トップ» コラム一覧» CMロケで使うドローン機材|Inspire 3の持ち込み機材リストと現場での使い方
CMのロケにInspire 3で入るとき、TRICO.が現場に持ち込んでいる機材をご紹介します。機体とカメラのほかにも、レンズやフィルター、モニター、バッテリー、細かな備品まで、持ち込むものは多岐にわたります。
この記事では、それぞれの機材を現場でどう使っているのかとあわせてご紹介します。撮影部・制作部の方が、ドローンチームがどんな機材で現場に入るのかを事前に把握する参考にしていただければ幸いです。記事の後半には、持ち込み機材のリストもまとめています。
CMのドローン撮影全体(撮影体制・費用・現場実務)については、CMのドローン撮影|演出・撮影体制・Inspire 3・費用・現場実務で解説しています。

機体とカメラ|Inspire 3とZenmuse X9-8K Air
CMの撮影では、DJI Inspire 3がおおく使われます。ジンバルカメラはInspire 3専用のZenmuse X9-8K Airで、フルサイズセンサーによる8K収録に対応しています。
現場には、Inspire 3を2機、X9-8K Airを2基持ち込みます。機材は前日までに点検を済ませ、問題のない状態で現場に入るのが前提です。それでも万が一、本番中に機体やジンバルに不調が出たときに、入れ替えてすぐ撮影を続けられるよう、予備機も本番機と同じく動作確認を済ませた状態で用意しています。ジンバルカメラは機体から付け替えられるため、カメラ側だけに不具合が出た場合にも対応できます。
予備のプロペラとジンバルダンパーも常備しています。プロペラの欠けやダンパーの劣化は映像の細かなブレにつながるため、点検で気になる点があればその場で交換します。
最近のドローンだとトラブルも減りましたが、現場固有のエラーなどはまだまだたくさんあります。そのような現場で予備機も持ち込んでいると機体固有のエラーなのか現場環境のエラーなのかを調査することができます。1機だけしか持ち込んでいない業者はエラーの洗い出しができなくなります。
送信機とカメラ操作の機材
Inspire 3は、パイロットが飛行を、カメラオペレーターがジンバル(構図)を、それぞれ独立して操作できる機体です。1人で操縦と撮影を行うか、2オペで運用するかは撮影内容によって判断しますが、車両や人物など動きのある被写体を追うカットでは、飛行軌道と構図を別々に修正できる2オペが向いています。そのため、パイロット用の送信機(DJI RC Plus)に加えて、カメラオペレーター用のRC Plusも持ち込んでいます。
ジンバルの操作には、送信機のスティックのほか、三脚に据えて使うDJI Force Proも使えます。雲台に近い感覚で操作できるので、雲台操作に慣れたカメラマンでも扱いやすいコントローラーです。
パイロットとカメラオペレーター、補助者のあいだの声のやり取りには、同時通話ができる無線インカム、Hollyland Solidcom C1 Pro(4人セット)を使っています。2オペは飛行と構図の息が合っていないと使える画になりません。インカムはその連携を支える道具ですが、最終的にものを言うのは日頃からの積み重ねです。
レンズ|11mmから90mmまでの8本
レンズは次の8本を持ち込んでいます。
- DJI DL 18mm F2.8/24mm F2.8/35mm F2.8/50mm F2.8/75mm F1.8
- LAOWA 11mm F4.5/14mm F4
- VILTROX 90mm
どの画角で撮るかは、コンテと撮影部とのすり合わせで決まります。超広角から望遠まで一通り揃えているのは、現場で求められる画角に応え、構図のバリエーションを持っておくためです。
画角は飛行の難しさにも関わります。75mmや90mmの望遠側では被写体から距離を取ったまま画を作れますが、機体のわずかな揺れや軌道のズレが画面上で大きく出るため、操縦は繊細になります。広角側は被写体に近づくぶん、障害物や人との距離に気を配ります。
LAOWAの11mmと14mmは、マニュアルフォーカスの超広角レンズです。このうち11mmはジンバルとの電子接点がないため、絞りは地上で露出に合わせて設定し、フォーカスは無限遠に固定して飛ばします。VILTROX 90mmはサードパーティ製のレンズなので、運用条件とリスクを事前に共有したうえで使います。
NDフィルター
露出の調整には、NDフィルターを使います。地上のカメラと違って飛行中にフィルターを付け替えることはできず、交換するには一度着陸させる必要があります。そのため、テイク中の光の変化まで見越してNDを選びます。
