PROパイロット技能認定会を終えて|一等無人航空機操縦士の技量レベルとは?

投稿:2026年5月27日|更新:2026年5月29日著者:石山裕太 TRICO.代表取締役

つぶやき

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第28回PROパイロット技能認定会が無事に終了しました。
全国各地からご参加いただいた皆さま、運営にご協力いただいた皆さま、ありがとうございました。

今回は実行委員会・ジャッジとして開催してみて感じたことを、率直にまとめたいと思います。

今回の参加者構成

今回の参加者は20名でした。

そのうち、一等無人航空機操縦士の資格保有者は15名。
全体の75%を占めていました。

また、ドローンスクールのインストラクター/修了審査員として従事されている方など、個人活動も含めると半数以上がドローンの指導者側についているようでした。

今回から資格者割引を導入したこと、また関東開催であったこともあり、ドローンスクール関係者の初参加が多くなったと考えています。

操縦モードについては、モード1が11名、モード2が9名。
ほぼ半々の結果となりました。

これまでの認定会では、ラジコン出身者や農薬散布系の経験者が多く、モード1の割合が高い傾向がありました。
モード2で指導しているスクールも多く、今回の結果からも参加者層の変化を感じました。

本選結果発表/閉会式の様子

認定会の結果

今回の第28回PROパイロット技能認定会では、参加者20名のうち、予選通過者は7名でした。

本選での合格者は0名。
また、あと一歩で合格レベルに届くと判断されるシード獲得者も0名という結果になりました。

3回連続の合格者0人です!!また合格率が下がりました!

予選項目は、これまでと同様に以下の3種目です。

  • 4ポイントピルエット
  • ホリゾンタルエイト
  • 前進対面

本選項目は以下の3種目で実施しました。

  • ホリゾンタルエイト with 1440
  • カップ
  • 特一等スペシャル
    ※当日発表種目

今回の当日発表種目である「特一等スペシャル」は、国家資格の実地試験でも行われるスクエア飛行をベースに、ピルエットとカップの要素を組み合わせた内容に設定しました。

PROパイロット技能認定会の本選種目としては、比較的取り組みやすい部類の内容だったと考えています。

そのため、今回の本選で合格者が出なかったことは率直に言って参加者の練習が不足していると感じました。一等無人航空機操縦士レベルの技量レベルでは予選通過しか目指せません。

初参加の方は認定会のレベル感を知る機会となったと思うので次に活かしていきましょう!

予選通過者は想定よりも少なかった

前日トレーニング会の段階では、予選通過者は参加者の半数を超えるのではないかと感じていました。
しかし、本番では予選通過者が7名にとどまり、当初の予想よりも少ない結果となりました。

認定会特有の緊張感や、ジャッジに見られている中で飛ばすプレッシャーによって、本来の実力を出し切れなかった方もいたと思います。

ここはあえて厳しく指摘すると、

実際の現場では、認定会以上に緊張する場面はいくらでもあります。

  • 人が見ている
  • 時間が限られている
  • やり直しができない
  • 周囲に障害物がある
  • 関係者がその飛行を待っている
  • 墜落したらニュースになる現場状況
  • LIVE会場で飛行させる

そうした状況の中で、機体を安定して操作できるかどうかが、実務における操縦技術です。

緊張で実力が出せないということ自体も、現場対応力の一部として受け止める必要があります。

もちろん、緊張すること自体が悪いわけではありません。適度な緊張は必要だと思っています。
問題は、緊張した状態でも最低限の操作精度を維持できるだけの練習量と再現性があるかどうかです。

今回の結果を見る限り、その部分に課題を感じる参加者が少なくありませんでした。

認定会で見えた技術的課題|GPS依存・4舵操作・8方向ホバリング

今回の認定会で特に課題として見えたのは、機体を正確にコントロールするための基礎技術です。

演目の練習量が足りなかったというよりも、演目を成立させる前提となるホバリング、舵の理解、機体のズレを修正する力に課題がありました。

特に目立つのは、以下の3つです。

  • GPSや機体側の制御に頼った操縦になっていること
  • 4舵を同時に使う操作に慣れていないこと
  • 8方向での舵の理解が不足していること

GPSや機体制御に助けられている状態では、自分の舵で機体を正確に操作する能力が育ちにくくなります。
4舵を同時に使えなければ、機首方向を変えながらラインを維持することはできません。
さらに、8方向で舵の向きを理解できていなければ、機体がズレたときに正しい修正ができません。

つまり今回の結果は、難しい演目ができなかったというより、演目以前の基礎部分に課題があったと捉えています。

体育館の中で風の影響を受けない状態なので完全に操縦技術が可視化されます。言い訳の効かない状態で演目をこなさなければいけません。

DJI機の安定性を自分の技術と誤認してはいけない

現在のDJI製ドローンは非常に完成度が高く、GPS、ビジョンセンサー、姿勢制御、各種アシスト機能によって、誰でも比較的安定して飛ばしやすくなっています。

これは安全性や普及という意味では大きなメリットです。

しかし、その安定性をそのまま自分自身の操縦技術だと考えるのは危険です。

GPSが効いている状態で安定して飛ばせることと、GPSに頼れない状況でも機体を正確にコントロールできることは別です。

普段の業務では、GPSが安定して入る環境で飛ばすことが多いかもしれません。
しかし、GPSに頼れない状況は突然やってきます。

たとえば、
屋内での運用。
建物や構造物の近くでの飛行。
橋梁、鉄塔、山間部、谷地形の周辺。
電波環境が不安定な場所。
機体が一時的にGPSを捕捉しにくくなる場面は様々です。

