映像制作において、カメラワークの印象は「カメラをどのように動かすか」だけでは決まりません。
ショットの印象を大きく左右する要素として、
- フレームレート
- シャッター設定
- カメラ移動速度
があります。特にドローン空撮では、カメラ自体が空間を大きく移動するため、シャッター設定によるモーションブラーのコントロールが映像の質感を直接左右します。
この記事では、ドローン空撮におけるシャッター設定・モーションブラーの考え方・NDフィルターの選定について、映像制作の現場を前提に解説します。
目次
シャッター角(Shutter Angle)とは
映像制作の現場では、シャッタースピードではなくシャッター角(Shutter Angle)という概念で設定が語られることがあります。
シャッター角とは、露光時間をフレームレートに対する割合として角度で表したものです。フィルムカメラでは円盤状の回転シャッターに開口部があり、その開口角度によって露光時間が決まる構造になっていました。デジタルカメラに移行した現在でも、この概念はフレームレートが変わっても直感的に「露出比率」を保てるという利点から、映画・CM制作の現場で広く使われています。
露光時間は以下の式で求められます。
露光時間 = 1 ÷ フレームレート × シャッター角 ÷ 360°
例:24fps・180°の場合 1 ÷ 24 × 180 ÷ 360 = 1/48秒
この概念が便利な理由は、フレームレートを変えても「180°」という設定を維持するだけで、モーションブラーの量が一定に保たれる点にあります。
24fpsで1/48秒、30fpsで1/60秒、60fpsで1/120秒——それぞれシャッタースピードは異なりますが、被写体に対するブラー量の比率は同じになります。
180°シャッターが標準である理由
映画撮影で最も一般的なシャッター角は180°です。この設定が標準とされている理由は、人間の視覚特性に近いモーションブラーが得られるからです。
人間の目は静止画を見ているのではなく、時間の連続した変化として動きを知覚しています。180°シャッターで記録された映像は、1フレームの露光時間がフレーム間隔の半分になるため、動体のブラー量が視覚的に自然に感じられます。
逆に、シャッター角を極端に狭めた映像(90°や45°)はブラーが少なくなり、コマ送りのような硬い動きの印象になります。これは意図的な演出効果として使われることもありますが、標準的な映像表現としては不自然に見えます。
モーションブラー空撮の特性
モーションブラーとは、シャッターが開いている間に被写体または背景が移動することで、その軌跡が1フレームに記録される現象です。
地上撮影では「被写体が動く」ことでブラーが発生しますが、ドローン空撮では機体自体が移動するため、背景全体がブラーの対象になります。これが地上撮影との根本的な違いです。
具体的には以下の特性があります。
ピッチ・ロール・ヨー移動時のブラーの差
ドローンが水平にトラック移動する場合と、ヨー(機首の回転)で方向転換する場合では、背景に生じるブラーの方向と量が異なります。特に高高度からのトップダウンショットでは、水平移動のブラーが強調されやすくなります。
移動速度との関係
同じシャッター設定でも、飛行速度が速いほどブラー量は増えます。滑らかに見えるショットを作るには、飛行速度・シャッター設定・フレームレートの三者を合わせた設計が必要です。
シャッター設定の実践的な選択
映像制作の現場では、ショットの内容や作品に応じてシャッター設定を選択します。
標準的なシネマ撮影(180°シャッター)
| フレームレート | シャッター速度 |
|---|---|
| 23.98/24fps | 1/48秒 |
| 25fps | 1/50秒 |
| 29.97/30fps | 1/60秒 |
| 59.94/60fps | 1/120秒 |
これが映像制作の基準設定です。
ブラーを抑えたい場合
都市・建築の空撮など、背景のディテールを見せたいショット、または高速移動のショットでは、シャッター角を90°前後(1/100前後)に上げることで背景の流れを抑えられます。ただしこの設定はモーションブラーが減り、動きが硬くなる印象になるため、仕上がりのトーンとの整合性を確認した上で選択します。
NDフィルターの役割と選定
屋外撮影では光量が多いため、180°シャッターを維持しようとすると露出オーバーになります。そのためNDフィルター(光量を減らすフィルター)を使用します。
NDフィルターの濃度は露出段数で表されます。
| NDフィルター | 光量 | 減光量 |
| ND4 | 1/4 | 2段 |
| ND8 | 1/8 | 3段 |
| ND16 | 1/16 | 4段 |
| ND32 | 1/32 | 5段 |
| ND64 | 1/64 | 6段 |
日中の晴天下では概ねND16〜ND64の範囲で選定します。
固定NDと可変NDの使い分け
可変NDは1枚で広い範囲をカバーできる便利さがありますが、偏光効果による色転びや、極端に絞った際のクロスパターンノイズが発生する場合があります。映像制作の現場では光学的な品質を優先するため、固定NDを複数枚組み合わせて使用するケースが多いです。Inspire 3のようなドローンでは、交換可能なNDフィルターキットを使用します。
ND選定の手順
- 撮影するフレームレートから基準シャッター速度を決める(例:24fps → 1/48秒)
- そのシャッター速度で適正露出になるNDを選ぶ
- EIは機材の基準感度から動かさないことを原則とする(後述)
フリッカー対策とシャッター設定
LED照明や蛍光灯などの人工照明は、電源周波数に応じて高速で点滅しています。カメラのシャッター速度が照明の点滅周期と一致しない場合、フレームごとに露光量が変わり、映像にフリッカー(ちらつき)が発生します。
日本では地域によって電源周波数が異なります。
- 東日本(50Hz):照明が1秒間に100回明滅 → 1/50、1/100、1/200秒がフリッカー回避の基準
- 西日本(60Hz):照明が1秒間に120回明滅 → 1/60、1/120、1/240秒がフリッカー回避の基準
ドローン空撮は主に屋外で行われますが、夜間の都市空撮や屋内施設での撮影では人工照明が画角に入るケースがあります。この場合、シャッター設定を電源周波数に対応した値に揃えるか、事前に照明環境を確認した上でフレームレートとシャッター設定を組み合わせる必要があります。
まとめ|ドローン空撮はカメラ設定で決まる
ドローン空撮の映像品質は、フライト技術だけでなく、フレームレート・シャッター設定・NDフィルター・飛行速度の組み合わせによる映像設計によって決まります。
特にシャッター設定は、モーションブラーの量を通じて映像全体の質感と直結します。180°シャッターを基準に置きながら、ショットの内容・環境光・照明条件に応じて柔軟に調整することが、映像制作の現場でドローン撮影を成立させるための基本的な考え方です。
TRICO.では映画、CM、ドラマなどの映像制作に対応したドローン空撮を行っています。
公開していないポートフォリオも多数ありますので、制作会社様からお問い合わせいただければ個別に撮影事例をご紹介することも可能です。

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