トップ» コラム一覧»CM・映画の撮影現場のリアル!ドローン撮影のワークフロー|ロケハンからDITへのデータ納品まで
「本番当日」にたどり着くまでに、実は多くの工程がある
CM・映画のドローン撮影というと、当日ドローンを飛ばしてカットを撮る場面が想像されがちですが、実際の現場はもっと手前から始まっています。ロケハンで画づくりと物理的な制約を洗い出し、オールスタッフミーティングで各部署の合意を取り、撮影当日の準備・リハーサルを経て本番に臨み、撮影後はデータをDITへ確実に受け渡す。この一連の工程を経て、ようやく1カットの空撮映像が完成します。
本記事では、この6つの工程それぞれで実際に何が行われ、TRICO.がどのような判断をしているのかを、業界に詳しくない方にも伝わるように紹介します。

CM・映画のドローン撮影が進む6つの工程
まず全体の流れを一覧にしておきます。
| 工程 | 内容 |
|---|---|
| Step1 ロケハン | 画づくりの検討と、電波・地形・法規制など物理的制約の洗い出し |
| Step2 オールスタッフミーティング | プロデューサー・監督・各部署責任者によるプランの合意 |
| Step3 撮影当日の準備 | 収録設定・機体・クルー間の最終確認 |
| Step4 リハーサル | 飛行と演出意図を一致させる最終検証 |
| Step5 本番撮影 | 現場進行と同期しながらショットを成立させる |
| Step6 データ納品 | 撮影データをDITへ確実に受け渡す |
ここからは、それぞれの工程で実際に何が起きているのかを見ていきます。
Step1|ロケハン:絵コンテを「飛べる計画」に変換する
ロケハン(ロケーションハンティング)は、映像制作全体では「現地の下見」を指しますが、ドローン撮影が絡む場合はそれだけでは終わりません。監督・撮影監督が思い描いた絵コンテを、実際に「その場所で飛ばせる計画」に変換していく作業になります。
飛行環境を解析する(電波・地形・太陽)
TRICO.のロケハンでは、スペクトラムアナライザーを使って現地の電波状況を可視化します。都市部や電波塔の近くでは、プロポや映像伝送と干渉する電波が飛んでいることがあり、これを見落とすと本番中に映像が乱れたり、最悪の場合は機体との通信が不安定になるリスクがあります。あわせて地形を把握してレンズを検討し、太陽の軌道をシミュレーションして時間帯ごとの光の向きを確認します。
アングルとレンズを現地で検証する
実際にテストフライトを行い、24mm・35mm・50mmといった候補レンズでの見え方を現地で確認します。機材の搬入動線や、監督・撮影監督がモニターを見ながら指示を出せる場所(モニター送出環境)もこの段階で決めます。ドローンでの撮影が難しいと判断したカットについては、代替案もあわせて検討します。「飛ばせるかどうか」だけでなく「どう飛ばせば絵コンテの意図が成立するか」まで考えるのがこの段階の仕事です。
許可・事前周知が必要になるケース
ロケ地が公道や第三者の管理地にかかる場合、飛行許可申請や警察・所轄への事前周知が必要になることがあります。判断が難しい場合も、ロケ地の情報が分かればTRICO.側で確認できます。手続きの実務などはCM・映画撮影でのドローン飛行許可と警察・所轄への事前周知で解説しています。
Step2|オールスタッフミーティング:各部署の答えを一つに揃える
オールスタッフミーティングは、CM制作全般で行われる、プロデューサー・監督を中心とした各部署責任者の会議です。ロケハンで洗い出した課題(電波状況、飛行ルート上の障害物、代替案が必要なカットなど)に対する解決策をこの場で共有し、実行可能なプランとして各部署とすり合わせます。ドローン撮影に関しては、飛行ルート・カメラワークの方針や、必要に応じた人員追加(Focus Puller・安全監視員)の要否がこの場でおおむね固まります。体制の組み方そのものはCM・映画のドローン撮影体制|Pilot・Camera Op・Focus・補助者で詳しく解説しています。
Step3|撮影当日の準備:現場を止めないための下ごしらえ
