VR x ドローンの360度空撮映像が切り拓く観光誘致と産業活用のみらい

投稿:2025年10月30日|更新:2025年10月30日著者:石山裕太 TRICO.代表取締役

VR・360

近年、VR(バーチャルリアリティ)とドローン技術の融合によって、従来の映像では味わえなかった圧倒的な没入体験ができる映像演出が広がっています。

ドローンは空中を自由に飛行し、高所や人が立ち入れない場所からのダイナミックな映像を撮影することが可能です。このドローンに360度撮影が可能なカメラと特殊なリグを搭載することで、視聴者がまるでその場にいるかのように周囲を見渡せる没入型のVR映像を作り出すことができます。

たとえば、小型で機動性の高いInsta360 X5や、11K対応で高画質なInsta360 TITANなどの360度カメラをドローンに取り付ける方法はその一例です。その他にも専用のVR撮影リグでより高画質な撮影を実施したり、撮影シーンに合わせてさまざまな機材が活用されたりしています。これにより、雄大な自然遺産や古都の街並みなどあらゆる空間を「その場にいるかのように体験できる」映像コンテンツとして表現することが可能です。

こちらでは、VR映像の楽しみ方、観光誘致におけるVRとドローン空撮映像の魅力、VRとドローン映像の活用がおすすめな業界についてお伝えいたします。

VR映像の楽しみ方:ヘッドセットとシアターの違い

VR映像の楽しみ方:ヘッドセットとシアターの違い

完成したVRドローン空撮映像は、鑑賞方法によって体験の質が大きく変わります。代表的な2つの方法は次の通りです。

VRヘッドセット

Meta QuestなどのVRヘッドセットを装着すると、視聴者は自分の視点を自由に動かし、360度の空間を探索できます。頭を上げて高くそびえる建物を見上げたり、背後に広がる風景を振り返ったりすることで、まるで現地にいるかのような強い没入感を得られます。インタラクティブ性が高いため、個人でじっくり体験したい場合や、建築・観光のプレゼンテーションに向いています。また、視聴者が自ら視点を選べることにより、映像への没入感や記憶への定着度も高まるという効果があります。

大型シアター

一方、大型シアターでは、巨大スクリーンと迫力あるサウンドによって複数人が同時に臨場感あふれる映像体験を共有できます。ヘッドセットのように自由に視点を動かすことはできませんが、制作者が意図した視点や演出を最大限に活かせるため、ストーリーテリング性の高い上映に向いています。イベントや観光施設の常設展示など、多人数へのプロモーションにも効果的です。さらに、映像と音響が大規模で統合されることで、観客同士の反応や一体感も生まれ、体験が豊かになります。

観光誘致におけるVR×ドローン空撮映像の魅力

観光誘致におけるVR×ドローン空撮映像の魅力

VRとドローンを組み合わせた空撮映像は、自治体の展示施設やビジターセンターでの常設展示コンテンツとして活用することで、訪問者に地域の魅力を直感的かつ印象的に伝える強力なツールになります。360度のVR映像は、広大な自然景観や歴史的建造物、地域固有の文化資源を臨場感たっぷりに体験でき、これまで知られていなかった新たな魅力の発見にもつながります。

主なメリットは以下の通りです。

臨場感あふれる体験

360度VR映像によって、訪問者はまるで実際にその場所を訪れているかのような没入感を得られます。たとえば、山頂からのパノラマや古城の天守閣の上からの眺めなど、通常では立ち入ることが難しい視点も、映像を通じて安全かつ自由に体験できます。

隠れた魅力の発掘と発信

普段は注目されにくい景観や地域資源も映像で紹介することで、新たな観光スポットとしての可能性を広げられます。地元の小さな神社や里山の絶景ポイントなども、空撮映像なら独自の魅力を視覚的に際立たせることができます。

観光意欲の喚起

体験を通じて「一度行ってみたい」という感情を刺激し、現地への訪問動機を高めます。

効果的なプロモーション手段

写真や文章では伝わりにくいスケール感・空気感を、視覚と聴覚で直感的に伝えることが可能です。観光サイトやSNSで映像の一部を切り出して公開すれば、オンライン上でも「体験の疑似感」を提供でき、現地訪問への関心を高める戦略的ツールとなります。

