海上撮影ノウハウ

2025年4月3日 撮影TIPS 撮影技術

船上からの撮影を実施したことはありますか?数あるドローン業者の中でも、船上撮影の経験がある業者は限られています。陸上撮影とは異なる危険も伴うため、船上ドローン撮影のノウハウを経験豊富なプロの視点から詳しく解説していきます。

海上撮影が選ばれる理由

東京都心部を例にあげると、陸上撮影には許可取得の困難さや撮影場所の制限など、いくつかの課題が存在します。これらの課題を解決してくれるのが船舶からおこなう海上撮影です。

・海上からしか撮影できないシチュエーション

・港湾エリアや海上撮影対象など、陸上でのドローン飛行は許可取得が困難な場所が多い

・陸上では敷地が狭く、動きのあるダイナミックな映像を撮影するのが難しい

・海上撮影は自由度の高い映像表現が可能

港湾エリア周辺の景観を狙いたい場合には有効な手段となります。

TRICO.のキービジュアルも海上撮影で実施

撮影許可の取得

海しる(海洋状況表示システム)で調査

「海しる」のサイトではさまざまな海洋情報を調べることができます。許可関連を調べる際は、主に港則法区域の確認と許可書作成時の作図で使用します。

海しる(海洋状況表示システム)のサイトURL

港則法区域の表示方法
すべてのレイヤー→海事→港則法適用港→港則法区域レイヤーON

東京湾の港則法区域

港湾管理者への申請

港湾区域内でのドローン飛行は、東京都港湾局が定める「無人航空機利用取扱方針」に基づき、以下の書類を提出する必要があります。

航空法に基づく許可・承認書

飛行計画書(飛行ルート、高度、日時などを詳細に記載)

機体認証および操縦者技能証明書

安全対策資料(船舶航行への影響を防ぐ具体的な対策)

その他必要書類(詳細は港務課水面監理担当へ確認)

事前に港湾局へ連絡し、詳細な受理要件を確認してください

海上保安庁への申請

海上保安庁では、海上での安全確保を目的とした「行事許可申請」または「工事・作業許可申請」が必要です。以下の内容を含む書類を準備します。

・飛行計画書および安全管理体制

・緊急時対応策

・船舶情報(船から離発着する場合)

提出は管区事務所へ直接伺う必要があります。道路使用許可と同様のイメージです。申請には最大30日ほどかかる場合があるため、余裕を持ったスケジュールで準備してください。(最近は緩和されてきました)

港湾法が適用される港湾区域や港湾施設では、港湾管理者への申請が必要です。港湾法の適用範囲外の区域でドローンを飛行させる場合は、港湾管理者への申請は不要となる可能性があります。事前に関係機関へ問い合わせすることを推奨します。

港湾法適用範囲は陸上からドローンをオペレーションする場合も海上エリアの許可を取得しなければいけません。

また、申請に必要となる飛行ルートに関しては航路上は制限される場合がある為、船舶会社に確認を取りクライアントと調整しましょう。

船舶会社の選定

東京湾で船上から離発着する場合に撮影専門にサポートしてくれる会社を紹介します。各社保有船舶などが違い、運用するドローンの機種や乗船人数によって船舶手配を相談してみましょう。

ジール撮影事業部 (ZEAL)

ジール撮影事業部は、映画、テレビ番組、CM、ミュージックビデオなどの海上撮影を専門にサポートする会社です。船舶の手配だけでなく、撮影許可申請の代行、安全管理、水中スタントや美術設置なども対応可能です。プロダイバーや専門スタッフが在籍しており、東京湾を含む国内外での撮影に対応しています。

弊社TRICO.がいつもお世話になっている会社です。大型機の運用が安全にできる平台船をいつもチャーターしてさまざまな現場でサポートいただいています。

いつもの船

アニバーサリークルーズ

アニバーサリークルーズは、洋上ロケーションに特化したサービスを提供しています。クルーザーや劇用船の手配、ロケーション提案、撮影許可申請代行などを含むトータルサポートが特徴です。24時間出航可能な自社桟橋を持ち、柔軟なスケジュール対応が可能です。また、演者の控室や機材置き場として利用できる施設も併設されています。

東京ウォータータクシー株式会社

東京ウォータータクシーは、小型船を利用した水上輸送サービスを提供しており、ドローン撮影のための船舶手配や安全な航行もサポートします。行政書士事務所と連携し、申請手続きもワンストップで対応可能です。