撮影部さんによっては露出計で計測して指示を毎回いだけたり、おまかせだったり現場によって違います。
撮影部からNDの指示を受けるときは、表記の違いにも気をつけています。シネマカメラの現場では「ND0.9」のような濃度表記が使われることが多い一方、DJIのDLレンズ用NDは「ND8」のような減光倍率で表記されています。同じフィルターでも呼び方が異なるので、対応関係を押さえておくと現場での行き違いを防げます。
| DJIの表記(減光倍率) | 濃度表記 | 減光量 |
|---|---|---|
| ND4 | 0.6 | 2段 |
| ND8 | 0.9 | 3段 |
| ND16 | 1.2 | 4段 |
| ND32 | 1.5 | 5段 |
| ND64 | 1.8 | 6段 |
| ND128 | 2.1 | 7段 |
その他撮影用途に応じてPLフィルターなども準備しています。
フォーカス|DJI 3ch Follow Focus
ピント送りが必要なカットでは、DJI 3ch Follow Focusを使います。フォーカス操作を担当するのは撮影部のフォーカスプラーで、TRICO.は高輝度モニターとFollow Focusを組み合わせた操作環境を用意します。
3ch Follow Focusで遠隔操作できるのは、電子接点を持つレンズのフォーカスとアイリスです。Inspire 3ではズームの遠隔操作はできず、LAOWA 11mmのように電子接点のないレンズにも使えません。
シビアなピント送りが求められるカットがある場合は、TRICO.から撮影部へ事前に相談し、制作部を通じて、そのカットに撮影部のフォーカスプラーを確保いただけるよう調整します。
モニターと映像伝送
ドローンの画は、監督や撮影監督が地上のモニターで確認します。モニターは、DJI Transmissionの高輝度モニターを2台持ち込んでいます。7インチ・1500nitの画面で、屋外の強い日差しの下でも画を確認しやすいモニターです。拡張プレートを装着するとSDI・HDMIの出力端子が加わり、ディレクターモニターやクライアントモニターなど、現場の外部モニターへも映像を送れます。電源はWB37に加え、アダプターを介してVマウントバッテリーでも駆動できます。
小規模な現場や移動の多い現場では、コンパクトなDJI SDR Transmissionを使います。ブロードキャストモードではiPadなどの端末で映像を確認できるため、モニターを据える場所が限られる現場でも、画を見られる人を増やせます。
モニターの設置には、平坦で移動の少ない現場ではAVENGERの170cmローラースタンド、足場が悪い場所や移動の多い現場では三脚を使い分けています。モニターや周辺機器を見やすい位置に固定するアーム類(NOGA、Manfrotto)も一緒に持ち込みます。
撮影部は、ドローン側がどんなモニターを持ち込むか分からないまま現場入りすることが多く、モニタリング環境を現場で組み立てることになりがちです。そのためTRICO.では、伝送・モニター周りの機材リストを制作担当の方を通じて撮影部へ事前に共有いただくようにしています。
バッテリーと電源
機体用のTB51バッテリー
Inspire 3はTB51バッテリーを2本1組で使います。TRICO.は13セット(26本)を持ち込んでいて、1セットあたりの飛行時間を約20分で見ると、充電なしで合計約260分の飛行ができます。DJIが公表している最大飛行時間は約28分ですが、カメラ・レンズを載せて撮影し、余裕を持って着陸するところまで考えると、実際の運用では20分未満が目安です。
TB51は機体の電源を落とさずにバッテリーを交換できるホットスワップに対応しているので、テイクの合間の待ち時間を短くできます。セルの温度が18℃を下回ると自己発熱機能が働く設計で、冬のロケでも性能を保ちやすくなっていますが、寒冷地では保温も含めた管理をしています。
送信機・モニター用のバッテリー
送信機(RC Plus)や高輝度モニターにはWB37バッテリーを使い、8本を用意しています。モニターは撮影中ずっと使い続けるため、VマウントバッテリーやNP-Fバッテリーも使える構成にして、交換用を多めに持っていきます。
充電環境がない現場では
充電環境が整っている現場なら、2機体制で一日を通して飛ばし続けることもできます。山間部や海岸などコンセントのない現場に備えて、出力2000Wのポータブル電源(EcoFlow DELTA2 MAX)を機材車に常備しており、Inspire 3のバッテリーなら約7セット分を充電できます。撮影が長時間に及ぶ案件では、発電機を用意することもあります。
