方法で飛行させたいときに必要です。

包括申請との違い

項目 包括申請 個別申請
飛行場所 日本全国 住所を特定
有効期限 最大1年間 飛行日時・期間を特定して申請
主な適用条件 人口集中地区、夜間飛行、目視外飛行、30m以内の飛行、危険物輸送、物件投下 すべての特定飛行
柔軟性 年間で有効だが制限は多い 高い

個別申請が必要なケース(包括申請が認められていない飛行方法)

  • 空港等周辺
  • 緊急用務空域
  • 150m以上の高さの飛行
  • 人または家屋の密集している地域の上空における夜間飛行
  • 夜間における目視外飛行
  • 補助者を配置しない目視外飛行
  • 催し場所の上空の飛行
  • その他

※以前は包括申請で可能だったケースも、現在では個別申請が必要になっている例があります。

費用・時間

申請方法 案件タイプ 費用の目安
自己申請 一般案件 0円
行政書士へ依頼 一般案件 約3~5万円
行政書士へ依頼 複雑案件(空港・イベントなど) 5万~10万円

申請~許可までの期間は案件によりますが、基本的には数日~数週間です。ただし、複雑案件の場合は長期化する場合があります。

航空法遵守と安全管理の徹底がドローン活用の信頼を支える

ドローンの可能性は、映像制作や点検、物流など、今後ますます広がっていくと期待されています。しかし、その活用を安全かつ持続的なものにするためには必ず法律と安全ルールを踏まえて飛行する姿勢が欠かせません。

特に、航空法に基づく許可・承認は「形式的な手続き」ではなく、事故を未然に防ぎ、社会的な信頼を守るための最低限のルールです。違反をすれば罰則を受けるだけでなく、操縦者本人や事業そのものの信用を大きく失うことにもつながります。

また、航空法をはじめとする関連法令は年々改正されており、古い知識のままでは思わぬ違反に直結するリスクがあります。常に最新の情報をチェックし、自身の飛行方法や申請内容が現行法に適合しているかを確認することが、ドローンを扱うすべての人に求められています。

プロとして業務に携わる方はもちろん、趣味で飛ばす方であっても、「法令遵守」と「安全管理」への姿勢が社会全体のドローン活用の信頼性を高めるという意識を持つことが大切です。適切な許可申請と安全確認を徹底することで、トラブルを避けながら、安心してドローン空撮の魅力を発揮することができるでしょう。

ドローン空撮についてより詳しく把握したい方は、株式会社TRICO.までお問い合わせください。

著者:石山裕太 TRICO.代表取締役

ドローンカメラマンとして業界歴10年以上。CM、VR、イベント、産業系とオールジャンルの撮影に携わる。 マイクロドローンから超大型機まで、繊細な飛行技術を有する案件が得意。ドローンVR作品は日本各地で上映中。

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