〜プロの現場で「どちらを選ぶべきか?」を検証〜
2025年5月13日、DJIは新型小型ドローン「Mavic 4 Pro」を発表。360度ジンバルやトリプルカメラシステムを備えた本機は、これまでハイエンド機が担ってきた映像制作の現場にどこまで食い込めるのか。今回は、映画、CM、MV、ドキュメンタリーといった実務に即して、「Inspire 3」との違いを多角的に検証します。
目次
🎥 カメラ&センサー:圧倒的画質 vs 小型化による進化
【Inspire 3】本格シネマ仕様
・センサー:35mmフルサイズ
・最大解像度:8K/25fps (CinemaDNG)、8K/75fps(ProRes RAW)
・ダイナミックレンジ:14+ストップ
・レンズ交換式:DLマウント対応(18mm/24mm/35mm/50mm/75mm)
・認証:Netflix認定カメラ
映画制作でも通用するフルサイズセンサーは、浅い被写界深度で映画的な立体感や空気感を表現可能。X9カメラのデュアルネイティブISOにより、夜間や低照度下でもノイズを抑えた高品質な映像が得られます。
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【Mavic 4 Pro】小型機の限界を超える進化
センサーサイズ
・メイン:4/3型CMOS(100MP)
・中望遠:1/1.3インチ(48MP・70mm)
・望遠:1/1.5インチ(50MP・168mm)
・最大解像度:6K@60fps(ALL-I記録対応)
マルチフレーム処理による100MPは圧巻。トリプルカメラで広角〜望遠までを1台でカバー。動画撮影では全カメラ4K/60fps対応という点も実用性が高い。ただしセンサーサイズやレンズ交換ができない点から、背景ボケやシネマ的な奥行き描写には限界があります。また28mmという焦点距離は屋外では使いやすい一方、狭い室内ではやや取り回しが難しい印象です。
中望遠と望遠レンズに関してはMavic3の使えないレベルから使えるレベルに進化してきたと感じるポイントである。
🛠 撮影機能:本格2オペ撮影 vs 1オペでの創造的表現
【Inspire 3】特機的アプローチに最適
・360°パン、80°上向きチルト
・機体とカメラを別々に操作可能なデュアル制御
・応答性の高い機体操作性
車の撮影や演出込みの大掛かりなシーンに最適です。リピートルートや3D Dollyなど、特機的演出にも強く、高度な現場運用に応えます。
【Mavic 4 Pro】単独運用で創造性を発揮
・ドローン本体と独立した360°ロールジンバル
・回転ショットやダッチアングルが手軽に
・小型機ならではの安心感
360°ロールによる独自表現は、MVやアート作品などで映える一方で、画角の歪みや使いすぎによる“酔い”に注意が必要。70°上向き撮影も含め、少人数の現場で演出の幅を広げられるのが強みです。
📡 飛行性能&現場運用
項目 | Inspire 3 | Mavic 4 Pro |
---|---|---|
最大飛行時間 | 約28分 | 約51分 |
最大速度 | 94km/h | 約90km/h |
操作体制 | デュアル操縦(機体+カメラ) | ワンオペ |
安全装備 | 全方位障害物検知(日中のみ) | LiDAR、360°障害物検知 |
飛行時間が長いことにはDJI製のドローンでは驚かなくなってきたが、Inspire3の短さに比べると非常に優位に感じる。
最大速度に関してもMavic4ProがInspire3に迫ってきたのは驚いた。
現場運用のしやすさだけを考慮するとMavic4Proに軍配があがる。適材適所で機体を使い分けるのがよさそうです。
📊障害物センサー比較
項目 | DJI Mavic 4 Pro | DJI Inspire 3 |
---|---|---|
全方向検知 | 上下左右前後すべてに対応 | 同上(全方位対応) |
独自の強み | ・前方LiDAR搭載により、暗所でも高精度検知 ・低照度対応センサーで0.1ルクス環境でも検知 ・ActiveTrack 360°による自動追尾 | ・常時水平方向検知可能 ・障害物検知範囲のカスタム設定が可能 |
自動回避の精度 | 高速飛行(最大18m/s)時も障害物回避可能 | 制御距離を変更することが可能なのでシチュエーションに合わせて制御可能 |
暗所・複雑環境対応 | LiDAR+低照度ビジョンにより高精度 | 光条件次第(15ルクス未満では検知不可) |
弱点 | 要検証項目あり(極細物体など) | ランディングギア可動中や極細物体(ケーブルなど)は検知困難な場合あり |
夜間や複雑な現場での自律飛行という点では、LiDARを搭載したMavic 4 Proが一歩リード。Inspire 3も検知範囲のカスタマイズが可能で、撮影意図に合わせたフレキシブルな運用が可能です。
特に夜間の安全性の向上は計り知れないものがある。
🎬 結論:プロジェクトに応じた最適解を
制作現場 | 推奨機体 |
---|---|
映画・CM・VFX案件 | Inspire 3 |
MV・旅番組・ウェブ広告 | Mavic 4 Pro(予算が許せばInspire3) |
少人数チーム・機動力重視 | Mavic 4 Pro |
2オペ現場 | Inspire 3 |
独自アングル・回転表現に挑戦したい現場 | Inspire3、Mavic 4 Pro |
DJI Mavic 4 Pro
360度ロールジンバルや4/3インチセンサーによる軽快な映像表現は、MVやアクション、SNS向けの攻めたカットにピッタリ。軽さと機動力もあって、ワンオペ撮影やロケハンにも最適です。ただ、レンズ交換ができないぶん、“この一瞬を映画のワンシーンのように”という表現にはやや制約あり。
DJI Inspire 3
フルサイズセンサー+レンズ交換式という本格派仕様で、映画やCMなど「絶対に画質を妥協したくない」現場にハマる機体。
シビアなカットや2オペ撮影には他に選択肢のない最高峰のドローン。ただし、機材が大きくなるぶん、小回りや移動の多い現場では使い分けが必要です。
映像制作の現場でどちらを選択すべきかは、プロジェクトの目的、予算、そして求められる映像表現によって柔軟に選択しましょう。