来場者の注目を集める訴求力

イベントや展示会でVRシアターを設置すれば、子供から大人まで幅広い層が楽しめるコンテンツとして、多くの来場者に迫力ある映像体験を提供できます。没入感のある体験は、会場全体に強い印象を残し、話題性や集客力の向上にも直結します。さらに、映像体験の共有は口コミ効果を生み、地域ブランド力の向上にもつながります。

VR×ドローン映像の活用がおすすめな業界

この技術はさまざまな業界で活用され始めており、とくに以下の分野で効果が期待されています。

イベント・展示会

自治体や企業が開催するイベントや展示会で、ドローン×VR空撮映像は圧倒的な視覚体験を提供します。会場にVRシアターを設置すれば、参加者はその場にいながら広大な自然や観光名所を空から旅する感覚を味わえます。

写真や文字では伝えきれないスケール感や臨場感を体感できるため、来場者の記憶に深く刻まれ、情報発信・ブランディング効果が飛躍的に向上します。将来的にはリアルタイム空撮×ライブVR配信の実現により、会場の参加者だけでなく遠隔地の人々とも体験を共有できるインタラクティブな展示が可能になるでしょう。

観光業

人気の観光地や自然景観を360度のVR映像をYoutubeで提供することで、バーチャルツアーとして自宅にいながら臨場感のある旅体験を楽しんでもらうことができます。現地の空気感やスケール感をリアルに伝えることができるため、知られていない地域の魅力発信にも役立ち、「行ってみたい」と思わせるきっかけづくりにつながります。また、旅行先を検討している人にとっても有力な判断材料となり、観光地への集客促進や地域活性化に貢献します。

不動産業

ドローンによる建物外観や周辺環境のVR撮影を取り入れることで、遠隔地にいる顧客にも臨場感ある内覧体験を提供でき、物件の魅力をよりリアルに伝えることができます。特に高価格帯の物件では、VR空撮とCGパースを融合したプレミアムなバーチャル内覧がブランド価値を高め、購買意欲を刺激します。将来的にはスマートシティ開発や都市計画の分野で、街全体をVR空間化し住環境を事前シミュレーションする取り組みも広がるでしょう。

教育分野

地理や環境、歴史、建築などさまざまな科目において、ドローンによるVR映像の活用が注目されています。たとえば地理学習では、山岳地帯や河川の流れ、都市の構造などを空から俯瞰することで、教科書だけでは得られない立体的な理解を深めることができます。環境教育では、森林伐採の現場や海岸の侵食、自然保護区など、普段立ち入ることが難しい場所の現状をリアルに体験でき、環境問題への関心を高めるきっかけにもなります。

災害時の情報収集

大規模災害発生時、ドローンは沿岸部や山間部など、人が容易に立ち入れない地域の被害状況を迅速に把握するために活用されます。特に小型のVRカメラを搭載したドローンは、通常のカメラでは捉えきれない360度全方位の映像を記録できる点が大きな特徴です。

撮影後にこのVR映像を確認することで、消防や警察、自衛隊などの関係機関は、現場のあらゆる角度を自由に切り替えて検証できます。これにより、初期の映像確認では見落としがちな危険箇所の特定や、より安全で効率的な救助ルートの検討が可能となり、迅速な判断と行動に結びつきます。

VRとドローン撮影の組み合わせは、特に観光誘致の分野で地域の魅力を直感的かつダイナミックに伝える革新的な手法として注目されています。自治体の展示施設やイベントでのプロモーション効果はもちろん、今後は産業、教育、防災など多方面への展開が期待され、地域経済の活性化と社会課題の解決にも貢献していくでしょう。これからの映像体験の在り方を大きく変える技術として、その可能性はますます広がっています。

※ドローン撮影・360°動画・体験映像・事例についてより深く知りたい方は、株式会社TRICO.へお気軽にお問い合わせください。

著者:石山裕太 TRICO.代表取締役

ドローンカメラマンとして業界歴10年以上。CM、VR、イベント、産業系とオールジャンルの撮影に携わる。 マイクロドローンから超大型機まで、繊細な飛行技術を有する案件が得意。ドローンVR作品は日本各地で上映中。

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