トップ» コラム一覧»一等無人航空機操縦士の技量は現場で通用するか|認定会ジャッジが見た指導者の実力

一等無人航空機操縦士の資格を持っていれば、現場で通用する操縦技術があると言えるのか。
PROパイロット技能認定会の種目は、一等資格の保有者がそのまま合格できる水準には設定していません。資格の先にある実務的な操縦技術を確認する場だからです。そのため、10月に開催した第29回・第30回を含めて合格者0名が5回続いていること自体は、想定の範囲内でもあります。
一方で、第28回で驚かされたのは、ドローンスクールのインストラクターや修了審査員として受講生を指導・審査する立場にある参加者の、技能レベルの低さでした。本記事では、実行委員会・ジャッジとして第28回の飛行を見てきた立場から、資格保有者や指導者に共通して見られた操縦技術の課題と、現在の技能証明制度について感じている問題点をまとめます。第28回に参加いただいた皆さま、運営にご協力いただいた皆さま、ありがとうございました。
第28回認定会の結果|参加者の75%が一等資格保有者、半数以上が指導者側
今回の参加者は20名。そのうち一等無人航空機操縦士の保有者が15名で、全体の75%を占めました。ドローンスクールのインストラクターや修了審査員など、指導する側の方が半数以上を占めていたのも特徴です。今回から導入した資格者割引と関東開催であったことが重なり、スクール関係者の初参加が増えたと考えています。
操縦モードはモード1が11名、モード2が9名でした。これまではラジコンや農薬散布の経験者が多くモード1が中心でしたが、モード2で指導するスクールが増えたことで、参加者層も変わりつつあります。
| 段階 | 種目 | 結果 |
|---|---|---|
| 予選 | 4ポイントピルエット、ホリゾンタルエイト、前進対面 | 通過7名(20名中) |
| 本選 | ホリゾンタルエイト with 1440、カップ、特一等スペシャル(当日発表) | 合格0名・シード0名(7名中) |
当日発表種目の「特一等スペシャル」は、国家資格の実地試験でも行われるスクエア飛行に、ピルエットとカップの要素を組み合わせた内容です。本選種目としては取り組みやすい部類で、あと一歩で合格レベルと判断されるシード獲得者も出なかったことを踏まえると、参加者の練習量は率直に言って足りていませんでした。
会場は体育館で、風の影響を受けない環境です。その分、操縦技術の差がそのまま飛行に表れます。今回の結果から言えるのは、一等無人航空機操縦士の技量レベルでは、認定会では予選通過が上限だということです。
緊張で実力を出せないことも「技量」のうち
前日のトレーニング会を見る限りでは、予選通過者は参加者の半数を超えると予想していました。しかし本番で通過したのは7名です。ジャッジに見られながら飛ばすプレッシャーで、本来の実力を出し切れなかった方もいたと思います。
ただ、実際の現場には認定会以上に緊張する場面がいくらでもあります。
- 大勢の人が見ている(LIVE会場での飛行など)
- 時間が限られていて、やり直しができない
- 周囲に障害物がある
- 関係者全員がその飛行を待っている
- 墜落すればニュースになる
こうした状況でも機体を安定して操作できるかどうかが、実務における操縦技術です。適度な緊張は必要で、緊張すること自体は悪いことではありません。問題は、緊張した状態でも最低限の操作精度を維持できるだけの練習量と再現性があるかどうかで、今回はそこに課題を感じる参加者が少なくありませんでした。
では、何が足りていなかったのか。今回の課題は、難しい演目をこなす力よりも、その前提となる基礎技術にありました。特に目立ったのが、GPSへの依存、4舵同時操作、ホバリングの精度と8方向の舵の理解という3つです。
課題1|DJI機の安定性を自分の技術と誤認している
現在のDJI製ドローンは、GPS、ビジョンセンサー、姿勢制御などのアシスト機能によって、誰でも安定して飛ばしやすくなっています。安全性や普及の面では大きなメリットですが、その安定性を自分の操縦技術だと考えるのは危険です。
GPSが効いた状態で安定して飛ばせることと、GPSに頼れない状況で機体を正確にコントロールできることは別物です。そしてGPSに頼れない状況は、屋内、建物や構造物の近く、橋梁や鉄塔の周辺、山間部や谷地形、電波環境が不安定な場所など、実務の中で突然やってきます。そこで機体と現場を守るのは、操縦者自身の技術と判断しかありません。
GPSや各種センサーを活用すること自体は、むしろ安全管理の一部です。大切なのは、自分が上手く飛ばしているのか、機体に飛ばしてもらっているのかを見誤らないことです。今回の認定会は、普段の操縦がどれだけ機体側の制御に支えられているかを、参加者自身が知る機会にもなったはずです。
課題2|4舵を同時に使えず、ラインを維持できない
一等無人航空機操縦士の実地試験で求められるのは、主にスロットル、エレベーター、エルロンの3舵を同時に使う操作です。しかし認定会の演目では、そこにラダーを加えた4舵を同時に使いながら、機体の位置・機首方向・高度・ラインを維持する必要があります。
