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11KドローンVR撮影|Matrice 400 × Insta360 TITANの現行システムとイマーシブシアターへの活用
TRICO.が現在11KのドローンVR撮影に使っているのは、DJIの中型機Matrice 400に360°カメラのInsta360 TITANを搭載したシステムです。2025年8月に導入し、それまで大型機のFreefly ALTA Xで行っていたTITANの運用から主力を移しました。
カメラは同じTITANのため、11K(10,560×5,280)という収録解像度は変わりません。変わったのは運用です。現場の人員は最低3名から2名になり、機材は商用バン1台に収まるようになりました。TITAN搭載時の飛行時間も、実運用で約25〜30分を確保できています。その結果、山頂への機材の持ち込みや小型船舶からの離発着、氷点下での撮影など、大型機では成立させにくかった条件でも11KのドローンVRを撮れるようになりました。
本記事では、イマーシブシアターや常設展示、HMD向けのVR映像を企画している映像制作会社・展示企画会社の方に向けて、このシステムの構成と仕様、旧システムとの違い、撮影できる条件、上映環境に応じた使い方、発注前に整理しておきたいことをまとめます。
VRドローン撮影の基本や、上映環境から必要な解像度を考える方法は、こちらで解説しています。 VRドローン撮影とは|11K・16Kの高画質360°空撮と活用方法
Matrice 400 × Insta360 TITANのシステム構成

| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 機体 | DJI Matrice 400(最大ペイロード6kg) |
| VRカメラ | Insta360 TITAN(最大11K、8眼) |
| 搭載方式 | TITANをロッドで機体下部から離して搭載し、機体上部にも360°カメラを搭載 |
| 離着陸 | 機体に合わせた離発着台を使用 |
| 現場の人員 | 2名(オペレーターと補助者)。現場の条件に応じて追加 |
| TITAN搭載時の飛行時間 | 実運用で約25〜30分(気温・風・飛行内容により変動) |
| 移動 | プロボックスなどの商用バン1台で移動可能 |
Matrice 400は、DJIが2025年6月に発表したエンタープライズ向けの機体です。メーカー公表値ではペイロードなしで最大59分の飛行が可能で、最大6kgまでの搭載に対応しています。一方、Insta360 TITANはカメラ単体で約5.5kgあり、6kgのペイロードに対して余裕の大きい重量ではありません。TRICO.ではTITANの搭載を前提に、ロッドや上部カメラを含めた搭載系全体を組み立てて運用しています。
Insta360 TITANの収録仕様
| 収録モード | 解像度 | フレームレート |
|---|---|---|
| 11K 2D(モノスコピック) | 10,560×5,280 | 30fps |
| 10K 3D(立体視) | 9,600×9,600 | 30fps |
| 8K 2D | 7,680×3,840 | 60fps |
| 8K 3D | 7,680×7,680 | 30fps |
TITANは8基のマイクロフォーサーズセンサーと、画角200°の魚眼レンズ8本を備えた一体型の360°カメラで、10bitでの収録に対応しています。
仕様表のとおり、最大解像度の11Kは2D・30fpsのモードです。立体視(3D)にすると最大10K、60fpsで撮る場合は8Kになります。「11Kで撮れるカメラ」であっても、上映側が求めるフレームレートや立体視の有無によって、実際に使う収録モードは変わります。どのモードで撮るかは、上映設備の仕様が見えた段階で決めます(後述の「イマーシブシアター・展示で11KドローンVRを使うとき」で詳しく扱います)。
10bit収録は、上映前のカラー調整で階調の余裕として効きます。イマーシブ映像の制作では、ドローンVRの実写素材を地上撮影の映像やCGとつないで1本の上映作品にすることも多いため、色を合わせる工程で破綻しにくいことは実務上の利点です。
旧システム(ALTA X × TITAN)からMatrice 400へ移した理由
| 項目 | 旧:Freefly ALTA X × TITAN | 現行:Matrice 400 × TITAN |
|---|---|---|
| 機体区分 | 大型機 | 中型機 |
| 最大ペイロード | 約15.9kg | 6kg |