拘束時間内の飛行回数に原則上限は設けていませんが、充電環境がない場合は、バッテリーのセット数が実質的な飛行回数の上限になります。ロケ地で電源が取れるかどうかは、事前に教えていただけると準備に反映できます。
飛行機で移動するロケ
遠方のロケで飛行機を使う場合、TB51(1本98.8Wh)は100Wh以下の予備リチウムイオン電池として扱われ、預け入れではなく機内持ち込みで運ぶことになります。バッテリーはPELICANケースに収納して客室に持ち込みます。リチウム電池の航空輸送ルールは、2026年4月にモバイルバッテリーの扱いが改定されるなど見直しが続いているため、地方案件では利用する航空会社の最新の規定を確認したうえで移動計画を立てています。
収録メディアとデータの受け渡し
DJI PROSSD 1TB×5本
収録メディアは、Inspire 3専用のDJI PROSSD 1TBを5本持ち込んでいます。1本あたりの収録時間は、8K CinemaDNG(23.976fps)、8K ProRes RAW(29.97fps)でそれぞれ約20分。5本あれば8K RAWで約100分の収録ができ、多くのCM案件はこの本数で対応できます。
複数日程の撮影の際は5本でも足りなくなる場面があるのでDITさんへ確認して初日のデータから現場で削除して使用します。
離着陸と飛行のサポート機材
砂利や草地、砂埃が舞いやすい場所での離着陸には、ヘリパッド(HOODMAN 150・90)を敷きます。プロペラの吹き下ろし(ダウンウォッシュ)で砂や小石を巻き上げると、機体やレンズを傷つけるだけでなく、周囲のスタッフや機材にも影響するためです。視認性の高いパッドは、離着陸地点を周囲に示す目印にもなります。
現場によってはハンドキャッチで運用しています。
近接撮影や屋内撮影など、構造物や人との距離が近い場面ではプロペラガードを装着します。ただし、風の強い日は飛行が不安定になりやすいため使いません。
D-RTKは、センチメートル単位の高精度な測位が必要な撮影で使います。動かない被写体に対して同じ軌道を繰り返し飛ぶ3Dドリーのような撮影では、再現性を高められます。RTKは衛星を十分に捕捉できることが前提の技術のため、受信状況の悪い都心部などでは屋外でも使えない場合があります。
運搬と細かな備品
機材の運搬には、堅牢で防水性の高いPELICANケースを使い、特にバッテリーの収納に活用しています。現場内の移動には、状況に応じてカメラカート(Motion9 M1)やマグライナーを持ち込みます。撮影データの確認や事務作業用のPC、レンズや機体のホコリを払うブロワー、ウエスも常備品です。
このほか、HDMI・USB-Cなどのケーブル類、ガッファーテープ・パーマセルテープ、工具一式、延長コード、メジャー、結束バンド、ゴミ袋、機材を保護する養生ふとんも持ち込みます。どれも地味な備品ですが、ケーブル1本で段取りが止まることもあるので、手を抜けない部分です。
持ち込み機材リスト(Inspire 3でのCM撮影の場合)
ここまでご紹介した機材をリストにまとめました。制作担当の方から撮影部へ、ドローン側の機材を共有いただく際にもお使いください。
| 区分 | 機材 | 数量・備考 |
|---|---|---|
| 撮影に使用する機材 | DJI Inspire 3(機体) | 2機(うち1機は予備) |
| Zenmuse X9-8K Air(ジンバルカメラ) | 2基(うち1基は予備) | |
| レンズ:DJI DL 18/24/35/50/75mm、LAOWA 11/14mm、VILTROX 90mm | 8本 | |
| TB51バッテリー(機体用) | 13セット(26本) | |
| DJI PROSSD 1TB(収録メディア) | 5本 | |
| ND・PLフィルター | 各種 | |
| DJI RC Plus(送信機) | パイロット用・カメラオペレーター用 | |
| 撮影アクセサリー | DJI高輝度モニター | 2台。拡張プレートでSDI・HDMI出力 |
| DJI Transmission コンボ | 映像伝送 | |
| DJI SDR Transmission 2 | 複数か所への映像伝送 | |
| DJI 3ch Follow Focus | フォーカスプラーは撮影部で確保 | |
| DJI Force Pro | ジンバル操作用コントローラー | |
| Hollyland Solidcom C1 Pro(無線インカム) | 4人セット | |