機首方向を変えながら飛ばす演目では、ラダーを入れた瞬間に機体の位置がズレます。そのズレに対してエルロンやエレベーターをどの方向にどれだけ当てるか、高度が変わりそうなときにスロットルをどう補正するか、ラインから外れたときにどの舵を優先するか。これらを同時に処理できなければ、正確な飛行はできません。
今回特に多かったのが、機首を回すたびに位置がズレ、それを瞬時に修正できない場面です。機体を動かすことはできても、意図したラインに乗せ続けることができない。この差が、ホリゾンタルエイトやピルエット、カップでははっきり結果に出ます。
これは単に「ラダー操作が苦手」という話ではありません。機首方向が変わった状態でも、機体のズレを正確に修正できるかどうかの問題であり、その土台になるのが次に述べるホバリングの精度です。
課題3|ホバリングの精度不足と8方向の舵の理解
今回、ホバリングの精度が十分だった参加者は一人もいませんでした。機体が流れているのに気づくのが遅い、気づいても修正の舵が遅れる、当てすぎて逆方向に崩れる、といった動きは、演目の難易度以前の問題です。
GPSが効いていない状態では、スティックを中立に戻せば機体が止まるわけではありません。機体をその場に留めておくために、微細な操作を常に続ける必要があります。多くの参加者はこの感覚を持てておらず、ズレを修正しては操作を止め、またズレては修正する、という繰り返しになっていました。
機首の向きが変わっても舵を間違えないこと
ホバリングで特に重要なのが、機体の向きごとの舵の理解です。正面・右向き・左向き・対面の4方向だけでは不十分で、右前・左前・右後・左後の45度方向を加えた8方向すべてで、どの舵を当てればよいかを理解しておく必要があります。
正面や対面では操作できても、45度を向いた瞬間にエルロンとエレベーターの当て方が曖昧になる人は少なくありません。ズレには気づいていても、どちらに舵を入れればよいかで頭と指が一致していないと、ズレは修正されないまま放置されます。先述した4舵操作で機首を回すたびに位置が崩れるのも、ここに原因があります。
ホバリングは「目・頭・指」の練習
ホバリングでズレが出る原因は、風で流されたからではありません。風のない体育館でもズレは起きます。精度の高いホバリングには、次の3つがそろっている必要があります。
- 目:機体がズレた瞬間に気づき、どの方向に流れているかを見極める力
- 頭:機首の向きを踏まえて、どの舵を当てれば戻るかを判断する力
- 指:判断した舵を遅れず正確な量で入れ、適切なタイミングで止める感覚
この3つが一致して初めて、ズレを最小限の操作で基準位置に戻し、安定させ続けることができます。ホバリングは機体を浮かせるだけの練習ではなく、すべての演目と実務飛行の土台となる基礎訓練です。
基礎を固める練習法|8方向の十字飛行
いきなり難しい演目を練習するのではなく、まずは機体の向きと舵の関係を身体に覚えさせることが先です。そのために効果的なのが十字飛行です。
十字飛行では、前後左右に動かすだけでは不十分です。「留める→進ませる→停止させる→戻す」という一連の動きを、それぞれどの舵で行うのかを理解したうえで、正確にスティックを操作することが重要です。
この動作を、45度方向を含む機首方向8方向すべてで行います。正面ならできる、対面ならできる、という状態では足りません。どの向きでも、機体がどちらにズレているか、どの舵を当てれば止まるか、どの舵を入れすぎると崩れるかを即座に判断できる状態を目指してください。
練習では、スティックを1mmずつ動かして機体の挙動がどう変わるかを確かめてみてください。進めるには何mm入れればよいのか、45度傾いた状態でまっすぐラインを出すにはどう入れるのか。そこから試行錯誤を重ねることが、機体を自分の舵で飛ばす感覚を養います。
技能証明制度の課題|最上位の資格が「ゴール」になっている
一等無人航空機操縦士は、無人航空機の技能証明の中で最上位の資格です。そのため業界内では「一等を取れば一人前」と捉えられがちで、合格した時点でそれ以上の技量を身につけようとしない人が少なくありません。
しかし私は、一等は決して難しい資格ではないと考えています。今のドローンスクールは、自動車やフォークリフトの免許と同じように、お金を払って通えば誰でも取得できるものになっています。指導する側も受講生を合格させるための指導に徹していて、その内容が現場で使える技術に結びついていません。
実技についても、実地試験で確認しているのは実務に出るための最低限の技量にすぎません。その内容を難しいと感じているなら、まだ実務に出る段階ではないかもしれません。厳しい言い方になりますが、事故を防ぐために業界全体で正しく認識しておくべき点です。
最上位の技能証明であるなら、国が求める技能水準をもっと高いところに置いていれば、この問題は起きないはずです。現状は、合格しても現場で任せられるオペレーターは育たず、合格者もその先を目指さない。これが今のドローン業界の悪循環であり、第28回で目にした指導者の技能レベルも、その循環の中にあると感じています。