| TITAN搭載時の飛行時間 | 約20分 | 実運用で約25〜30分 |
| バッテリー | 1フライトに大容量バッテリー2本。現場に6〜8本を持ち込み、フライトが多い日は発電機も用意 | 1フライトにインテリジェントバッテリー1本 |
| 最低人員 | 3名 | 2名 |
| 移動車両 | ハイエースクラス1台 | プロボックスなどの商用バン1台 |
| 料金ページ掲載の基本料金(1日) | 45万円〜 | 40万円〜 |
大型機の運用で負担になっていたこと
ALTA Xはペイロードに大きな余裕があり、TITANのような重いVRカメラを安定して搭載できる機体です。その一方で、現場に持ち込む機材の量が撮影の段取りを左右していました。
1フライトに大容量バッテリーを2本使うため、撮影日には6〜8本を用意し、フライト回数が多い日は充電用の発電機も必要でした。飛行中の機体状態は、専用の地上局ソフトを入れたテレメトリー受信用PCで監視し、操縦にはFPVゴーグルを使います。こうした機材の設営と撤収には人手と時間がかかり、運用には最低3名が必要でした。車両で撮影地のすぐ近くまで入れる現場なら成立しますが、機材を担いで運ぶ山間部や、甲板の狭い船の上では、投入そのものが難しくなります。
Matrice 400への移行で、バッテリーは1フライト1本のインテリジェントバッテリーになり、機材全体がコンパクトになりました。現場の編成は2名で回せるようになり、制作側の負担も小さくなっています。
画質の基準は変わらない
機体を変えても、映像の解像度と画質の基準を決めるのはTITANです。旧システムで積み重ねてきた、防振ダンパーの選定と硬さの調整、ロッドの長さ、カメラの搭載位置といった揺れのない映像を撮るためのノウハウは、そのまま現行システムに引き継いでいます。
つまりMatrice 400への移行は、画質を上げるための変更ではなく、同じ11Kの映像を撮れる場所と条件を増やすための変更です。より重いカメラリグを使う16Kシステムは、引き続き大型機で運用しています。
運用が軽くなったことで撮れるようになった条件
山岳・高標高エリア
車両が入れない山頂でも、歩荷(ぼっか)による機材搬入を組み合わせることで、TITAN搭載機材を山頂まで運び込んで撮影しています。大型機の構成では、機材の量と重さから成立させにくかった条件です。
山の上では天候が変わりやすく、撮影できる時間帯が限られることも少なくありません。到着してから離陸するまでの段取りが短いことは、そのまま撮影の成否に関わります。
機材を分担しながら4名ほどいれば山岳撮影も可能です。大物機材を扱うので最低一名は山のプロに同行いただいています。

船上(小型船舶からの離発着)
機体が小さくなったことで、漁船などの小型船舶からの離発着が容易になりました。東京湾での船上撮影、豪華客船の寄港時の撮影など選択肢が広がります。
船上では、甲板上に離発着台を置くスペースがあるか、船の揺れと速度、風向き、機体を回収する手順を事前に確認します。また、Matrice 400の機体はIP55の防塵防水性能を備えていますが、TITANは防水性能が公表されているカメラではありません。水しぶきや雨の中で撮影できるかどうかは、機体ではなくカメラ側の条件で判断します。
船上・海上での撮影計画や安全設計については、こちらで詳しく解説しています。 船上・海上のドローン撮影|CM・映画・MVロケの許可・船舶・安全設計
氷点下の寒冷地
インテリジェントバッテリーへの移行でバッテリーの温度管理がしやすくなり、氷点下での運用の安定性が上がりました。雪景色や冬の山並みなど、冬季ならではの景観を撮影する際の選択肢が広がっています。
車両など動く被写体
機体の制御性能が上がり、飛行時間も延びたことで、車両のようにタイミングが一度きりになりやすい被写体にも対応しやすくなりました。船やロープウェイの追走・並走撮影も容易に実施できます。
遠隔地・離島
これまでもハイエース1台での移動は可能でしたが、商用バンクラスで運用できるようになったことで、遠方への出張では現地でレンタカーを手配する方法も取りやすくなり、遠隔地や離島の案件でも投入を判断しやすくなっています。離島はハイエースのレンタカーがないことが多いです。
イマーシブシアター・展示で11KドローンVRを使うとき
11KのドローンVRは、多面スクリーンやドームを使ったイマーシブシアター、常設展示のVRシアター、HMDでの体験コンテンツ、展示会や観光PR、企業ブランディングの映像などに使われています。上映環境によって、同じ11Kのシステムでも撮り方と収録モードの選び方が変わります。