こうした状況では、機体任せの操縦では対応できません。

最終的に機体と現場を守るのは、操縦者自身の技術と判断です。

もちろん、GPSや各種センサーを活用すること自体は悪いことではありません。
むしろ、現在のドローン運用において、それらを適切に使うことは安全管理の一部です。

ただし、機体に助けられていることを理解した上で飛ばすのと、すべてを自分の技術だと勘違いして飛ばすのでは、大きな差があります。

DJIのドローンは非常によくできています。
だからこそ、自分が上手く飛ばしているのか、機体に飛ばしてもらっているのかを見誤ってはいけません。

今回の認定会は、参加者にとって、普段の操縦がどれだけGPSや機体側の制御に支えられているかを知る機会にもなったと思います。

4舵同時操作ができなければ、ラインは維持できない

今回、多くの参加者に共通して見られたのが、4舵を同時に使いながら機体を正確にコントロールする技術の不足です。

一等無人航空機操縦士の実地試験では、主にスロットル、エレベーター、エルロンの3つの舵を同時に使う項目しか求められていません。

しかし、PROパイロット技能認定会の演目では、それだけでは足りません。

スロットル、エレベーター、エルロン、ラダー。
この4つの舵を同時に使いながら、機体の位置、機首方向、高度、ラインを維持する必要があります。

特に、機首方向を変えながら飛ばす演目では、ラダーを入れた瞬間に機体の位置がズレます。

そのズレに対して、エルロンやエレベーターをどの方向にどれだけ当てるのか。
高度が変わりそうになったときに、スロットルをどの程度補正するのか。
ラインから外れたときに、どの舵を優先して修正するのか。

これらを同時に処理できなければ、正確な飛行はできません。

今回見ていて特に感じたのは、機首方向を変えるたびに機体の位置がズレ、そのズレを瞬時に修正できない場面が多かったことです。

これは単に「ラダー操作が苦手」という話ではありません。

機首方向が変わった状態で、機体がどちらに流れているのかを見極める目。
そのズレを戻すために、どの舵を当てるべきか判断する力。
判断した舵を、遅れずに正確な量で入れる指の感覚。

このすべてが必要です。

4舵同時操作が身についていない状態では、ホリゾンタルエイト、ピルエット、カップのような演目で正確なラインを出すことはできません。

機体を動かすことはできても、意図したラインに乗せ続けることができない。
機首を回すことはできても、位置を維持できない。
コースに入ることはできても、ズレを修正しながら飛び続けることができない。

この差が、認定会でははっきり出ます。

ホバリングの精度不足は、すべての演目に影響する

4舵操作以前に、まず必要なのはホバリングの精度です。

ホバリングは、ただ機体をその場に浮かせるだけの練習ではありません。
機体のズレを感知し、正しい舵を当て、最小限の操作で基準位置に戻すための基礎練習です。

今回の認定会では、ホバリングの精度が甘い方が100%!全員です。

機体が流れているのに気づくのが遅い。
ズレには気づいているが、修正する舵が遅い。
修正しようとして舵を当てすぎ、逆方向に崩れる。
機首方向を変えた瞬間に位置がズレ、そのままラインを外してしまう。

こうした動きは、演目の難易度以前の問題です。

基本的なホバリングができていない状態で、4舵を同時に操作しながらコースを外れないようにラインを正確に出すことはできません。

GPSがない状態ではホバリングは、スティックを中立に戻せばとまるわけではありません。機体を留めておくための微細な操作を常に続ける必要があります。多くの方がこの感覚を持てておらず、ズレを修正しては操作を止め、またズレを修正しては操作を止めるという繰り返しになっていました。GPSが効いている状態とは違います。

ホバリングで重要なのは、機体を止めることだけではありません。

機体がズレた瞬間に気づく目。
ズレの方向を判断する頭。
正しい舵を瞬時に入れる指。
入れた舵を止めるタイミング。
修正後に再び機体を安定させる感覚。
機体を留めておくための舵操作。

精度の高いホバリングができるようになるにはこれらの感覚が全て揃っていないと不可能です。

8方向の舵を理解していなければ、ズレは修正できない

ホバリングで特に重要なのは、機体の向きごとの舵の理解です。

正面、左右、対面の4方向だけでは不十分です。
そこに45度方向を加えた、合計8方向で舵を理解する必要があります。

具体的には、

  • 正面
  • 右向き
  • 左向き
  • 対面
  • 右前45度
  • 左前45度
  • 右後45度
  • 左後45度

この8方向です。

機体が正面を向いているときは操作できても、斜め45度を向いた瞬間に舵が分からなくなる人は少なくありません。

対面では理解できていても、斜め対面になると修正が遅れる。
横向きでは止められても、45度になるとエルロンとエレベーターの当て方が曖昧になる。
ズレに気づいていても、どちらに舵を入れればよいか頭と指が一致していない。

