トップ» コラム一覧» ドローン撮影の保険|証券の確認ポイントと撮影会社に必要な補償内容・賠償金額
CM・映画の撮影にドローンを入れるとき、撮影会社が保険に加入していることは前提です。代理店や制作会社にとって、保険に入っていないドローン会社はリスクでしかなく、依頼の段階で加入を確認するのは当然のことです。撮影会社の側も、現場に入る前にリスクマネジメントの書類へ記入・署名し、自社の安全対策と補償に責任を持つことが求められます。
問題は、加入していることではなく、その中身です。同じ「保険加入済み」でも、賠償金額や補償の範囲によって、事故のときに実際に支払われる範囲は大きく変わります。
この記事では、次の2つの立場に向けて、ドローン撮影の保険で押さえておきたいポイントを解説します。
- 依頼する代理店・制作会社の方へ:保険証券のどこを確認すればよいか
- ドローン撮影会社の方へ:自社を守るために、どんな補償内容と賠償金額が必要か
株式会社TRICO.は、東京海上日動火災保険の「超ビジネス保険」に加入し、対人・対物で1事故あたり最大10億円の補償を備えてCM・映画などの撮影に入っています。
ドローン撮影の保険の基本
法令上の位置づけ
ドローンの保険は、自動車の自賠責保険のように一律で義務付けられているものではありません。ただし、国の飛行許可・承認の申請では、保険の加入状況を記載する必要があります。
2025年10月1日以降の新規申請からは、総重量25kg以上の機体を飛ばす場合に、第三者賠償責任保険への加入が要件になりました。CM・映画で主に使われるInspire 3クラスの機体は25kg未満のため、この要件の対象外です。
法令で一律に求められていない以上、補償の中身は撮影会社ごとに異なります。だからこそ、依頼する側は中身を確認し、撮影会社は中身に責任を持つ必要があります。
賠償責任保険と機体保険
業務用のドローン保険は、大きく2つに分かれます。
| 保険の種類 | 補償する損害 |
|---|---|
| 賠償責任保険 | 墜落・衝突で人にけがをさせたり、他人の物を壊したりしたときの賠償 |
| 機体保険 | 墜落・衝突などで壊れたドローン本体の修理・再調達 |
撮影の現場で問われるのは、主に賠償責任保険です。機体保険は撮影会社が自社の機体の損害に備えるもので、メーカーの補償サービスでまかなうケースもあります。
なお、趣味やレジャー向けの個人賠償責任保険と、撮影など業務向けの賠償責任保険は別の商品として整理されています。業務で飛ばす以上、業務用の賠償責任保険であることが前提です。
現場で求められるリスクマネジメントの書類
CM・映画の撮影では、ドローン撮影会社は代理店や制作会社から求められるリスクマネジメントの書類に記入し、署名して提出します。飛行の内容や安全対策、保険の加入状況などを記載し、その内容に会社として責任を持つことを示す書類です。
署名する以上、書類に書いた安全対策を現場で実行できること、そして万が一の事故に保険で対応できることが前提になります。保険証券は、その裏付けとなる資料です。
依頼する側にとっては、この書類と保険証券をセットで確認することで、撮影会社の体制を判断できます。撮影会社にとっては、自社が引き受ける責任の範囲を明確にする機会にもなります。
制作会社から送られてくるリスクマの資料が10年以上前のフォーマットを使っているので今のドローンの実情とあっていないことが多く、そろそろフォーマットを改定していただきたいところ。
【依頼する方へ】保険証券で確認するポイント
撮影会社から保険証券の写しや付保証明書を受け取ったら、次の項目を確認しておくと安心です。
| 確認項目 | 見るべきポイント |
|---|---|
| 保険の種類 | 業務用の賠償責任保険か |
| 被保険者 | 依頼先の会社名義か |
| 保険期間 | 撮影日・予備日が期間内か |
| 支払限度額 | 対人・対物の金額、1事故か期間中の総額か |
| 免責金額 | 自己負担額はいくらか |
| 対象業務・機体 | 今回の撮影と使用機体が含まれるか |
| 管理下財物の特約 | 撮影対象や搭載機材の損傷が補償されるか |
| 人格権侵害の補償 | 撮影によるプライバシー侵害に備えがあるか |
| 補償地域 | 海外ロケの場合、国内限定になっていないか |
この中でも、特に見落としやすいのが次の3点です。
名義と保険期間