イマーシブシアター(多面・大型投影)向けの実写素材
多面投影や180°スクリーン、ドームなどのイマーシブ施設では、360°の映像からスクリーンの形状に合わせて範囲を切り出して投影します。投影する範囲が大きいほど、元の解像度の差がそのまま画質の差として見えるため、大型の投影では11Kの余裕が活きます。上映方式ごとに必要な解像度の考え方は、関連記事の「8K・11K・16K VRの違い|シアター・展示・HMDで必要な解像度」で整理しています。
HMDと違い、シアターでは来場者が見る方向がスクリーンの配置でおおよそ決まります。360°で撮影していても、正面のスクリーンに何が映るかは、飛行方向と被写体の位置関係で決まります。そのため、イマーシブシアター向けの撮影では、上映時の正面にあたる方向を事前に確認し、見せたい景観が正面側に来るように飛行ルートを組み立てます。
フレームレートも事前に決めておきたい項目です。大型の投影では、動きの滑らかさを重視して60fpsを求められることがあります。TITANで60fpsを撮る場合は8K(2D)になるため、「11K・30fpsで解像度を優先するか」「8K・60fpsで動きの滑らかさを優先するか」を、上映設備の仕様と映像の内容を踏まえて選びます。
HMD(VRゴーグル)向けのコンテンツ
HMDでは、視聴者が自分で周囲を見渡すため、空中にいる感覚を最も直接的に伝えられます。その一方で、細かな揺れや急な加減速、意図しない回転は酔いの原因になるため、一定の速度でなめらかに飛ぶことが前提になります。
立体視が必要な場合、TITANは最大10Kの3Dで収録できます。ただし、被写体まで距離のある空撮では左右の視差による立体感が出にくいため、3Dにするかどうかは、見せたい被写体との距離と上映方法を踏まえて判断します。
11Kマスターからの書き出し展開
高い解像度で撮影しておくと、ひとつの撮影素材から、シアター上映用、HMD用、Webの360°動画用など、上映先ごとの仕様に合わせた書き出しに展開できます。常設展示の本編と、プロモーション用のWeb公開版を同じ撮影から作りたい場合は、企画の段階でその旨を共有いただくと、収録モードと書き出し仕様をまとめて設計できます。
撮影システムを11Kで選定し、常設のVRシアターで上映している事例は、こちらで紹介しています。
16K・小型360°カメラとの使い分け
TRICO.では、11Kのほかに16Kシステムと小型の360°カメラも運用しています。より大きなスクリーンで精細さを優先したい場合は16Kが選択肢になりますが、カメラ台数が多いぶんスティッチの工数が増え、機体も大型機になります。Web公開やHMD視聴が中心で大型投影を想定しない案件、狭い場所や被写体に近い動線を撮りたい案件では、小型の360°カメラが向いています。
Matrice 400 × TITANは、大型投影に耐える解像度と、撮影地の制約を受けにくい機動力を両立させたい案件で選ぶシステムです。
Matrice 400 × TITANの撮影で事前に組み立てること
消し込みを前提にした搭載:撮影した素材には機体とプロペラが映り込みますが、上下のカメラの映像を合成し、編集段階で機体を消し込むことで、完成映像は機体の写り込みのない、空を飛んでいる目線の全天球映像になります。消し込みの仕上がりは撮影時の搭載方法に左右されるため、ロッドの長さと上部カメラの位置は後処理まで見据えて決めています。
離着陸とクルーの位置:カメラを機体下部に吊り下げているため、地面への直接着陸はできず、ハンドリリース・ハンドキャッチを用います。全方位が映る以上、2名のクルーや機材、車両の位置も、本番の区間に入らないよう飛行ルートとあわせて計画します。
1フライト約25〜30分の使い方:撮影したいカットを1回のフライトにどう割り振るかで、必要なフライト数とバッテリー本数が決まります。電源のない山頂や船上では、現地で充電できない前提で、必要なフライト数からバッテリーを逆算して持ち込みます。
発注前に共有いただきたいこと
Matrice 400 × TITANで撮るかどうか、どの収録モードで撮るかは、次の情報で決まります。すべてが決まっていなくても、「どこで、どのように見せる映像か」がわかれば検討を始められます。
上映方法と収録モード:イマーシブシアター、常設のVRシアター、HMD、Webのどれで見せるのか。上映設備の施工会社や再生システムの担当者が決まっている場合は、スクリーンの形状と投影サイズ、再生できる解像度とフレームレート、2Dか3Dかを仕様書で共有いただくと、11K・30fps、8K・60fps、10K・3Dのどれで撮るかを判断できます。