撮影当日は、現場の進行を止めないための準備がものを言います。
収録パラメーターをすり合わせる
解像度・フレームレート・EI・Logプロファイル・色温度・シャッタースピードといった収録パラメーターを、撮影部・DIT(Digital Imaging Technician、撮影データの管理・カラーマネジメントを担う役割)と事前にすり合わせます。例えば「8K 16:9 CinemaDNG 23.98fps SS1/100 D-Log EI800 WB5600K」のように具体的な数値まで確認します。
この段階で言葉が噛み合わないと、後工程で色や画質のイメージがずれてしまうため、撮影部・DITと共通言語で会話できるかどうかが、実はドローン撮影会社の専門性を測る一つの目安になります。
プレビュー環境と機体・安全・通信の最終チェック
モニターを設置し、屋外の強い日差しの下でも監督・撮影監督が露出やフォーカスを確認できる環境を作ります。あわせて、Inspire 3のメイン機・予備機のスタンバイ、プロペラ・ジンバル・センサーの物理チェック、本番環境での電波干渉確認、気温とフライト時間を考慮したバッテリーマネジメントを行います。
クルー間のブリーフィング
飛行ルート・カメラワークの最終確認を行い、パイロット・カメラオペレーター・安全監視員の間で、その日の狙いと制約を再認識します。
Step4|リハーサル:「小さな本番」を重ねて確度を上げる
リハーサルは試行錯誤の場ではなく、飛行と演出意図を完全に一致させ、本番の成功率を上げるための最終検証です。被写体の動線と飛行ルートを調整し、速度や距離感を微調整するとともに、スタートポジションを記録して、同じ位置からスタートできるようにするパターンもあります。
当日の天候(風・雨・雲量)によって、リハーサルの実施可否や本番のGo/No-Go判断が変わることもあります。天候判断の考え方はCM・映画ロケのドローン天候判断|風・雨・雲量・予備日で解説しています。
Step5|本番撮影:一発勝負の現場で起きていること
本番は、やり直しのきかない一瞬の連続です。
2オペ体制が効いてくる瞬間
本番中、パイロットとカメラオペレーターは、モニターに映る映像を見ながら、監督・カメラマンからの指示を受けて微調整を重ね、1カットを成立させていきます。狙った画になっていない原因が機体の位置・高さ・速度側にあるのか、構図・フレーミング側にあるのか、その場で瞬時に切り分けて、声をかけ合いながら合わせ込んでいく作業です。どちらが直すべき部分かの判断がずれると、修正が重なって画がかえって乱れてしまうこともあるため、パイロットとカメラオペレーターがコミュニケーションをとりながら動く必要があります。
監督・カメラマンが思い描いている画に近づけることに全力を注ぎながらも、現場特有の緊張感に飲まれず、いつも通りの精度で操作を重ねていきます。

Step6|データ納品:撮影素材という「資産」を守る
撮影が終わっても、工程はまだ終わりません。撮影データは映画・CMにとっての「資産」であり、確実な受け渡しができなければ、その日の撮影自体が意味を持たなくなります。
DITがいる現場のデータフロー
Inspire 3専用の1TB PRO SSDをDITさんへ渡します。(DITさんに事前にドローンのカメラ番号を確認したうえで記録していきます。ドローンは「D」とか空撮の「K」とかを指定されることが多いです)

撮影が複数日に渡る場合には必要本数を確保してリール番号の管理も徹底して行います。撮影分数が多くメディアが追いつかない場合にはフォーマットする際は必ずDITさんへ確認をしています。
DIT不在の現場でのデータマネジメント
小規模な現場などでDITが不在な場合は、TRICO.側でバックアップを実施します。事前に制作部にお伝えしてバックアップ用のSSDなどを準備いただきます。
ロケハンや事前の打ち合わせで、TRICOが必ず確認していること
ここまでの工程を踏まえ、TRICO.がロケハンや事前の打ち合わせで実際に確認しているのは、次のような内容です。
