CMのドローン撮影|費用相場・撮影体制・Inspire 3・失敗しない依頼方法

投稿:2025年10月30日|更新:2026年8月21日著者:石山裕太 TRICO.代表取締役

撮影技術

CMのドローン撮影を検討するとき、制作会社・代理店の担当者が本当に知りたいのは「費用はどのくらいか」「どんな体制で撮るのか」「どの機材を使うのか」「失敗しないためにはどう依頼すればいいか」という4つの実務的な判断材料だと私たちは考えています。本記事では、この4点を軸に、CMドローン撮影の費用相場の考え方、なぜ2オペレーション体制が基本なのか、Inspire 3が選ばれる理由、そして発注で失敗しないための依頼方法までを、制作会社出身のスタッフが在籍する株式会社TRICO.の現場経験をもとに解説します。

ドローン撮影CMとは、テレビCMやWebCMの制作現場で空撮を演出に組み込む手法です。従来のヘリ空撮に比べて低コストかつ低高度から柔軟なカメラワークができる点が評価され、現代のCM表現に欠かせない選択肢になっています。

CMドローン撮影が選ばれる理由と演出効果

ドローン撮影CMで「インパクト」を与える演出手法

15秒〜30秒という短尺で強いインパクトを求められるCM制作において、空撮はロケーションの魅力を一瞬で伝え、視聴者の視線を集める役割を担います。

ドローンは主役ではなく、演出意図に沿って使う手段である

ドローンカットは、あくまで演出意図に沿って効果的に使ってこそ意味を持ちます。物語や商品の魅力と関係のない場所でドローンカットを挟むと、視聴者に違和感を与え、かえって作品全体のトーンを損ないます。ドローンを使うかどうか、どのタイミングで使うかは、監督・カメラマン・代理店が固めたコンテと演出意図の中で判断されるものであり、私たちドローンチームはその意図を正確に汲み取り、技術面で実現することに徹します。

地上カメラ・カメラカー・特機と役割分担する

車のCMであっても、ドローンが撮影のメインになることはありません。(企画によりますが)車両撮影では、地上のカメラマン、カメラカー(撮影車)のドライバー、クレーンなどの特機、スティディカムオペレーターといったプロフェッショナルがそれぞれの持ち場を担っており、ドローンはその中で「ロケーションの魅力を生かしたショット」や「地上カメラ・カメラカー・特機では物理的に届かないカット」を補完する役割を担います。この役割分担は車両CMに限らず、CM・映画・ドラマなど、複数の撮影部門が関わるすべてのハイエンド撮影に共通する考え方です。

スケール感を一瞬で伝える導入カット

広大な自然や街並み、施設の全景を上空から見せることで、地上カメラでは表現しきれないスケール感や信頼感を短尺の中で演出できます。オープニングで俯瞰から入り、ミドルで地上目線へ降りて商品や人物の表情を描写し、エンディングで再び俯瞰に戻ってロゴやメッセージで締める構成は、CMのドローンカットで多く使われる型です。

実際の飲料水CMでは、俳優が商品を口にする瞬間の地上カットの前に、撮影場所の全景を俯瞰でとらえるカットが構成されていることがあります。こうしたコンテでは、監督・カメラマンと「どの高度・角度から見せれば意図した説得力が出るか」をすり合わせながらアングルを詰めていきます。

車両・被写体を追う動的なカメラワーク

上昇・前進・回り込みといった動きを組み合わせることで、車両を追いながらそのまま空へ抜けるような躍動感のある映像表現が可能になります。ドローンで狙えるアングルはほぼ無限にあるため、本番前にアングルチェックやテスト飛行を重ねて候補となる位置・高度・軌道を絞り込み、本番ではその候補を踏まえてベストなアングルを狙っていきます。

実際の車両CMでは、カメラカーで並走できない区間や、地上の特機では届かない俯瞰の見せ場を、ドローンが補完的に担うことがあります。動く車両を追う場合はスポーツモードでのマニュアル飛行が基本となり、地上カットとの繋ぎが自然になるよう、パイロットとカメラオペレーターが速度・高度・軌道を細かく調整しながらテイクを重ねます。

地上カメラとトーンを揃えるための機材選定

CM撮影では高い画質とカメラ性能が求められるため、現場ではDJI Inspire 3のようなシネマスペック機体が使われます。広角・標準・中望遠のレンズ交換に対応できることも重要で、ショットに最適な画角を選ぶことで地上カメラとトーンを統一し、違和感のないシームレスな映像に仕上げられます。

