その現場、任せて大丈夫?経験値から見抜く空撮のプロに頼むべき理由

投稿:2026年1月22日|更新:2026年1月30日著者:石山裕太 TRICO.代表取締役

ドローン全般 つぶやき

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ドローンは、価格も手が届きやすくなり、一般にも広く認知されるようになりました。
だからこそ「飛ばすだけなら誰でもできる」と思われがちです。

ただ、ここには大きな誤解があります。

地上のカメラと同じで、同じ機材を使っても、プロが撮影した写真・映像と同じものが誰にでも撮れるわけではありません。
機材を使いこなすための知識・技術・経験が伴って初めて、業務として価値を出し、対価を得られる“プロ”になっていきます。

そしてドローンは、カメラよりさらに厄介です。
カメラとしての知識に加えて、法律・ルールの遵守、そして操縦技術が必須になります。さらに飛行させている以上、常に墜落の可能性がつきまとう。地上撮影と違って、リスクが「ゼロ」になる瞬間がありません。

加えて、知識や技術を積み重ねても、同じ条件を事前に再現して検証することが難しい現場が多いのもドローンの特徴です。初めての場所ほど不確定要素が増え、操縦技術だけでは埋めきれない領域が必ず出てきます。

いろいろな場所で飛行経験を重ねるほど、現場ごとの「違い」を多角的に見抜けるようになります。地形による風や電波、機材選定、GNSS環境、緊急時の対応、これらは毎回組み合わせが変わり、机上の知識だけでは埋まりません。結果として、難しい現場を数多くこなした人にしか溜まらない“現場の知見”が積み上がっていき経験値となっていきます。

経験値が溜まる仕組み|「現場ごとの差分」を見抜けるようになる

いろいろな場所で飛行経験を積むほど、現場ごとに注意すべきポイントの“差分”を、多角的に判断できるようになります。
同じ機体・同じ撮影目的でも、現場が変わればアプローチ方法が違ってきます。たとえば、

・風の流れ方(地形・構造物の影響等)

・電波・GNSS環境(遮蔽物、反射、干渉、マルチパス)

・離隔距離の判断

・人や車の動線(第三者リスク)

・離発着場所・方法の選定

こうした要素は現場ごとに組み合わせが違い、机上の知識だけでは埋まりません。
だからこそ、難しい現場を数多くこなしたパイロットや企業にしか蓄積されない“現場の知見”が溜まり、結果として運用の確実性に差が出てきます。

初見の現場ほど経験者が効く理由|「不安材料の削除」が成功確率を上げる

初めて飛ばす場所では、経験豊富なパイロットに依頼する価値が最大化します。理由は単純で、経験者は過去の類似現場から「今回起きやすい問題」を先に想像でき、不安材料を運用計画の段階で削除していけるからです。

経験が浅いほど、現場で起きる問題を「起きてから対処」しがちです。
一方、経験者は「起きる前に消す」。たとえば、

・離発着点を複数持つ(退避・回収の選択肢を作る)

・中止基準を数値で決める(迷いを減らし判断を速くする)

・バックアップカット/代替手段を用意する(成果物を守る)

・役割分担と連携手順を決める(異常時の混乱を減らす)

つまり、金額が高いか安いかの本質は「操縦が上手い」ではなく、
不確実性を削って“成立”に変える経験値と運用設計力にあります。初見の現場ほど、その差が成功確率として現れます。

経験値は「視点」で変わる|産業×クリエイティブの両方を経験すると強くなる

飛行経験は、量だけでなく「どんな現場で培われたか」によって、身につく視点が変わります。
テレビやCMなどのクリエイティブ案件と、点検・測量などの産業案件では、飛行方法も、現場の体制も、クライアントが求める成果も違うため、同じ「経験」でも得られる視点が変わってきます。

片方のジャンルに寄ったパイロットは、もう片方の現場で“見落としやすい観点”が出ることがあります。
逆に言えば、産業もクリエイティブも両方を突き詰めているパイロットは強い。
なぜなら、視点が増えるからです。クリエイティブで磨いた「マニュアル操作による操作精度」が産業に効き、産業で磨いた「手順化と基準」がクリエイティブの安全設計に効く。結果として、初見の現場でも判断の解像度が上がり、想定の抜けが減っていきます。

つまり経験値は、同じジャンルを積み上げるだけでも伸びますが、異なるジャンルの視点を掛け合わせたときに、より強く増幅されると私は感じています。

経験上、産業分野を専門にしている方がクリエイティブ案件を担当した際には正解が分からずに対応できないことや残念な結果になることが多いです。ドローンの動かし方の精度に違いがあり、スタッフの文化が違うのが原因となっていると感じます。
産業は100%の正解があり、クリエイティブには100%の正解が存在しないので面白みが違います。

