冬のドローン撮影|CM・映画ロケの低温・結露・着氷対策とバッテリー管理

投稿:2025年3月25日|更新:2026年10月22日著者:石山裕太 TRICO.代表取締役

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冬は空気が澄み、雪景色や朝夕の低い光など、ほかの季節では撮れない画が狙える時期です。

一方で、冬のロケは機材トラブルの原因が一気に増えます。低温によるバッテリーの性能低下、温度差による結露、霧や雪による着氷、乾燥による静電気。そして見落とされがちなのが、寒さの中で何時間も操縦を続けるオペレーター自身のコンディションです。

TRICO.は、真冬の北海道での屋外徹夜案件や九州最高峰での登山ロケなど、寒冷地・山岳のロケを数多く経験してきました。この記事では、冬のCM・映画ロケでドローンチームが実際に気を配っていることを、機材とオペレーターの両面からお伝えします。

この記事でわかること

  • 冬のバッテリー管理と、自己発熱機能に頼らない理由
  • 結露を防ぐ機材の扱い方
  • 霧・降雪の中での飛行判断と、着陸後の着氷チェック
  • 乾燥した冬の静電気対策
  • オペレーター自身の防寒と、現場での体調管理

バッテリー管理|冬はまず「温めてから飛ばす」

ドローンのリチウムイオンバッテリーは、低温になると化学反応が鈍ります。飛行時間が短くなるだけでなく、急に電圧が下がって、最悪の場合は墜落につながります。

そのため冬場は、飛行前にバッテリーを20〜30℃程度まで温めておくことを基本にしています。

自己発熱機能には極力頼らない

TRICO.が主に使用するInspire 3やMavic 3、Mavic 4などのDJI製品には、低温時にバッテリーを温める自己発熱機能を備えたものもあります(Inspire 3のTB51バッテリーは動作環境温度-20℃〜40℃)。

ただ、この機能は機体に装着して電源を入れてから温まり始めるため、飛べる温度に達するまで待ち時間が発生します。発熱にはバッテリーの容量も使うので、そのぶん飛行時間も短くなります。

CM・映画の現場では、バッテリーを交換したらすぐに再離陸しなければならない場面が多くあります。その待ち時間は、撮影を止めることに直結します。だからTRICO.は自己発熱機能を極力使わず、バッテリーをあらかじめ温めた状態でスタンバイさせています。

現場でのバッテリーの温め方

メインで使っているのは、機材車に常備しているマキタの充電式温冷庫(CW004G・容量29L)です。冬場は35〜40℃に設定しておくのが目安です。

蓋を開けるたびに庫内の温度は下がるので、やや高めに設定しておいても問題ありません。バッテリー駆動もできるため、機材車から多少離れた場所まで持ち運ぶこともできます。

makitaの温冷庫

関連記事:温冷庫使用術!冬のドローン撮影を安全・快適にするバッテリー保温

温冷庫が使えない場面では、次の方法を使い分けます。

  • 電気ブランケット:機材車から離れて動く現場向け。モバイルバッテリーから給電し、保冷バッグや発泡スチロールの中で温めます。温まるのに時間がかかるので出発前から保温を始めるのがポイントで、水蒸気が出ないため結露の心配もありません。
  • 車の暖房:駐車中に使える方法です。温風を当て続けると高温になりすぎるので注意が必要で、早朝の住宅地などアイドリングが迷惑になる場所では使いません。
  • 人肌:何もないときの最終手段です。ポケットに入れて温めます。

逆に避けたいのが、密閉したケースの中に使い捨てカイロを詰めて温める方法です。カイロは酸化反応で発熱するため、密閉空間ではケース内が結露するおそれがあります。

飛行中・着陸時の運用

離陸直後はいきなり急上昇・急加速をせず、少しホバリングさせて電圧が安定しているかを確認してから撮影に入ります。寒さで普段は出ないエラーが表示されることもあるので、飛行中も電圧と残量の推移をこまめに確認します。

着陸は残量40%程度を目安に、通常より早めに戻します。

バッテリーを機体に装着する前には、端子に結露やゴミが付いていないかを確認します。ゴミの除去には必ずブロワーを使います。冬場に息を吹きかけると端子が結露するので、ご法度です。

制作部の方へ|冬はバッテリー交換が増えます

冬は1フライトで撮れる時間が通常より短くなります。TRICO.はその分バッテリー本数を多めに用意し、温めておいたバッテリーに交換してすぐ再離陸できる状態で臨みます。