保険が会社名義ではなく代表者個人の名義になっていないか、撮影日と予備日が保険期間内に収まっているかを確認します。保険は年単位で更新されるため、撮影時期が更新月をまたぐ場合は、更新後の内容もあわせて確認しておきましょう。
支払限度額の単位
証券に書かれた金額が「1事故あたり」なのか「保険期間中の総額」なのかで、意味が変わります。撮影場所が市街地や観光地、重要な建物の近くであれば、その場所に見合う金額かも確認しておきたいところです。
撮影対象や持ち込み機材の扱い
撮影車両やロケ先の施設、撮影部が用意してドローンに搭載するカメラなどは、保険上「管理下財物(受託物)」として扱われ、一般の補償では支払われないことがあります。高額な撮影対象や持ち込み機材がある案件では、特約の有無と限度額を確認しておきましょう。
細かな条件は保険の約款によって異なります。分からない点は、撮影会社を通じて保険会社や代理店に確認してもらうのが確実です。
【撮影会社の方へ】自社を守るための補償内容と賠償金額
撮影会社にとって、保険は依頼主に見せるためだけのものではありません。万が一の事故のとき、自社の事業を守るためのものです。補償内容と賠償金額が足りなければ、署名した書類どおりに責任を果たせず、不足分は自社の負担になります。
賠償金額は最低でも10億円
TRICO.は、撮影事業者として最低でも10億円の賠償責任保険が必要だと考えています。CM・映画のロケ地には、高層ビルや商業施設、繁華街、観光地も含まれ、対物事故は修繕費だけでなく営業への影響まで含めた請求になりえます。1億〜5億円では、市街地や大型の商業施設での事故に対応しきれないケースが想定されます。
ドローン保険で対物無制限の商品は、ほぼ存在しないのが現状です。そして、10億円もどんな事故にも足りる金額ではありません。世界遺産や国宝・重要文化財は、損傷すれば10億円でも賄えず、金額に関係なく元の姿には戻りません。
こうした対象は、保険ではなく飛行計画で守るしかありません。文化財や重要施設では、上空の通過を認めない条件で許可が出ることが少なくありません。ドローンは飛ぶ以上100%落ちないとは言い切れないため、真上を避けるのは当然のリスク管理です。
TRICO.では、上空を避けるだけでなく、万が一落下しても対象物に届かない距離を保ち、近づく必要があるカットでは小型の機体を選ぶなど、機材の選び方でもリスクを下げています。そのうえで、条件の中でどう良い画を撮るかを撮影計画の段階から検討します。
世界文化遺産などの撮影ではドローンの墜落や衝突によって損傷してしまう建造物が多々あります。撮影業界全般に波及するような事故を起こさないようにいつも以上に慎重に飛行ルートや機材の確認を実施するようにしましょう。
預かった機材と撮影対象への備え
CM・映画の撮影では、撮影部が用意したカメラをドローンに搭載したり、撮影車両やロケ先の施設のすぐそばを飛んだりします。搭載中のカメラのように預かって扱う物は「管理下財物」にあたる可能性が高く、一般の賠償責任の補償では支払われないことがあります。
シネマカメラやレンズは高額です。管理下財物の特約や、搭載機材を対象にした動産保険がなければ、自社に賠償責任がある事故でも保険でまかなえず、全額が自社の負担になりかねません。特約の限度額が賠償責任本体より低く設定されていることもあるため、撮影する機材や対象に見合う金額かを確認しておきましょう。
現場に入るスタッフの扱い
法人で加入する賠償責任保険は、社員であれば誰が操縦しても対象になるのが一般的です。一方、業務委託(外注)のスタッフは通常対象外とされています。外部のパイロットや補助者に現場を任せる場合は、その人がどの保険でカバーされるかを整理しておく必要があります。
事故のとき、どちらの保険を使うのか
保険は「責任を負った分」しか支払わない
賠償責任保険は、保険に入っている会社が法律上負う賠償責任の範囲でしか支払われません。ドローンの事故だからといって、必ず撮影会社の保険が使われるわけではなく、どちらの保険で負担するかは事故の原因と過失の割合で決まります。
民法では、請負人(撮影会社)が仕事の中で第三者に与えた損害について、注文者(依頼主)は原則として責任を負わないとされています(民法716条)。機体の整備不良や操縦ミスなど、撮影会社側に原因がある事故なら、撮影会社の保険で対応します。
依頼側の指示が原因になる場合