撮影地と搬入条件:車両で撮影地の近くまで入れるか、徒歩や歩荷での搬入になるか、船からの撮影か。電源を確保できるかどうかも、持ち込むバッテリーの量に関わります。ロケーションコーディネーターが入らない案件では、撮影地の許可取得についてもご相談に応じています。
時期・時間帯と尺:見せたい季節や時間帯、上映尺とカット数。フライト回数と撮影日数、天候に備えた予備日の考え方に影響します。
後工程の分担:スティッチと機体の消し込みはTRICO.で対応しています。編集、CG合成、カラーグレーディングをどこまで含めるか、地上撮影の映像やCGと組み合わせるかどうかを、事前に取り決めます。
費用の目安
料金ページに掲載しているVRドローン空撮の基本料金(1日あたり)は、Matrice 400 × Insta360 TITANで40万円〜です。大型機のALTA XにTITANを搭載する構成は45万円〜で掲載しており、同じ11Kの撮影でも現行システムのほうが基本料金を抑えられます。
これに加えて、飛行許可などの申請費用、スティッチ・機体の消し込み・カラー調整といった後処理、歩荷や船舶の手配など撮影地への搬入にかかる費用、天候に備えた予備日が、案件の条件に応じて加わります。上映仕様と撮影地がある程度わかっていれば、概算をお出しできます。
機体・システムごとの基本料金は、こちらでご確認いただけます。 ドローン空撮料金のご案内|TRICO.
よくある質問
Q. 11KドローンVRとは何ですか? A. 横10,560×縦5,280画素の360°映像を、ドローンに搭載した360°カメラで撮影する方法です。TRICO.では、Insta360 TITANをMatrice 400に搭載したシステムで11Kの撮影を行っています。
Q. 旧システムのALTA Xで撮った映像と、画質は変わりますか? A. 解像度と画質の基準を決めるカメラは同じTITANのため、変わりません。Matrice 400への移行で変わったのは、人員・機材量・飛行時間といった運用面で、その結果として撮影できる場所と条件が増えています。
Q. TITANを搭載したときの飛行時間はどれくらいですか? A. 実運用で約25〜30分です。気温や風、飛行の内容によって変わるため、撮影したいカットとフライト数から必要なバッテリー本数を逆算して準備します。
Q. イマーシブシアター向けに60fpsで撮影できますか? A. 撮影できます。TITANで60fpsを撮る場合、解像度は8K(2D)になります。11K・30fpsで解像度を優先するか、8K・60fpsで動きの滑らかさを優先するかは、上映設備の仕様と映像の内容を踏まえてご相談しながら決めます。
Q. 3D(立体視)で撮影できますか? A. TITANでは最大10Kの3Dで収録できます。ただし、被写体まで距離のある空撮では立体感が出にくいため、2Dと3Dのどちらが適しているかは上映方法と見せたい内容から判断します。
Q. 船の上から撮影できますか? A. 小型船舶からの離発着に対応しています。甲板のスペース、船の揺れと速度、風向き、天候を事前に確認したうえで実施可否を判断します。TITANは防水性能が公表されているカメラではないため、水しぶきや雨が予想される場合はカメラ側の条件で判断します。
Q. 現場には何名で来ますか? A. 基本は2名(オペレーターと補助者)です。立入管理が必要な場所など、現場の条件によっては人員を追加します。
Q. 完成した映像にドローンは映りませんか? A. 映りません。撮影素材には機体とプロペラが映り込みますが、上下のカメラの映像を合成し、編集段階で機体を消し込んで、空を飛んでいる目線の全天球映像に仕上げて納品します。
まとめ
Matrice 400 × Insta360 TITANは、TITANの11Kという画質の基準はそのままに、大型機時代の運用の重さを減らしたシステムです。現場2名、商用バン1台、TITAN搭載時で約25〜30分という運用条件によって、山岳や船上、寒冷地、遠隔地など、これまで成立させにくかった撮影地でも11KのドローンVRを撮れるようになりました。
イマーシブシアターや常設展示、HMD向けの企画では、「11Kで撮れるか」より先に、上映設備が求める解像度・フレームレート・立体視の有無と、正面に見せたい方向を整理することで、収録モードと飛行ルートが決まります。上映設備が固まる前の企画段階のご相談にも対応していますので、11KのドローンVR撮影をご検討の際はお気軽にお問い合わせください。
参考:TITAN実写VRの仕上がり例(TRICO.撮影協力)
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