それでも、長回しのカットや何度もテイクを重ねるカットでは交換の回数が増えます。そうしたカットがある場合は、交換の時間を少し見込んでおくと香盤が組みやすくなります。

結露対策|温度差をどう管理するか

結露は、冷えた機材が暖かく湿った空気に触れたとき、あるいはその逆のときに起こります。レンズの内側やカメラ内部が結露すると曇りが取れるまで撮影できず、電子基板に水分が付けば故障の原因にもなります。

対策の基本は、機材に急激な温度変化を与えないことです。

出発時・移動中

出発前は、玄関など中間的な温度の場所に機材をしばらく置き、少しずつ外気温に慣らしてから持ち出すのが理想です。

ただ、ロケは早朝出発が多く、時間をかけて慣らすのが難しいのが実情です。そのため寒冷地の撮影では、レンズやジンバル類は前夜から車に保管しておくことが多くあります。

移動中も、機材をケースから出したまま暖房の効いた車内に置くことはしません。ケースに入れたままにして、暖まりすぎないようにしています。シリカゲルなどの除湿剤をカメラバッグに入れておくのも一つの手ですが、効果は補助的なものと考えています。

撮影後

寒い屋外から暖かい室内や車内に戻るときも同じです。機材はケースに収めてから持ち込み、徐々に室温へ慣らします。

霧や降雪のなかでの飛行|水分が凍ることが最大のリスク

冬のロケでは、霧や雪の中で飛ばせるかどうかの判断を迫られる場面が少なくありません。どちらも視界の問題だけでなく、機体に付いた水分が凍ることが最大のリスクです。

霧の中は飛ばさないのが原則

霧(山霧・川霧・海霧)や雲は、水蒸気のかたまりです。その中を飛ばすと機体やプロペラに水分が付着し、気温が低ければ飛行中にプロペラが凍結します。プロペラに氷が付くと揚力が落ち、墜落のおそれが高まります。

さらに霧が濃いと、センサーが地面を誤認して意図せず着陸動作が始まることがあります。その場合はすぐに解除して、正しい離着陸地点へ帰還させます。

機体を見失うリスクも含め、霧が出ているときは飛ばさないことを原則にしています。

早朝の朝露・霧

雨上がりのよく晴れた朝は、放射冷却で朝露や霧が発生しやすくなります。機材をセッティングしている間に濡れてしまうこともあるため、地面にグランドシートを敷いて地表からの水分を遮り、待機中の機材は防水カバーで覆っておきます。

雪は「乾いた雪」と「湿った雪」で別物

同じ降雪でも、北海道のような乾いた雪と本州の湿った雪では条件がまったく違います。乾いた雪は機体やレンズに付着しにくい一方、湿った雪はプロペラやレンズに張り付きます。

レンズに雪片が一つ付けば、雨滴と同じくそのカットは使えません。TRICO.が使用するDJIの撮影機体は防水仕様ではないため、湿った雪や大雪の中での飛行は中止します。

雪面からの離着陸

雪面ではプロペラの吹き下ろし(ダウンウォッシュ)で雪が舞い上がり、モーターやレンズ、センサーに付着します。離着陸にはヘリパッドを使うほか、状況に応じてハンドリリースなども併用し、機体を直接雪面に置かないようにしています。

冬は季節風や山の稜線の強風など、風の判断も厳しくなります。風・雨・雲量を含めたGo/No-Go判断の考え方は、天候判断の記事で解説しています。

関連記事:撮影のプロが信頼する天気予報サイトとは?

着陸後のレンズ・機体ケア|まず着氷を疑う

霧や雪の中を飛んでいなくても、低温下では空気中の水分がレンズ前玉やプロペラに付着し、凍っていることがあります。冬の現場では、着陸したらまず着氷を疑うことが大切です。

TRICO.が着陸後に行っているケアの流れは次のとおりです。

  1. レンズ、プロペラ、機体各部に着氷や霜がないかを目視で確認する
  2. 付いた雪はブロワーで飛ばす(息を吹きかけるのは禁物)
  3. 氷は無理に拭き取ったり削ったりせず、自然に溶けるのを待つ
  4. 残った水滴をレンズクリーニング用のクロスでやさしく拭き取る
  5. プロペラの氷は完全に取り除いてから次のフライトに入る

レンズの氷をその場でこすると、前玉やコーティングを傷める原因になります。また、プロペラに氷が残ったまま離陸すれば、飛行中に着氷したのと同じ状態で飛ばすことになります。

レンズ交換も、雪や風の強い屋外ではできるだけ避け、車内など雪が入り込まない場所で行います。マウント部やセンサーに雪や水分が入ると、その日の撮影全体に影響が出るからです。