一方で同じ条文には、注文や指図について注文者に過失があったときは例外とする、というただし書きがあります。依頼側の指示や準備に過失があれば依頼側も責任を負い、その部分は依頼側の保険で負担すべき損害になります。
CM・映画の現場でいえば、たとえば次のような場面です。
- 人止めを制作部が担う段取りで、管理が行き届かず飛行エリアに人が入った
- 撮影部が用意したリグの固定や、機材重量の申告に誤りがあった
- 事前に合意した飛行エリアや条件を、現場で変更するよう指示があった
ただし、指示があったからといって撮影会社の責任がなくなるわけではありません。飛行の安全判断は撮影会社の専門領域で、危険を認識しながら飛ばせば撮影会社の過失も問われます。TRICO.が懸念をその場で伝え、無理な飛行を引き受けないのは、撮影を守るためであると同時に、自社の責任の範囲を曖昧にしないためでもあります。
双方に過失がある場合
双方に過失があって第三者に損害を与えた場合、被害者はどちらにも全額を請求できます(共同不法行為・民法719条)。支払った側は、相手の過失割合の分を請求(求償)して精算します。壊れたのが依頼側の物(持ち込みの機材など)で、依頼側にも過失がある場合は、その割合の分だけ撮影会社が負担する額が減ります(過失相殺・民法722条2項)。
過失割合は、契約内容や事前の取り決め、現場での指示、飛行ログなどの事実関係から個別に判断されます。
役割分担を書面に残しておく
責任の所在は、事故が起きてから決めようとすると争いになりがちです。依頼側と撮影会社で、次の点を事前に決め、リスクマネジメントの書類や打ち合わせの記録に残しておきましょう。
- 立入管理(人止め)を担うのは、制作部やロケーションコーディネーターか、撮影会社の安全監視員・補助者か
- ドローンに載せる機材を誰が用意し、重量や固定を誰が確認するか
- 飛行の可否や飛行エリアの変更を、誰が最終判断するか
依頼側も、自社の賠償責任保険や機材保険がドローン撮影の現場をどこまで対象にしているかを確認しておくと、どちらの保険でも補償されない損害を防ぎやすくなります。
想定事例|大型機に載せたシネマカメラが墜落したら
ここでは、大型機にシネマカメラを搭載したケースを想定し、損害がどの保険の問題になるかを整理します(TRICO.での実際の事故ではなく、説明のための想定事例です)。
想定する状況 制作会社がレンタル会社から借りたシネマカメラを、撮影部が準備してドローン撮影会社の大型機に搭載。飛行中に墜落し、ドローン機体とカメラ・レンズが壊れた。
壊れたのは2つですが、持ち主も使う保険も違います。さらに、墜落の原因によって負担する側が変わります。
| 墜落の原因 | ドローン機体 | シネマカメラ |
|---|---|---|
| 整備不良・操縦ミス | 撮影会社が負担 | 撮影会社が賠償 |
| リグの固定不良・重量申告の誤り | 制作会社に請求しうる | 制作会社が負担 |
| 双方に原因 | 過失割合で分担 | 過失割合で分担 |
ドローン機体は撮影会社の持ち物なので、撮影会社側に原因があれば、自社の機体保険やメーカー補償で修理・再調達します。原因が撮影部のリグ固定など制作側にあれば、撮影会社は機体の損害を制作会社に請求でき、制作会社の賠償責任保険の問題になります。
シネマカメラは、持ち主がレンタル会社、契約したのが制作会社、撮影中に扱っていたのが撮影会社という、関係者の多い損害です。レンタル会社はまず契約者である制作会社に請求し、制作会社はレンタル補償や自社の機材保険で対応したうえで、原因が撮影会社にあればその分を撮影会社に求めます。
この事例から、それぞれの立場で次のことが言えます。
- 依頼する側:レンタル会社の補償制度には、使い方や用途に条件があることもあります。ドローンに載せる予定の機材は、借りる段階で用途を伝え、補償の条件を確認しておきましょう
- 撮影会社:自社に原因がある場合、搭載中のカメラは管理下財物にあたる可能性が高く、特約や搭載機材向けの保険がなければ、高額な賠償を自社で負うことになります
機材の重量と機体の積載量、固定の確認者、飛行条件の判断者を事前に決めて記録に残すことが、双方にとって責任と保険の両面での備えになります。
保険は最後の備え
保険は、事故が起きたあとに損害をお金で補うものです。キャストやスタッフのけが、ロケ先との関係、撮影スケジュールへの影響は、保険金では取り戻せません。