ドローン撮影の難しさ|「事前検証・テスト」がしづらい

初めて飛ばす場所ほど、経験者の価値が上がる理由はもう一つあります。
それはドローン撮影が、事前に同条件での検証やテストを実施しづらい仕事だからです。

一般に開放されている場所なら、ロケハンや事前踏査で多くをカバーできます。
しかし現実には、次のように「同条件を再現して試す」こと自体が難しい現場が多い。

一発本番になりやすい現場(関係者都合でテスト不可/閉鎖環境)

屋内の非GPS環境(GNSS前提が崩れ、別の設計が必要)

・立入や導線の制約が強く、テスト飛行が許容されない

・生中継やイベント進行など、本番の流れの中でしか成立しない撮影

つまりドローンは、「テストで安全を証明してから本番へ」という理想形を取りにくい領域が多い。だからこそ経験者は、過去の類似現場から“起きやすい不安材料”を見立て、離陸前に消し込み、離隔距離や中止基準まで含めて成立条件を作ることで成功確率を上げていきます。

飛行している以上、墜落や衝突といったリスクが100%除去できないなかで最善策を瞬時に判断し続ける難しい業務だと実感しています。

経験値はどう伸びるか|「同系統の反復」と「異ジャンルの視点」で強くなる

経験値は、1回経験しただけで完成しません。私は大きく2つの伸び方があると考えています。

同系統の現場を2〜3件こなすと、経験値が“上乗せ”される

同じような現場を2〜3箇所経験すると、知見が整理され、精度が上がり、経験値が上乗せされます。
たとえば、影響力のある現場(例:墜落が許されない施設系)では、1カ所よりも3〜4カ所経験している人の方が強い
「共通点(必ず見るべき観点)」と「差分(現場固有の落とし穴)」を分離できるようになり、消し込みが速くなるからです。

“難しい現場をたくさん”より、“難しいジャンルを幅広く”のほうが応用が効く

難しい飛行場所のジャンルを一つに偏って積み上げるよりも、様々なジャンルの難しい飛行エリアを経験している方が応用が効き、経験値が蓄積されると感じています。
ジャンルが違うと「見えるリスク」が変わるため、型の引き出しが増えるからです。

そしてここで効いてくるのが、3章で述べた ”産業×クリエイティブの“視点の掛け算”です。
片方だけを突き詰める強みもありますが、両方を経験していると、初見の現場での判断解像度が上がり、抜けが減り、経験値が増幅しやすい。私はこの傾向を強く感じています。

任せるべきパイロットタイプ

発注側は「その場所で飛ばしたことがあるか?」を重視しがちですが、実務で効くのは 場所の経験 × 操縦歴 × 安全設計力 × チーム運用適性 の掛け算です。
そこで、アサイン判断をしやすくするために、現場で見える人材を“経験値順”で次のように整理すると、良いのではないでしょうか。

タイプ1:場所経験あり × 操縦歴長い × 安全管理ができる × 仕組み化できる

・個人でも強く、チェックリスト/教育/運用設計まで落とし込み、組織の確実性を上げられる。万能型パイロット

タイプ2:場所経験なし × 操縦歴長い × 安全管理ができる × 仕組み化できる

・初見対応も強く、標準化まで回せる。未知の現場を既知化しながら、再現性も上げられる。場所の経験がなくても信頼できるパイロット。

タイプ3:場所経験あり × 操縦歴長い × 安全管理ができる

・当該場所のクセを踏まえて運用計画を組める。高難度現場で強い。職人タイプ。

タイプ4:場所経験なし × 操縦歴長い × 安全管理ができる

・操縦経験次第で安全に運用可能かどうかを見極める必要がある。

タイプ5:場所経験あり × 操縦歴短い × 安全管理ができる

・社内育成枠に多い人材。社内に熟練パイロットが存在していると伸びる実務者。

タイプ6:場所経験あり × 操縦歴長い × 飛ばして満足する

・“前回できた”で更新が止まりやすい。操縦経験があっても応用が効かない場面が出てくる可能性あり。一時的な案件でのみアサインするなら○。歴が長いだけのベテランに多い。

