DJIから2023年4月12日に発表された最新のシネマドローン。先代のInspire2の発売から約7年。
CM撮影、映画撮影、VP撮影などクオリティの求められる撮影現場にはかかせない機体性能とカメラスペック。
この記事ではInspire3の専用ジンバルカメラZenmuseX9-8K Airの特徴を解説していきます。
当社が普段のCM撮影現場で設定しているポイントも紹介します。
目次
Zenmuse X9-8K Air
スペック
センサー | 35mmフルサイズCMOS |
最大解像度 | 写真:8192×5456 動画:8192×4320 |
動画解像度 | 詳細リストを確認 |
対応レンズ | DL 18mm F2.8 ASPHレンズ DL 24mm F2.8 LS ASPHレンズ DL 35mm F2.8 LS ASPHレンズ DL 50mm F2.8 LS ASPHレンズ DL 75mm F1.8 |
写真フォーマット | JPG,DNG |
動画フォーマット | MOV、CinemaDNG |
シャッターの種類 | 電子シャッター |
カメラ操作可能範囲 | チルト(ランディングギアが下がった状態): ジンバルチルト限界拡張前:-90° ~ +30° ジンバルチルト限界拡張後:-115° ~ +100° チルト(ランディングギアが上がった状態): ジンバルチルト限界拡張前:-90° ~ +30° ジンバルチルト限界拡張後:-140° ~ +75° ロール:±20° パン:±300° |
カメラ最大操作速度 | DJI RC Plus送信機使用時: チルト:120°/s ロール:180°/s パン:270°/s DJI Master Wheels使用時: チルト:432°/s ロール:432°/s パン:432°/s |
1. 🎥 8Kフルフレーム収録で圧倒的な解像度
・35mmフルフレームセンサー + 8K解像度により、微細なディテールまで鮮明に記録
・最大8192×4320ピクセルの映像は、4K納品時でも自在なパン・ズーム・リフレームが可能
・CinemaDNG/ProRes RAW 対応で、情報量を損なわずRAW収録

CinemaDNG
最大8K/25fps
Codec | Resolution | Image Area | AS比 | Sensor FPS (MB/s) | ||
23.976 | 24 | 25 | ||||
CinemaDNG | 8.1K | Full Frame | 17:9 (8192×4320) | 810 | 810 | 844 |
CinemaDNG | 8K | Full Frame | 2.39:1 (8192×3424) | 759 | 759 | 791 |
CinemaDNG
S&Qモード撮影 最大4K/100fps
Codec | Resolution | Image Area | AS比 | Sensor FPS | (MB/s) | ||
72 | 75 | 96 | 100 | ||||
CinemaDNG | 4.1K | Full Frame | 17:9 (8192×4320) | 607 | 632 | 810 | 844 |
CinemaDNG | 4K | Full Frame | 16:9 (7680×4320) | 569 | 832 | 759 | 791 |
ProRes RAW
最大8K/75fps
Codec | Resolution | Image Area | AS比 | Sensor FPS | (MB/s) | |||||||
23.976 | 24 | 25 | 29.97 | 30 | 48 | 50 | 59.94 | 60 | ||||
ProRes RAW | 8.1K | Full Frame | 17:9 (8192×4320) | 405 | 405 | 422 | 253 | 253 | 405 | 422 | 506 | 506 |
ProRes RAW | 8K | Full Frame | 16:9 (7680×4320) | 380 | 380 | 396 | 237 | 237 | 380 | 396 | 475 | 475 |
ProRes RAW
S&Qモード撮影 最大4K/120fps
Codec | Resolution | Image Area | AS比 | Sensor FPS | (MB/s) | ||||
72 | 75 | 96 | 100 | 119.88 | 120 | ||||
ProRes RAW | 4.1K | Full Frame | 17:9 (8192×4320) | 304 | 317 | 405 | 422 | 253 | 253 |
ProRes RAW | 4K | Full Frame | 16:9 (7680×4320) | 285 | 297 | 380 | 396 | 237 | 237 |
2. 🌗 デュアルネイティブEIで昼夜対応
・明るい日中はEI 800/320で最大画質
・夜間や夕暮れもEI 1600/4000でノイズを最小限に抑制
8KCinemaDNG & ProRes RAW収録の場合の制約は↓
・30fps以下:EI 800/4000
・30fps以上:EI 320/1600
CinemaDNG VS ProRes RAWでの収録のポイント
条件 | 推奨EI | CinemaDNG | ProRes RAW |
明るい屋外 | EI 800 | ハイライト保持・最大DR | 画質と編集速度のバランス |
室内・夕方 | EI 4000 | シャドウ情報豊富に収録 | ノイズが少なく編集が容易 |
夜間や低照度 | EI 6400以上 | 白飛びケア要・ノイズ処理が鍵 | ノイズリダクション前提でワークフロー良好 |
※8K23.976fps,24fps,25fps収録の場合の値↑
3.🌈 最大14ストップ以上のダイナミックレンジ
・ハイライトからシャドウまで豊かな階調再現
・特にEI 800使用時には最大14.7ストップを実現
・明暗差の大きなシーン(例:夕景、夜景、逆光)でも白飛び・黒つぶれを抑え、自然な仕上がり