ドローンは、地上カメラや特機、カメラカーでは撮れないカットを補う機材として現場に入ります。だからこそ、撮影部や特機と同じ現場で、同じ水準の判断と安全管理が求められます。飛行許可・承認の取得、飛行ルートと立入管理の計画、安全監視員・補助者の配置といった、事故を起こさない体制と保険は、セットで考えるものです。
TRICO.では、これまで保険を使うような事故は起きていません。それでも10億円の補償を備えているのは、事故の可能性をゼロにはできないという前提で現場に入っているからです。
TRICO.の加入保険と補償内容
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 保険会社 | 東京海上日動火災保険 |
| 保険 | 超ビジネス保険(事業活動包括保険) |
| 支払限度額 | 対人・対物 1事故につき最大10億円 |
超ビジネス保険は、ドローンの飛行に限らず、事業活動全体をまとめて補償する保険です。機体単位ではなく事業として補償を組むため、CM・映画・MV・企業VP・VRなど、撮影の種類や使う機体が案件ごとに変わる業務とも相性のよい保険です。
リスクマネジメントの書類への記入・署名はもちろん、保険証券の写しが必要な場合もお気軽にお申し付けください。持ち込み機材を載せる撮影や、立入管理の分担が必要な現場では、役割分担と補償の範囲を打ち合わせの段階で一緒に整理します。
【保険・安全体制を含めた撮影のご相談はこちら → お問い合わせページへ】
よくある質問
Q. ドローン撮影の保険は法律で義務付けられていますか? A. 一律の義務ではありません。ただし飛行許可・承認の申請では保険の加入状況の記載が必要で、2025年10月以降の新規申請では、総重量25kg以上の機体に第三者賠償責任保険への加入が求められます。CM・映画の現場では、法令の要件にかかわらず加入していることが前提です。
Q. 依頼する側は、保険証券のどこを見ればいいですか? A. 特に、被保険者の名義と保険期間、支払限度額が1事故あたりか期間中の総額か、撮影対象や搭載機材を補償する管理下財物の特約の有無を確認してください。
Q. 撮影会社の賠償金額はいくらあれば十分ですか? A. TRICO.は最低10億円を推奨しています。ただし、世界遺産や国宝クラスの対象は10億円でも賄えないため、上空を飛ばない、距離を取るといった飛行計画で損傷させないことが前提になります。
Q. ドローンの事故なら、必ず撮影会社の保険で補償されますか? A. いいえ。保険は、責任を負った分しか支払われません。依頼側の指示や準備に過失があった場合は依頼側も責任を負い、過失割合に応じて双方の保険で負担します。
Q. 撮影部が用意したカメラをドローンに載せて壊れた場合は? A. 墜落の原因によって負担する側が変わります。撮影会社が賠償する場合、搭載中のカメラは管理下財物として一般の補償の対象外になることがあるため、撮影会社は特約の有無を、依頼する側はレンタル補償の条件を事前に確認しておきましょう。
まとめ
CM・映画の撮影で、ドローン撮影会社が保険に加入していることは前提です。そのうえで、立場ごとに次の点を押さえておきましょう。
依頼する代理店・制作会社の方
- 保険証券で、名義・期間・限度額の単位・管理下財物の特約を確認する
- リスクマネジメントの書類と保険証券をセットで見て、体制を判断する
ドローン撮影会社の方
- 賠償金額は最低10億円。世界遺産・国宝クラスは飛行計画で守る
- 預かった機材や撮影対象を補償する特約、外注スタッフの扱いまで備える
そして、事故時にどちらの保険を使うかは過失割合で決まります。役割分担を事前に決めて書面に残しておくことが、双方を守ることにつながります。
TRICO.は1事故最大10億円の補償と、許可申請・安全管理・機材体制を含めた撮影体制でCM・映画の現場に入っています。撮影の条件が固まっていない段階でも、お気軽にご相談ください。

COMPANY
| 会社名 | 株式会社TRICO. |
|---|---|
| 住所 | 〒104-0061 東京都中央区銀座1-12-4 N&E BLD. 7階 |
| 電話 | 090-3355-1480 |
| メール | info@team-trico.com |
| 代表者 | 石山 裕太 |
| 適格請求書発行事業者登録番号 | T1010001241161 |
| URL | https://team-trico.com/ |