静電気|乾燥した冬はメディアと電子機器に注意

冬は空気が乾燥し、体に静電気が溜まりやすくなります。人体に溜まった静電気が記録メディアの端子に放電すると、データの破損やメディアの故障につながるおそれがあります。

撮影素材が入ったメディアは、CM・映画の現場では何物にも代えがたいものです。TRICO.では、次の扱いを徹底しています。

  • メディアに触れる前に、一度金属に触れて放電する
  • メディアの端子部分には触れない
  • 持ち運びには帯電防止タイプのケースを使う

Inspire 3のPROSSDも、Mavicシリーズで使うmicroSDカードも扱いは同じです。DITへメディアを受け渡す場面も含め、乾燥した日ほど慎重に扱います。

また、静電気はレンズや機体にホコリを引き寄せます。乾いた布で強くこするとかえって帯電するため、まずブロワーでホコリを飛ばしてから拭くようにしています。

関連記事:冬のSDカード管理術|静電気からデータを守る

雪景色の露出と、短い日照時間

晴れた雪原では画面のほとんどが高輝度になり、ハイライトが飛びやすくなります。白い雪面のディテールをどう残すかは、冬の空撮で特に気を配るポイントです。日差しが強い日は、NDフィルターも普段より濃いものが必要になります。

逆に、日陰や曇天の雪面は青く沈みやすく、同じロケーションでも時間帯によって印象が大きく変わります。

また、冬は日照時間が短い季節です。朝夕の低い光を狙うカットが多いと、実際に撮影できる時間は夏よりかなり限られます。天候で一日流れたときの影響も大きくなるため、冬のロケほど予備日は早めにご相談ください。

オペレーター自身の防寒|寒さは操縦精度に直結する

どれだけ機材を整えても、操縦するのは人です。体が冷えると集中力が落ち、指先の感覚がなくなれば細かな操作ができなくなります。

オペレーターの防寒は、快適さの問題ではありません。操縦精度と安全に直結する準備です。

冷えは足元からやってくる

撮影中のオペレーターは、モニターを見ながら同じ場所に長時間立ち続けます。雪や凍った地面の上では、足元からどんどん体温を奪われます。

足が冷えると全身が冷えていくので、上半身と同じくらい足元の防寒を重視しています。

  • 厚手の靴下と防寒ブーツで足元を固める
  • つま先用のカイロを使う
  • 断熱マットを敷き、地面に直接立ち続けない

指先の冷えは手袋と手首の保温で防ぐ

ドローンオペレーターにとって、指先の冷えは悩みのタネです。手袋をしたままでは繊細なスティック操作ができないため、いかに指先を冷やさずに操縦するかがポイントになります。ここでは、TRICO.がおすすめしている組み合わせをご紹介します。

手袋:mont-bell クリマプレン フィッシンググローブ

愛用しているのは、mont-bellのクリマプレンフィッシンググローブです。ストレッチ性の高い素材を立体裁断しているため、手へのフィット感に優れています。操縦時は親指・人差し指・中指の3本を露出できるのが最大の利点です。

フィット感を重視するなら、1サイズ小さめを選ぶのがおすすめです。大型のスポーツ量販店で比較的手に入りやすいのも魅力です。

手首:肘サポーター+カイロ

指先の冷えは、血流が悪くなることにも原因があります。そこで手首を温めて、指先まで温かい血液を届けます。

使うのは、ダイソーで売っている肘サポーターです。折り曲げた中にカイロ(マグマがおすすめ)を入れれば、どんなタイプのカイロでも手首に固定できます。専用品を買う必要はなく、手首の太さに合わせてサポーターのサイズを変えれば男女問わず使えます。カイロはサポーターでしっかり覆い、肌に直接当たらないようにしてください。

サポーターを折り曲げてホッカイロを収納する
装着イメージ(ほっかいろはしっかりカバーしてね)

実際の効果と限界

この組み合わせで、真冬の北海道での屋外徹夜案件でも、指先が冷えることなくオペレーションできました。-15℃までは耐えられた実績があります。

ただ、使い始めて3年が経ちますが、九州最高峰での登山ロケで、寒さに強風が重なると耐えきれないことがわかりました。風の強い氷点下の環境への対策は、今も試行錯誤を続けています。スチールカメラマンの方もぜひ試してみてください。

飲み物とトイレ|前日のお酒もほどほどに

寒い現場では温かい飲み物が欠かせませんが、飲みすぎには注意しています。体が冷えるとトイレが近くなるうえ、山の上や雪原、海沿いなど、トイレが遠い現場は珍しくありません。