ダイナミックレンジの比較
EI | 合計DR | ハイライト | シャドウ | 解説(RAW への影響 |
200 | 14.1 stops | 5.1 | 9 | 白飛び注意。CinemaDNGでは回復不可 |
800(native) | 14.7stops | 7.1 | 7.6 | 最もバランスが良く理想的 |
4000(native) | 14.5 stops | 7.1 | 7.4 | シャドウが伸びる。暗部に強い |
6400 | 14.0 stops | 7.1 | 6.9 | 実質的な明部の余裕が減る |
12800 | 13.7 stops | 6.3 | 7.4 | 暗所には良いが白飛び注意。 |
4. 🔁 交換式DLレンズで空撮表現に“選択肢”を—広角から望遠までー
・シーンに応じた「レンズの選択」が、空撮を“飛ばす”だけの映像から“意図ある映画表現”へ変える
・地上撮影との画のつながりを統一できる
・交換レンズの登場で、「撮影の前提が変わる」
機材の制約から“飛ばして広角で撮る”という従来の空撮発想を脱却し、
“何をどう撮るか”に集中できる空撮ワークフローへ
・75mmF1.8レンズの登場により浅い被写界深度で、空撮でも背景ボケが使える

DLレンズラインナップ
レンズ名 | 主な特徴 | シーン |
---|---|---|
DL 18mm F2.8 ASPH | 超広角・最小歪み | 都市全景、渓谷、建築のスケール感強調 |
DL 24mm F2.8 LS ASPH | 広角・自然なパース | 車両追尾、滑らかな追従ショット |
DL 35mm F2.8 LS ASPH | 標準画角・遠近感バランス | 物体中心の構図、汎用的な構成に |
DL 50mm F2.8 LS ASPH | 中望遠・圧縮効果 | 背景を引き寄せた迫力ある構図 |
DL 75mm F1.8 | 明るい望遠・美しいボケ | ボケを活かした被写体強調、映画的焦点操作に最適 |
5. 🎚 D-Log & D-Gamutでプロレベルのカラー編集対応
・シネマ品質の空撮映像をポスプロで自在に調整可能
・他のマルチカムや地上カメラとも色合わせが簡単
D-Log | 広いダイナミックレンジ、14ストップ、対数カーブ |
D-Gamut | Rec.709 / DCI-P3超えの広色域、カラグレ最適設計 |
まとめ:ドローン空撮はカメラとレンズ選びで進化する
これまでのドローン撮影は、広角レンズで上空から撮るという定型の枠に収まっていました。
しかし、DJI Zenmuse X9-8KとDLレンズの組み合わせはその常識を覆し、空撮を“シネマ品質”へと進化させています。
18mmから75mmまで、5本のDLレンズがもたらす多彩な焦点距離と描写力は、
スケール感の演出から被写体の切り取り、背景の圧縮やボケ感の表現に至るまで、地上撮影に劣らない表現力をドローン撮影にもたらします。
これからの空撮において、カメラの性能だけでなく、
「どのレンズで、どう撮るか」が表現の核心になると日々の撮影で感じています。