CM・映画のドローン撮影で「2オペレーション」が選ばれる理由

CM制作の現場で求められるドローン運用の実務
 ドローン撮影の体制は、制作会社側から「2オペで」「1オペで」と指定されるものではなく、撮影内容やコンテに応じて撮影会社側で判断しています。2オペレーションはドローン撮影における唯一の正解ではなく、状況に応じて選ぶ手段のひとつです。

2オペレーションは基本ではなく、状況に応じて選ぶ手段である

カットがあらかじめ決まっているCM・映画・ドラマのような現場では、パイロットとカメラオペレーターの役割を分ける2オペレーションの方が実施しやすい場面が多くあります。一方で、自然の景観をゆったりと捉えるような撮影では、1人で操縦とカメラワークを兼ねる1オペレーションの方が実施しやすいケースも少なくありません。どちらが優れているという話ではなく、コンテの内容や被写体の動き、現場の制約に応じて選ぶべき手段です。

パイロットとカメラオペレーターの連携が画質を決める

CM・映画のように被写体の芝居やタイミングに正確に合わせる必要がある現場では、2オペレーションによってパイロットとカメラオペレーターがそれぞれの役割に集中できるため、結果的に良い画を撮りやすくなります。ただし、2オペレーションにすれば自動的に良い画が撮れるわけではありません。パイロットが飛ばすルート・速度・高度がカメラオペレーターの意図とずれていると、カメラオペレーターがどれだけ構図を作り込もうとしても良いカットにはなりません。実際の現場では、カメラオペレーターがパイロットに「もう少し速度を落として」「あと少し右に寄せて」といった指示を飛ばしながら、その場でルートや速度を修正していきます。この二人の連携が噛み合わなければ、結果的に良い画は撮れません。こうした呼吸の合わせ方は一朝一夕で身につくものではなく、私たちも普段の練習から息を合わせる訓練を重ねています。

ピント送りが必要なカットは撮影部と連携する

被写体との距離が近い、あるいは望遠でシビアなピント送りが必要なカットでは、ドローン側で対応するのではなく、事前に撮影部へ相談し、そのカットのピント送りを撮影部の担当者に確保してもらいます。ドローンチームにはフォーカスプラーが担える要員がいないため、カット割の段階でその必要性が見えた時点で制作部とも連携し、必要なカットに撮影部が入れるよう香盤を組んでもらうことが前提になります。

地上の撮影部と同じ水準を求められるという前提

CM・映画・ドラマの現場には、地上カメラマン、撮影部、カメラカードライバー、特機オペレーター、スティディカムオペレーターなど、それぞれの領域で長年経験を積んだプロフェッショナルが集まっています。ドローンチームがその中の一員として現場に入る以上、求められる画質・再現性・判断速度は、地上の撮影部門と同じ水準です。これは簡単に到達できる基準ではなく、私たちも日々の撮影全般(操縦技術だけでなく、レンズワーク、露出判断、編集を見据えたフレーミングなど)に対する継続的な取り組みを重ねることで、初めて維持できるものだと考えています。継続して発注をいただけるかどうかは、この水準を保ち続けられるかにかかっています。

CM撮影でInspire 3が選ばれる理由

2機体制で本番停止リスクを下げる

CM撮影は分刻みのスケジュールで進行するため、機材トラブルによる本番停止は最も避けたいリスクです。TRICO.ではInspire 3を常時複数機運用できる体制を整え、X9ジンバルなどのバックアップも考慮しています。予備機・予備バッテリー・記録メディアをあらかじめ準備しておくことで、万一のトラブルでも撮影を止めずに進行できます。実際の現場では、限られたロケ許可時間の中で機体トラブルが起きても、予備機への切り替えだけで撮影を継続できたケースが何度もあります。

レンズ交換とRAW収録が可能にする画づくり

Inspire 3はZenmuse X9-8K Airを搭載し、8K CinemaDNGやProRes RAWといったシネマ収録に対応しています。レンズをカットごとに使い分けることで、画角・速度感・背景の圧縮効果をコントロールでき、地上カメラの画づくりと違和感なく馴染ませることが可能です。