タイプ7:場所経験あり × 操縦歴短い × 飛ばして満足する

・たまたまの成功が自信になりやすい。再現性が低く、事故リスクが上がりやすい。駆け出しパイロット。

タイプ8:場所経験なし × 操縦歴短い × 安全管理ができる

・社内育成枠。業務委託で依頼するにはリスクがある。

タイプ9:場所経験なし × 操縦歴短い × 飛ばして満足する

・業務単独アサインは避け、教育・訓練段階。

タイプ10:場所経験なし × 操縦歴短い × 安全管理ができる × 仕組み化できる

・操縦の場数は少なくても、情報収集・基準作り・データ管理など現場のディレクターとして重宝される。

・ただし高難易度な現場の「最終判断」は現場経験が乏しいので、タイプ1〜4と組むことで確実性が最大化する。

操縦歴が長いの基準は6年以上の飛行経験がある人を目安とします。2020年以降にドローンを始めたパイロットはDJIなどのドローンが成熟期に入りトラブルなどが少なくなってきており、機体の成熟でトラブル経験の機会が減り、結果として現場のエラーに触れる量が減りやすい傾向”

100%はない|突然の墜落要因は「ゼロ」にできない

ドローン運用で忘れてはいけないのは、前項で記載したように経験値の高いオペレーターをアサインしても突然の墜落につながる要素を100%除外することはできないという現実です。
だから経験値の本質は「絶対に事故を起こさない」と言い切ることではなく、事故確率を下げる設計と、万一のときに被害を最小化する立て直し(または中止への切り替え)を準備しておくことにあります。

離陸前に「何が起きたら中止するか」「どこへ退避するか」を言語化できているか。
ここがプロの運用設計力です。

経験値は“個人の糧”であり、企業は属人化させない仕組みが必要

経験値は最終的に、企業が奪うことのできないパイロット個人の糧になります。
同時にそれは、飛行場所・シチュエーションのポートフォリオとして蓄積され、次の案件の説得力にもなります。

一方で、産業案件などで自社オペレーターをアサインする企業ほど、属人化はリスクになります。
休職・退職・配置換えで確実性が落ちるからです。企業側は、経験を“個人の経験”に留めず、仕組み化しなければならない。

・ロケハン観点/撮影手法の組み方/自動航行ルートの設計

・役割分担を標準化

・ヒヤリハットの共有と、次回計画への反映

・現場ログを残し、次の案件に転用できる形で蓄積

経験者を尊重しつつ、組織として確実性を上げる。ここが産業利用が拡大するほど重要になります。

TRICO.の飛行経験値

1)重要施設・高難度施設での飛行経験

これらは そもそも機会が少なく、要求水準が非常に高い現場です。

 ・世界遺産/国宝/重要文化財
 ・皇居周辺等の重要施設周辺
 ・原子力事業所、プラント、製鉄所等
 ・防衛関係施設、空港周辺 など

2)特殊な場所・シチュエーション

 ・イベント会場、生中継
 ・花火大会
 ・-10℃以下/降雪/寒冷地の霧
 ・滝/橋梁/都心部工事現場/サーキット
 ・風速15m以上、暗い屋内、トンネル、縦坑 など

3)飛行方法による経験値(“やり方”が難しい領域)

 ・高高度飛行(150m以上)/都心部高高度
 ・マイナス高度(谷・縦坑など)
 ・船上撮影、動いている船からの離発着
 ・夜間×目視外
 ・第三者上空(海外)、キャストの上空など

特殊な現場や環境で飛行させる機会に恵まれて、国内でも有数の飛行場所の経験値を有しております。原子力発電所や皇居など一般的な事業者では立ち入ることができない場所での経験もクリエイティブ・産業問わず日々の安全運航に生かしています。

終わってホッとしたシチュエーションランキングTOP3

1位:ALTA Xでマイナス高度300mの谷間への飛行

米国製のフリーフライALTAXにVRカメラを搭載して谷間の対象物を撮影しに行く案件です。山間部で電波環境も良くない状態での運用となり導入したての機体で一発本番の撮影。特殊な運用方法なので通常の大型機運用と違い緊張感が増します。

VRドローンの詳細はこちら→VRドローン撮影とは

2位:永田町250m高高度の大型機運用

都心部の不動産撮影でビルの高さに合わせた高高度での大型機運用は毎回緊張する案件です。小型〜中型機でも多少の緊張感はありますが精神的負担は大型機に比べると軽減します。場所柄、近隣に重要施設も多くミスのできない現場で緊張感を持ち作業に臨みました。

3位:原子力発電所でのLiDAR計測

米国製のドローンを使用した原子力発電所のLiDAR計測案件です。墜落などがあると全国の発電所に波及してしまいドローン活用が停滞してしまう状況で安全に実施するための飛行計画ルートの立案と設計に日数を要しました。



著者:石山裕太 TRICO.代表取締役

ドローンカメラマンとして業界歴10年以上。CM、VR、イベント、産業系とオールジャンルの撮影に携わる。 マイクロドローンから超大型機まで、繊細な飛行技術を有する案件が得意。ドローンVR作品は日本各地で上映中。

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