| AVENGERローラースタンド(170cm)、三脚、アーム類(NOGA・Manfrotto) | 現場の足場に合わせて使い分け | |
| sachtler FSB 8 | Force Proオペレーション用 | |
| その他 | WB37バッテリー | 8本。送信機・モニター用 |
| Vマウントバッテリー | モニター用 | |
| NP-Fバッテリー | モニター用 | |
| マキタ 充電式保冷温庫 | バッテリーの温度管理用 | |
| ポータブル電源(EcoFlow DELTA2 MAX) | 充電用 | |
| 発電機 | 充電用。案件により | |
| SSD空冷ファン | データ取り込み時の冷却用 | |
| PC | データの取り込み・確認用 | |
| ヘリパッド(HOODMAN 150・90) | 離着陸用 | |
| プロペラガード | 近接撮影・屋内撮影用 | |
| D-RTK | 高精度測位用 | |
| 予備プロペラ、ジンバルダンパー | 点検時の交換用 | |
| PELICANケース | 運搬・バッテリー収納用 | |
| マグライナー(Motion9 M1カメラカート) | 現場内の運搬用 | |
| ブロワー、ウエス、ケーブル類、テープ類、工具一式、延長コード、メジャー、結束バンド、ゴミ袋、養生ふとん | 現場の細かな対応用 |
よくある質問
Q. ここで紹介している機材は、撮影料金に含まれていますか? A. Inspire 3の基本料金には、予備機を含む機体一式と、運用に必要な周辺機材(モニター、伝送システム、ポータブル電源など)が含まれます。標準的な構成例はドローン空撮料金のご案内に掲載しています。モニターの増設などは条件により追加になる場合があります。
Q. 予備機は毎回持ち込みますか?
A. Inspire 3でのCM撮影では、予備機とX9-8K Airの予備を含めた2機体制で現場に入ります。予備機も前日までに動作確認を済ませ、すぐに入れ替えられる状態で準備しています。
Q. フォーカスプラーもTRICO.で手配できますか?
A.フォーカスプラーは撮影部で確保をお願いしています。TRICO.は3ch Follow Focusと高輝度モニターによる操作環境を用意し、ピント送りが必要なカットについては事前に撮影部へご相談します。
Q. 充電環境がない現場でも、一日撮影できますか?
A. TB51バッテリー13セットで、充電なしでも合計約260分の飛行が可能です。加えてポータブル電源を常備しており、長時間の案件では発電機を用意することもあります。撮影内容と拘束時間をお聞きしたうえで、必要な電源構成をご提案します。
Q. 撮影データはどのように受け渡しますか?
A. DITが立ち会う現場では、収録済みのSSDをDITへ直接お渡しします。DITが不在の現場では、TRICO.側でバックアップを行ったうえで受け渡します。方法はご相談ください。
Q. Inspire 3以外の機体も持ち込めますか?
A. 撮影内容に応じて、Mavic 4 Proなどの小型機、Avata 2などのFPV機、マイクロドローンを組み合わせることもあります。どの機体を使うかは、コンテと撮影内容を踏まえてTRICO.側からもご提案します。
Q. 地方や離島のロケで、飛行機移動になっても対応できますか?
A. 対応可能です。TB51バッテリーは機内持ち込みで運ぶ必要があるため、航空会社の最新の規定を確認したうえで、機材の輸送方法を含めて移動計画を立てます。
まとめ
CMロケにInspire 3で入るとき、TRICO.は機体とカメラを2機分、11mmから90mmまでのレンズとND・PLフィルター、フォーカスやカメラ操作の機材、監督・撮影部が画を確認するためのモニターと伝送システム、一日の撮影に足りるバッテリーと電源、収録メディアまで揃えて現場に入ります。どれも、撮影部の方と一緒に現場を気持ちよく進めるための道具です。案件ごとの機材構成について、ご不明な点があればお気軽にご相談ください

COMPANY
| 会社名 | 株式会社TRICO. |
|---|---|
| 住所 | 〒104-0061 東京都中央区銀座1-12-4 N&E BLD. 7階 |
| 電話 | 090-3355-1480 |
| メール | info@team-trico.com |
| 代表者 | 石山 裕太 |
| 適格請求書発行事業者登録番号 | T1010001241161 |
| URL | https://team-trico.com/ |