編集・グレーディング工程まで見据えた選定理由

Inspire 3を選ぶ理由は、撮影時の画質だけにとどまりません。RAW収録であれば、地上のシネマカメラと同じようにカラーグレーディングの工程で色や階調を後から追い込めるため、地上カットとドローンカットのトーンをポスプロ側で合わせやすくなります。コンシューマー向け機体のような圧縮された映像データでは、この追い込みの自由度が大きく制限されます。

演出効果を左右するカメラワークとレンズ選び

ドローンカットの印象は、動きの種類とレンズ選択で大きく変わります。オービット(周回)、ドリーアウト(離脱)、パララックス(視差を強調した横移動)などの技法は、それぞれ狙える演出効果が異なるため、コンテの意図に合わせて選ぶ必要があります。

CMドローン撮影の費用の考え方

見積の組み立て方

CMドローン撮影の見積は、単一の「撮影費」ではなく、案件の条件に応じて要素が積み上がっていく構造になっています。おおまかな考え方は次の通りです。

基本撮影費(機体・カメラマン1名分の稼働)
    ↓
2オペレーション体制費(パイロット+カメラオペレーターの人件費・体制による)
    ↓
飛行許可・個別申請などの申請実費
    ↓
遠方ロケの場合の出張交通費
    ↓
見積合計

飛行の難易度そのものに対する技術料の加算は発生せず、あくまで機材構成・人員構成・実費・日数の積み上げで見積もりが決まります。逆にいえば、この積み上げ構造を理解しておけば、「なぜこの案件はこの金額になるのか」を発注側でもある程度予測でき、予算取りの精度が上がります。

見積を取るときに確認すべきこと

見積もり段階では、技術的な質問に対して明確な回答が得られるか、より良い画を撮るための逆提案があるかを確認すると、発注後のミスマッチを防げます。CM・映画・VP・VRなど作品ジャンル別の標準的な構成例や、自社の料金体系については[ドローン空撮料金]で詳しく解説しています。

企画段階からでもご相談ください

「まだ仮絵コンテしかない」「この演出が空撮で成立するのか分からない」という段階でも、ご相談いただけます。実際に私たちのもとには、

  • 「このカットは、この場所で本当に飛ばせるのか」
  • 「この演出意図は、ドローンで再現できるのか、それとも別の特機を検討すべきか」
  • 「予算感がまだ固まっていないが、規模感だけ知りたい」

といったご相談が、脚本会議やコンテ検討の段階で寄せられます。企画が固まりきる前に空撮の可否や難易度を確認しておくことで、後工程での構成変更や予算オーバーを防ぎやすくなります。

よくある質問

Q. CMのドローン撮影は1名の操縦者でも対応できますか? 撮影内容によります。カットが決まっているCM・映画のような現場では、パイロットとカメラオペレーターによる2オペレーションを選ぶことが多いですが、1オペレーションの方が実施しやすい撮影もあります。現場1名対応でのご相談は案件によって調整させていただきます。

Q. 飛行許可の申請は制作会社側で行う必要がありますか? 包括申請の許可証は常に保有しております。個別申請(DID+夜間飛行、高高度撮影)についても自社完結可能です。撮影場所の許可取得等もご相談いただけましたら対応させていただきます。

Q. 天候不良の場合、撮影はどうなりますか? 安全基準に基づきパイロットが飛行可否を判断します。予備日の確保や事前の天候判断については案件ごとに調整させていただいたおります。

Q. コンテ段階でも相談できますか? 可能です。「このカットは飛べるのか」「演出として成立するのか」という初期検討の段階からご相談いただくことで、後工程での構成変更を防ぎやすくなります。

CM・広告撮影のドローン活用なら株式会社TRICO.にお任せください

株式会社TRICO.には制作会社出身のスタッフが在籍しており、現場の進行や作法を熟知した体制を整えています。これまでの多くのCMや広告制作で培った経験を活かし、まずは「このような画を撮ることは可能か」という初期段階のご相談から、ぜひお気軽にお問い合わせください。

ドローンでのCM撮影に関するお問い合わせ

著者:石山裕太 TRICO.代表取締役

ドローンカメラマンとして業界歴10年以上。CM、VR、イベント、産業系とオールジャンルの撮影に携わる。 マイクロドローンから超大型機まで、繊細な飛行技術を有する案件が得意。ドローンVR作品は日本各地で上映中。

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