金額は各社にお問い合わせください。

天候と時間帯の判断

船上ドローン撮影では、天候はもっとも重要な要素です。
下記の条件が満たせるような日をクライアント・船舶会社と調整しましょう。

・風の弱い日を選ぶ
1~3m/s:ベスト
3~5m/s:波が出てくる。風に注意
5m/s以上:オペレーターの経験による

・早朝は風が弱く、海面が穏やかな日が多いので時間帯も考慮

・船舶の航行の少ない時間帯を考慮する

必ず予備日を設けておくようにしましょう。

海上撮影ノウハウ
ベストコンディション東京湾

海上撮影で気をつけなければいけないこと

・ドローンの塩害対策を徹底する
海上移動中も潮風から機器を守るためにケースやビニールなどにいれておきましょう。使用後の清掃も忘れずに

・安定した操縦姿勢
オペレーターが船の動揺に負けないように安定した姿勢がとれる場所、体制を確保しましょう

・ホームポイントの変化
陸上と違い、離陸した場所(ホームポイント)が動いているので緊急時のRTH時に注意しましょう

・乗船前のセンサーキャリブレーション
かならず陸上で電源を入れてセンサーの状態を確認しておきましょう。必要があればキャリブレーションまで実施しておくこと。船舶上ではキャリブレーション不可です

・航跡波に注意
船舶が航行した際に水面に生じる波です。船舶形状によっては思っている以上に揺れるので離発着時などは海面が安定してから実施しましょう

・オペレーターの船酔い対策
モニターを見ながら操縦していると船酔いすることがあります。船酔い対策の薬を飲用して対策しましょう

・水没対策
万が一海上への水没リスクを考慮して機体に専用のフロートなどを取付して飛行させるのが望ましいです

・転倒防止
モニター三脚など船の動揺で転倒しないように対策しましょう
ウエイトや船体に固縛しておくと安心です

・レーダーに注意
大型船舶に搭載されている航海レーダー等は非常に強力です。照射エリアなどには無闇に近づかないようにしましょう

これらの危険を十分に理解し、適切な対策を講じることが重要です。

塩害対策(ポイント移動中)

離着陸方法は?

船上でのドローンの離着陸は揺れている狭いスペースで実施しなければいけないので陸上と違い経験が必要です。ハンドキャッチも安全な手段となります。

ハンドキャッチ

船上撮影の場合に最も活用される方法です。Mavicのような小型機からインスパイア3のような中型機まではハンドキャッチで運用が可能です。ハンドキャッチの方法はこの記事では深掘りしませんが、陸上で必ずテストを実施した上で本番に臨んでください。その際は必ず補助員にキャッチをお願いしましょう。

甲板に着陸

スペースの確保できる船舶であれば、陸上と同じようにそのまま甲板に着陸させることも可能です。

インスパイア3はハンドキャッチ運用しています

離発着台を作成

フラットなスペースを確保できない船舶で大型機を運用する際などはコンパネなどを使用して離着陸スペースを作成しましょう。イントレやイレクターなどを使用して水平なスペースを確保します。その際は事前に船舶の下見や図面を入手して作成してください。

どの方法を使って離着陸するかはオペレーターの判断によりますが、サポート人員は保護具の着用を忘れないようにしましょう。
・ヘルメット
・ゴーグル
・手袋

は必須装備です。たまに何もつけずに実施している方を拝見しますが、私は補助員には保護具を着用させます。怪我があっては、いくらいい画が撮影できたとしても後味が悪くなってしまいますし、ロケを中止しなければいけない事態になるかもしれません。

海上撮影ノウハウ。ドローンVR
VRドローンの離発着台

離着陸時の操船ポイント

離発着する時は風向きが重要になります。停船している船舶から離陸する場合、航行中の船から離陸させる場合でも基本的には風下に離陸させるのが安全な方法です。
風上に離陸させた場合はドローンが浮いた後に自分達に向けてドローンが迫ってくる場合があり怪我の恐れがあります。

船長に離陸時には風下になるように回頭してもらいましょう。
回頭:船首の向きを変更すること。

着陸する時は着陸地点の真上でホバリングをして船の動揺にあわせてゆっくりと降下させて着陸させましょう。動いている船舶へのアプローチも同様です。

航行中の船から撮影する場合などは事前に船長含めた乗組員とブリーフィングを実施してオペレーションの方法を事前に伝えておきましょう。

ドローン海上撮影ノウハウ
VR機の場合は、右舷側からアプローチするので船は風と直角に回頭させる

まとめ

船上ドローン撮影に必要な許可取り、船舶の手配、天候判断、撮影テクニック、安全対策などを網羅的に解説しました。船上ドローン撮影は、陸上とは異なる環境下で行われるため、特別な知識と技術が求められます。本記事で解説したノウハウを参考に、綿密な準備と安全対策を徹底することで、安全な海上撮影を実施してみてください。

副代表 佐野いくみ海上撮影