- どんな画を撮りたいのか、絵コンテやリファレンス映像から具体的に読み取ること
- ロケ地の周辺環境(電波状況、スペース、許可の要否、電源)
- 撮影部が希望する収録形式
- 香盤を確認して出番の確認
- 撮影後のデータ受け渡し方法
これらがすべて事前に固まっていなくても、ロケハンや打ち合わせの中でTRICO.側から確認しながら詰めていくことができます。まずはわかっている範囲でご相談いただければ十分です。
天候とスケジュールの余白をどう見るか
CM・映画のドローン撮影は屋外での撮影が中心になるため、天候によるスケジュールの調整が発生します。風速・降雨・雲量などの条件からGo/No-Go判断を行い、必要に応じて予備日を確保します。判断基準の詳細はCM・映画ロケのドローン天候判断|風・雨・雲量・予備日で解説しています。
費用感の考え方
ワークフロー全体を通して費用に影響するのは、主に撮影体制の人数、収録形式、ロケハン・許可申請の有無、予備日の確保です。工程が増えるほど準備期間も費用感も変わってくるため、見積もりの段階で想定される工程の範囲まで含めてご相談いただくのがおすすめです。具体的な料金の考え方はドローン空撮料金のご案内で解説しています。
ワークフローを理解している撮影会社に依頼する意味
工程ごとに何が起きているかを理解している撮影会社に依頼すると、次のような違いが出てきます。ロケハンの段階で画づくりだけでなく電波状況や法規制まで含めたリスクを洗い出せること、撮影部・DITとの収録パラメーターのすり合わせが専門用語ベースでスムーズに進むこと、本番中にトラブルが起きても予備機・予備バッテリー・メディア運用のルールが決まっているため現場が止まりにくいこと、データ納品まで含めて工程として管理されているため撮影リスクが低いことなどです。
CMの演出・費用まで含めた全体像は
・ドローン撮影CMを成功させる演出と現場実務・費用について解説
映画・ドラマにおける制作部との連携は
・映画のドローン撮影|制作部との連携と現場の注意点について解説
本番直前の確認事項は
・プロのドローン撮影準備|CM・映画ロケで本番前に確認することをあわせてご覧ください。
よくある質問
Q. ロケハンでスペクトラムアナライザーを使うのはなぜですか?
A. 都市部や電波塔の近くでは、プロポや映像伝送と干渉する電波が飛んでいることがあります。事前に電波状況を可視化しておくことで、本番当日の映像の乱れや通信トラブルのリスクを減らせます。
Q. リハーサルと本番は何が違うのですか?
A. リハーサルは飛行ルート・カメラワーク・タイミングを演出意図に完全に一致させるための最終検証です。本番の仕上がりを向上させるための工程として位置づけています。
Q. 収録データはいつ受け取れますか?
A. DITが現場に立ち会う場合は、撮影当日にDITへメディアを直接お渡しします。DIT不在の現場では、TRICO.側でバックアップを行ったうえで、データの受け渡しを行います。基本的には当日中に受け渡し完了させたいです。
Q. 天候が悪い場合、撮影は延期になりますか?
A. 風速・降雨などの条件によって判断を行います。
まとめ
CM・映画のドローン撮影は、ロケハン、オールスタッフミーティング、撮影当日の準備、リハーサル、本番、データ納品という6つのおおまかな工程を経て完成します。それぞれの工程で何が行われ、TRICO.がどう判断しているのかを知っておくと、発注前後のやり取りが一段とスムーズになるはずです。ワークフローの中でご不明な点があれば、案件の条件が固まっていない段階でもお気軽にご相談ください。

COMPANY
| 会社名 | 株式会社TRICO. |
|---|---|
| 住所 | 〒104-0061 東京都中央区銀座1-12-4 N&E BLD. 7階 |
| 電話 | 090-3355-1480 |
| メール | info@team-trico.com |
| 代表者 | 石山 裕太 |
| 適格請求書発行事業者登録番号 | T1010001241161 |
| URL | https://team-trico.com/ |