本番の合間に抜けられないこともあるので、一度にたくさん飲まず、少しずつ体を温めるのがコツです。

同じ理由で、前日のお酒もほどほどにしています。飲みすぎた翌日はトイレが近くなりがちで、そこに寒さが加わると、本番中にトイレのことばかり気になってしまいます(笑)。冬のロケ前夜は控えめが鉄則です。

冬のロケをドローン撮影会社に依頼する前に

ここまでご紹介した対策の多くは、ドローンチーム側で準備・判断するものです。

TRICO.では、ロケハンや事前の打ち合わせの段階で、気温や積雪、離着陸できる場所、機材車をどこまで寄せられるかといった条件を確認し、必要な機材や体制を組み立てます。温冷庫を積んだ機材車を離着陸地点の近くに停められるかどうかはバッテリーの運用に大きく関わるため、条件によっては制作部の方に駐車位置をご相談することもあります。

予備日の考え方や延期時の費用は、見積もりの段階でご相談ください。料金の考え方は料金ページで解説しています。

関連記事:ドローン空撮料金のご案内

寒冷地や山岳でのCM・映画ロケは、機材の扱いだけでなく、現場での判断の積み重ねが仕上がりと安全を左右します。条件がまだ固まっていない段階でも、お気軽にご相談ください。

冬季・寒冷地ロケのご相談はこちら → お問い合わせページへ

よくある質問

Q. 冬でもドローン撮影はできますか?

A. できます。ただし、バッテリーの性能低下や結露、着氷など冬特有の注意点があります。TRICO.ではバッテリーを温めてから飛ばし、残量40%程度を目安に早めに着陸させるなど、冬の運用に切り替えて撮影しています。

Q. 雪が降っている中でも撮影できますか?

A. 雪の質と量によります。乾いた雪で降り方が弱ければ撮影できる場合もあります。湿った雪はレンズに付着しやすく、雪片が付けばそのカットは使えません。機体も防水仕様ではないため、湿った雪や大雪の中では飛行を中止します。

Q. 霧が出ているときはどうしますか?

A. 霧の中は飛ばさないのが原則です。飛行中にプロペラが凍結するおそれがあり、センサーの誤作動や機体を見失うリスクも高まります。霧が晴れるのを待つか、撮影順の入れ替えを含めて監督・制作部と相談します。

Q. 冬はバッテリーが持たないと聞きますが、撮影に影響はありますか?

A. 1フライトで撮影できる時間は通常より短くなります。TRICO.では温めたバッテリーを多めに用意し、交換後すぐに再離陸できるようにしています。長回しやテイク数の多いカットでは交換回数が増えるため、香盤に少し余裕があると安心です。

Q. 冬の撮影で撮影データが消えることはありますか?

A. 乾燥する冬は静電気が起きやすく、記録メディアの破損につながるおそれがあります。TRICO.では、触れる前の放電、端子に触れない扱い、帯電防止ケースでの保管を徹底しています。

Q. 寒冷地や山岳でのロケにも対応していますか?

A. 対応しています。真冬の北海道での屋外徹夜案件や、九州最高峰での登山ロケなどの実績があります。ロケ地が決まった段階でご相談ください。

Q. 冬のロケでは予備日を確保したほうがよいですか?

A. おすすめします。冬は日照時間が短く、霧や雪、強風で撮影できない日も出やすいため、天候で一日流れたときの影響が大きくなります。見積もりの段階でご相談ください。

まとめ

冬のドローン撮影で押さえておきたい基本は、次の5つです。

  • バッテリーは温めてから飛ばし、すぐ交換できる状態でスタンバイする
  • 機材に急激な温度変化を与えず、結露を防ぐ
  • 霧や湿った雪の中では無理に飛ばさない
  • 着陸後はまず着氷を疑い、レンズと機体を確認する
  • 乾燥した日は静電気からメディアを守る

そして、寒さの中で集中力を保つオペレーター自身の防寒と体調管理も、同じくらい大切な準備です。

雪景色や冬の澄んだ空気は、ほかの季節では撮れない画をもたらしてくれます。冬季・寒冷地のCM・映画ロケをご検討の際は、TRICO.までお気軽にご相談ください。

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著者:石山裕太 TRICO.代表取締役

ドローンカメラマンとして業界歴10年以上。CM、VR、イベント、産業系とオールジャンルの撮影に携わる。 マイクロドローンから超大型機まで、繊細な飛行技術を有する案件が得意。ドローンVR作品は日本各地で上映中。

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