この状態では、ズレを修正できないまま放置することになります。

ホバリングでズレが出る原因は、単に風で流されたからではありません。
多くの場合、操縦者がズレを感知できていない、または感知していても修正する舵を正確に理解できていないことにあります。

つまり、ホバリングの精度不足は、目の問題であり、頭の問題であり、指の問題でもあります。

機体のズレを見る目。
ズレの原因を判断する頭。
正しい舵を瞬時に当てる指。

この3つが一致していなければ、安定したホバリングはできません。

十字飛行で「止める・進ませる・停止させる・戻す」を徹底する

いきなり難しい演目を練習するのではなく、まずは機体の向きと舵の関係を身体に覚えさせる必要があります。

十字飛行では、単に前後左右に動かすだけでは不十分です。

重要なのは、

  • 留める
  • 進ませる
  • 停止させる
  • 戻す

この一連の舵を正確に理解してスティック操作することです。

この動作を、8方向すべての機首方向で行います。

正面ならできる。
対面ならできる。
横向きならなんとかできる。

それでは足りません。

45度方向を含めた8方向すべてで、機体がどちらにズレているのか、どの舵を当てれば止まるのか、どの舵を入れすぎると逆に崩れるのかを理解する必要があります。

スティックを1mmずつ動かしてみて機体の挙動がどのように変化するのか、進めるためには何ミリ動かせばいいのか、45度傾いた状態で正確にラインを出すためにはどのようにスティックを動かさないといけないのか、そこから試行錯誤してみてください。

一等無人航空機操縦士はゴールではなくスタートライン

ドローン業界では、一等無人航空機操縦士の資格を非常に難しいものとして捉えている人も少なくありません。

もちろん、簡単に取得できる資格ではないと思います。
法令知識、機体の理解、安全運航の考え方など、学ぶべきことは多くあります。

しかし、実務でドローンを運用する立場から見ると、国家資格はあくまでスタートラインです。

国家資格の実技は、あくまで最低限に技量を確認するものです。もしその内容を難しいと感じているなら、まだ実務に出る段階ではないかもしれません。それは事故を防ぐための正直な思いです。

ここを業界全体で正しく認識する必要があると感じています。

ドローンスクールに求められる役割

「合格させる」ことは大切です。合格率の高さをアピールすることに、どれほどの意味があるのでしょうか。指導方法がいいからではなく審査が甘いのではないかと思ってしまいます。

合格した後に、どう練習を続けるのか。
どのような技量を目指すべきなのか。
実務で通用する操縦者とはどのような人なのか。
2等レベルで業務が安全に成り立つのか。

そこまで示せるスクールが増えれば、ドローンパイロットの質は確実に上がっていくはずです。

反対に、資格取得だけが目的化してしまえば、資格を持っているだけで実務経験も操縦技術も不足したパイロットが増え続けてしまいます。

これは業界にとって健全な状態ではありません。

PROパイロット技能認定会の役割

PROパイロット技能認定会は、資格制度を否定するものではありません。

むしろ、国家資格で学ぶ基礎があるからこそ、その先にある実務的な操縦技術をどう高めていくかを考える場だと思っています。

資格は基礎。
認定会は、その先の技術を確認する場。

この位置付けを明確にしていきたいと考えています。

今回、合格者は0名でした。
しかし、参加された方々にとって、自分のレベルを知る機会にはなったはずです。

自分がどこまでできているのか。
何が足りないのか。
どの部分を練習すべきなのか。

それを知ることが、技術向上の第一歩です。

参加者それぞれが操縦技術と向き合い、所属するスクールや会社の中でも技術向上の必要性が広がっていけば、認定会を開催した意味は十分にあると思っています。

まとめ|資格の有無ではなく、現場で任せられる操縦者を増やしたい

今回の認定会を通じて、あらためて感じたことがあります。

ドローン業界に必要なのは、現場で安心して任せられる操縦者を増やすことです。

そのためには、資格取得後の継続訓練が必要です。
指導する側の意識改革と技量向上も必要です。
スクールや会社として、操縦技術の基準を持つことも必要です。

国家資格はあくまで最低限の証明。それはゴールではなくスタートラインです。

PROパイロット技能認定会へ向けた練習の成果は必ず普段の実務にも活きてきます。CRMやノンテクニカルスキルなども操縦技術の基礎がないと何も意味をなさないです。

認定会について詳しく知りたい方は➡️PROパイロット技能認定完全攻略

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著者:石山裕太 TRICO.代表取締役

ドローンカメラマンとして業界歴10年以上。CM、VR、イベント、産業系とオールジャンルの撮影に携わる。 マイクロドローンから超大型機まで、繊細な飛行技術を有する案件が得意。ドローンVR作品は日本各地で上映中。

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