誰でも飛ばせる機体が生んだ「カメラ業界と同じ勘違い」
悪循環の要因の一つは、機体の進化です。課題1で触れたとおり、現在のドローンは制御技術が大きく向上し、10年前と比べれば、飛ばすだけなら誰でも飛ばせる製品が販売されています。プロが現場で使っている機材も、お金さえあれば誰でも購入できます。
これはカメラ業界でも起きてきたことです。プロと同じカメラを買っても、プロと同じ写真が撮れるわけではありません。ドローンも同じで、機材をそろえることと、それを使いこなして専業で生計を立てていくことはまったく別の話です。ドローンで食べていくのは決して簡単な世界ではない、という認識がなかなか浸透していきません。
ドローンスクールに求められる役割
第28回で何より驚いたのは、インストラクターや修了審査員として受講生を指導・審査している参加者の技能レベルです。先に述べたとおり、ホバリングの精度が十分だった参加者は一人もおらず、そこには指導者も含まれています。受講生の技量を見極める側の技量がこの水準では、修了審査で何を基準に合否を判断しているのか、疑問を持たざるを得ません。
受講生を合格させることは大切です。しかし、合格率の高さをアピールすることに、どれほどの意味があるのでしょうか。高い合格率は指導方法が優れているからではなく、審査が甘いからではないか。率直に言って、私はそう感じています。登録講習機関の修了審査を行うのはスクール自身であり、審査を緩めれば合格率は上げられてしまうからです。
スクールには、合格のその先まで示すことが求められていると考えています。合格後にどう練習を続けるのか。どのような技量を目指すべきなのか。二等レベルの技量で業務が安全に成り立つのか。ここまで示せるスクールが増えれば、ドローンパイロットの質は確実に上がっていきます。
反対に、資格取得だけが目的になれば、資格は持っていても実務経験も操縦技術も足りないパイロットが増え続けます。それは業界にとって健全な状態ではありません。
これからドローンを始める方は、スクールを合格率の数字だけで選ばないでください。見るべきは、修了審査でどこまで厳しく技量を確認しているか、そして合格後の練習や実務に向けた指導まで示しているかです。合格率の高さを前面に出しているスクールほど、その中身を確かめる価値があります。
現場で任せられる操縦者とは
TRICO.では、CM・映画などの空撮から構造物の点検・測量まで、建物の近くや屋内などGPSに頼れない環境での飛行を含む案件を扱っています。そうした現場で操縦を任せられるかどうかは、資格の有無ではなく、本記事で挙げたホバリング精度と4舵操作が身についているかが最低条件です。それに加えて経験値が溜まってきて初めてアサインすることができます。
CRM(クルー・リソース・マネジメント)やノンテクニカルスキルも安全運航には欠かせませんが、それらが功を奏するのは、操縦技術の基礎があってこそです。機体を思いどおりに止められない操縦者は、どれだけ段取りや連携が優れていても、いざという場面で機体を守れません。
ドローン撮影や点検を外部に発注する際は、パイロットの資格だけでなく、GPSに頼れない環境での飛行経験や、日常的な訓練の体制についても確認することをおすすめします。
PROパイロット技能認定会の役割
PROパイロット技能認定会は、国家資格制度を否定するものではありません。国家資格で学ぶ基礎があるからこそ、その先にある実務的な操縦技術をどう高めていくかを確認する場だと考えています。資格は基礎、認定会はその先の技術を測る場。この位置づけをこれからも明確にしていきます。
合格者0名が5回続いているのは、認定会の水準を国家資格のさらに先に置いているからです。それでも参加された方にとっては、自分がどこまでできていて、何が足りず、どこを練習すべきかを知る機会になったはずです。それを知ることが技術向上の第一歩です。認定会の種目や審査基準、練習方法については「PROパイロット技能認定完全攻略」で詳しく解説しています。
まとめ|資格の有無ではなく、現場で任せられる操縦者を増やしたい
ドローン業界に必要なのは、現場で安心して任せられる操縦者を増やすことです。そのためには、国家資格を取得した後も継続して訓練すること、指導する側が意識と技量を高めること、スクールや会社が独自の操縦技術の基準を持つことが欠かせません。
国家資格は最低限の証明であり、ゴールではありません。認定会に向けて積み重ねた練習の成果は、必ず普段の実務にも活きてきます。
認定会について詳しく知りたい方は➡️PROパイロット技能認定完全攻略

COMPANY
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| メール | info@team-trico.com |
| 代表者 | 石山 裕太 |
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